軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

355話 アンドラスの攻勢

「この! この!」

「ガルルル!」

「ぎゃー!」

アンドラスの放つ、風と羽根手裏剣の妨害のせいでかなり戦いづらい。特に前衛のプレイヤーたちは苦労しているようだ。

だが、そんな状況でも皆で協力しながら辛抱強く戦い、なんとか戦列が崩れずに堪えることができていた。

これ、黒狼への対処とアンドラスへの対処で戦力を分けてたら、絶対にやばかったよな。

「キュオオオオオオオオ!」

「うげ! まじかよ!」

アンドラスが再び音波攻撃を放つ。

これが最悪であった。

ダメージによる行動阻害と恐怖の状態異常によって、ギリギリ保たれていたプレイヤーと黒狼の均衡が崩されてしまったのだ。

各所で再び混乱が起き始めていた。

まだ死に戻りは出ていないが、回復に手を割かねばならず、攻撃の頻度が下がってしまっている。

結果として、黒狼への牽制が減り、自由に動かれるようになってしまっていた。黒狼の攻撃が激しさを増し、プレイヤーたちが後手に回り始めている。

「ムムー!」

「ああ! オルト!」

オルトが吹き飛ばされた! 今までは一緒に対応してくれていたタンクプレイヤーが、一時後退していた隙を突かれたようだ。

「モグモー!」

オルトが抜けて開いた穴を埋めようと、ドリモが果敢に黒狼に挑みかかったが、黒狼はそれでも怯まない。

「ガル!」

「モグー?」

「今度はドリモッ!」

オルトを吹き飛ばすほどの高速突進攻撃だけではなく、ドリモの攻撃を受けても一切怯まない頑丈さも黒狼は持ち合わせている。

ドリモをカウンター気味の狼パンチで弾き飛ばすと、俺に向かって牙をむく黒狼。皆を回復し過ぎてヘイトを稼いでしまったらしい。どうやら、回復行為、特に魔術での回復は黒狼のヘイトを稼ぎやすいようだった。

回復役から潰すとか、運営の殺意高過ぎじゃない?

「ガガオ!」

「ぎゃー!」

「――!」

「ガルゥ!」

「サ、サクラ、助かった!」

樹精の小盾を展開したサクラが、俺と狼の間に割って入ってくれた。本気でヤバかったぜ。

「リック、回復を任せていいか?」

「キキュ!」

俺だけではなく、リックの木実弾による回復も併用していこう。果物が少し勿体ないが、死ぬよりはましだ。

回復も、ヘイトを稼ぎづらいポーションを積極的に使っていくことにした。まだアンドラスへの攻撃もしていない内に、かなり消耗させられそうだ。

このままだと、アンドラス戦の前にMPやアイテムがかなり減ってしまうだろう。アンドラス本体との戦いまでに、アイテムを使い切らないといいんだが……。

そんな不安を抱えながら黒狼と戦うこと五分。

黒狼の数が半分ほどに減った時、再び異変が起こる。

「黒狼が消えた?」

「ム?」

まだ倒しきれていなかった黒狼たちが、黒い光と化してその場から消え去ったのだ。そして、元々黒狼だった黒い光は、アンドラスへと吸い込まれていく。

どうやら、黒狼自体がアンドラスの分身のような扱いだったらしい。それを証明するように、アンドラスのHPが減っている。

だが、多少のダメージを与えた程度で喜んではいられない。

「クオオオォォ!」

「うわっ! やばいやばい!」

アンドラスがその巨体を一気に下降させてきた。翼長が25メートルを超える超重量のボスが真上から迫ってくる様子は、凄まじい迫力があった。

そして、アンドラスは迫力だけの相手ではない。

「ぐあぁ!」

「くっ! ヒール! ハイヒール!」

アンドラスの急降下攻撃を食らったタンクが、一発で死にかけていた。何とか回復が間に合ったようだが、一撃でタンクを瀕死に追いやる攻撃力は恐ろしすぎる。

「こ、攻撃チャンス――」

「クオオオ!」

だが、これは攻撃をする絶好の機会だ。俺たちは誰に言われるまでもなく、一斉にアンドラスを取り囲もうとしたんだが――。

アンドラスは即座に翼を羽ばたかせると、そのまま上昇していってしまった。慌てて駆け寄ろうとした者もいたんだが、激しい風に邪魔されて、攻撃をすることはできなかったようだ。

「クオオオオオ!」

「またくるぞ!」

わずかに場所を変えたアンドラスが、再び急降下してきた。まるで巨大な鎌のように見える足の爪が、今度はプレイヤーではなく砦を大きく抉っている。

その攻撃だけで、城壁の一部が崩れてしまった。どう考えても、大ダメージである。

「プレイヤーに当たれば最低でも瀕死。皆が攻撃を躱すと、砦にダメージってことか?」

長期戦は、砦がもたないだろう。砦のライフがゼロになってあのクリスタルが砕けた時、どんなマイナス要素があるかも分からない。

となると、プレイヤーで攻撃を受け止めつつ、なんとか奴にダメージを与えなくてはいけないんだが……。

アンドラスが再び黒狼を召喚するのを待つか?

いや、それだけでは絶対にイベント終了までの討伐は間に合わない。

「つまり、急降下攻撃にあわせて、攻撃を叩き込むしかないってことか」

これは、かなり危険な戦いになりそうだ。

「オルト、ここからはより厳しい闘いになる。頼むぞ」

「ムム!」

オルトのサムズアップがここまで頼もしいことがあっただろうか? いや、結構あった。

「くるぞ!」

「ムー!」

アンドラスめ、目にもの見せてやる! でも、できるだけ早く帰ってきて戦闘部隊のみんな!