軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

347話 鳥のヘイト

「チチチチチチチチチチチ――」

1羽1羽の囀りは、大した音量ではないだろう。しかし数万羽の鳥たちが一斉に鳴くことで、凄まじい騒音がプレイヤーたちを包み込んでいた。

「うるさ!」

「ムー!」

オルトも顔をしかめている。しかし、これは単に煩いという以外にも色々と厄介だった。

集中力が乱されるので、集中する必要のあるスキルが阻害されるし、仲間への指示などといった音の情報も遮断されてしまう。

連携さえままならない状況だ。

俺たちには、さらに問題なことがある。

「――」

「ファウ、無理するな!」

「――――」

ファウの歌唱が騒音によって阻害され、効果が打ち消されてしまうようなのだ。実際、リュートの音もファウの声も、まったく耳に届いてこない。

しかも、鳥たちの攻撃を食らうせいで、演奏が中断させられてしまう。

戦闘前に使っていたバフ演奏の効果は残っているが、敵に対するデバフは全く意味がないらしい。

「ファウは大人しくしてろ!」

「ヤー……」

俺は、鳥に衝突されて体勢を崩したファウを受け止めると、リックと一緒に抱きかかえた。その俺をオルトとサクラが守ってくれている。ルフレの回復もあるおかげで、死ぬほどのダメージは食らわずに済んでいた。

「モグ! モグモ!」

ドリモは少し離れた場所で、ツルハシを振り回している。その攻撃は正確で、相当な数の鳥を叩き落としているようだが、相手の数が多すぎる。

「これでも食らえ!」

「チチチチチチ!」

おー、効く効く! 鳥除け剤を投げつけると、劇的な変化があった。水薬を浴びた鳥たちがボタボタと地面に落下し、霧のように広がった粉薬を浴びれば方向転換して逃げ出していく。

だが、アイテムを使っても多少数を減らせるだけだろう。さらに鳥たちの数を減らすには、魔術が必要だと思うんだが……。

「範囲攻撃を誰も使わないのか?」

周囲にいる魔術師系のプレイヤーたちは、誰一人として範囲攻撃魔術を撃とうとはしていなかった。確かに鳥の攻撃で詠唱を阻害されることはあるが、タンクに守ってもらえばどうにかなると思う。

何か理由があるのか?

俺がどうしようか悩んでいると、俺たちの近くに布陣していたパーティのプレイヤーが、勢いよく立ち上がった。どうやら鳥の猛攻に我慢ができなくなったらしい。

「くそっ! くらえ!」

「おい! 止めろ!」

「馬鹿!」

何故か慌てた表情をした仲間たちが止めようとしているが、それよりも先に魔術が放たれていた。

鳥の群れの中心で爆炎が発生し、100羽以上の鳥が巻き込まれて消滅していく。

おお、やっぱり魔術が有効だ。鳥除け剤などのアイテムは戦士職に使ってもらって、魔術師は範囲魔術を使うのがいいだろう。

そう思っていたんだが、俺が思いつくような作戦、誰も実行していない訳がなかったのだ。

そして、それがダメだと判明し、魔術の使用を控えていたのだろう。

「チチチチチチチチ――」

「う、うわぁぁ!」

「ふ、防いでくれ! そのためのタンクだろ!」

「くそ! ディフェンス・アップ! エリア・シールド!」

鳥たちの動きが明らかに変わった。周辺の鳥たちが一斉に魔術師たちに向かって殺到し始めたのだ。黒い鳥たちのヴェールによってパーティの姿が覆い隠され、完全に見えなくなってしまう。

鳥の鳴き声でプレイヤーの声も遮断され、中が無事かどうかもわからない。

盾戦士がディフェンス系スキルを使って守ろうとしていたようだが……。

しかし、鳥たちがその場を離れた時、プレイヤーの姿はどこにもなかった。死に戻ったのだろう。

その光景を見てゾッとしたね。まるで鳥たちに啄ばまれ、骨すら残さず食らい尽くされたように見えたのだ。

「うわー……」

鳥肌立ったよ。

その直後、鳥たちが一斉に空に向かって戻っていく。どうやら今回の襲撃が終わったらしい。

「うちはそこまでの被害はなかったか?」

「フム!」

「ルフレのおかげだよ。それにしても、これが続くとジリ貧なんじゃないか?」

「白銀さん!」

「コクテン!」

「無事でしたか」

「なんとか」

コクテンが心配そうな顔で話しかけにきてくれた。その後ろで、コクテンの仲間が俺に謝ってくる。魔術を使ってはいけないと、伝え忘れたことについてだろう。

ただ、あの時は緊急時だったし、仕方ない。それに生き残ったんだから、もういいのだ。それよりも今後のことだ。

「いくつか分かっていることもあります」

魔術を使うと大量のヘイトを集めてしまい、鳥たちの一斉攻撃を受けてしまう。だが、その一斉攻撃の後は、鳥たちはすぐに空に戻っていくらしい。

今の襲撃も、先程よりも大分短かったそうだ。犠牲になったパーティが魔術を使ったおかげなのだろう。

「生贄になるパーティがいれば、被害を最小限で切り抜けられるとは思いますが……」

「誰もやりたがらないだろう?」

「そうなんですよ」

まあ、当然だろう。誰だって死に戻りたくはない。

もう1つ分かっていることは、アイテムやスキルによるヘイトの増加がほとんどないということだ。確かに、鳥除け剤を使っても集中攻撃されることはなかったし、歌唱スキルを使ったファウも無事だ。

「今、作戦を考えているんで、白銀さんも協力してくれませんか?」

「勿論だが、俺にできることなんてあるか?」

「ええ、適役がありますよ!」

コクテンの真っすぐな視線は俺――ではなく、うちのモンスたちに注がれていた。