軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

324話 蟹、実食!

第6エリアのセーフティーゾーンで登録を済ませた俺たちは、ようやく一息ついていた。

「綺麗な光景だね」

「くくく……そうね」

「私もここ好きだなー」

フィルマたちが言うように、セーフティーゾーンは非常に美しかった。すでに夜中なので辺りは暗いのだが、この場所に生えている紫色の花が微かに発光し、安全地帯の地面を照らし出していたのだ。

紫色のリンドウのような花が淡く輝く光景は、幻想的の一言に尽きた。地底湖と言い、この花畑と言い、リアルでは絶対に見られない光景だろう。

残念なのは、フィールドオブジェクトであるせいで採取できない事だろう。

「ムーム……」

「モグモ……」

しばらく青白く輝くリンドウに見入っていると、隣に座っていたオルトとドリモから妙に切ない声が上がった。

「どうした?」

「ム……」

「モグ……」

2人とも同じ動作でお腹をさすっている。そういえばオルト達は召喚されてから食事を摂っていなかったか。

「時間は変だけど景色もいいし。ここで飯にするか」

「ムッム!」

「モグ!」

オルト達の食事はすでに用意してあるものを取り出せばいい。ただ、俺とルフレの分はここで作ってしまおうと思う。

「何せこいつらがいるからな!」

「フムー!」

念願の蟹料理である。すると、俺が蟹を取り出したのを見てクルミたちが騒ぎ始めた。

「あー! 蟹食べるの?」

「くくく……料理して食べさせてくれる約束」

「私たちの分もお願いします!」

まあ、最初からそういう約束だったし、構わないけどね。

「わかったわかった。料理は俺に任せてもらっていいのか?」

「うん!」

「くくく……楽しみ」

「私たちじゃ、茹で蟹とか蟹チャーハンくらいしか思いつきませんし」

料理スキルを持っていないことに加え、3人ともリアルで料理をしないようだ。完全に丸投げされてしまった。さらにフィルマが何かを譲渡申請してくる。

「これとか使えます?」

「地底湖の水? こんな素材あったっけ?」

俺たちだってそれなりに採取は頑張ったけど、入手した素材の中に地底湖の水なんてなかったと思うが。

「それ、地底湖の底の採取ポイントで手に入るんですよ」

「あー、それで俺たちは手に入らなかったんだな」

ルフレはスキルを持っていないので採取はできない。もし俺たちがほしくなったら、俺かオルト、サクラやリックが頑張らないといけなかった。

「でも、いいのか? 貴重なんじゃ……」

「いえいえ。私、日に1度は地底湖に遊びに来るんで、もう大量に溜まっちゃってるんです。でも、貧乏性だから毎回採取しちゃって……。だから、どーぞどーぞ」

フィルマからしたら、余り過ぎていて全く有難味がないアイテムであるそうだ。売ればいいと思ったが、サウスゲートでは特定のNPCショップで比較的お手ごろな値段で入手できてしまうらしい。

水系素材はほとんどの生産で利用するし、ゲーム中でそれなりに手に入りやすくなっているんだろう。

「じゃあ、有り難く使わせてもらうよ」

「はい」

レア度が4の水なんて、俺も欲しいくらいの素材である。あとでフィルマに売ってもらおう。それを事前にお試しで使えるのは嬉しいね。

「何から作るか……」

レシピがいくつか解放されているので、まずはそれを試そうか。それ以外にも、作れそうな料理はあるしな。

俺たちが手に入れた分に、フィルマたちがちゃっかりゲットしていた蟹を合わせたら、15杯もある。これだけあれば、全部のレシピを試せるだろう。

「まずはこのレシピ。多分、基本の丸茹でかな」

鍋に蟹を入れ、地底湖の水、塩を入れて火にかけるだけの簡単レシピだった。20秒後。俺の想像通り、真っ赤に茹であがった蟹が姿を現す。以前中華街で食べた上海蟹にソックリだ。

「う、美味そうだ……」

いや、ここは我慢である。つまみ食いなどしたら、全員からブーイングをくらうだろう。食べ物の恨みは怖いのだ。

その後俺は、焼き蟹。カニ玉。蟹の味噌汁。蟹鍋。蟹のシチュー。蟹サラダ。蟹入りお吸い物。蟹クリームコロッケ。蟹パン。蟹ピザ。蟹焼売を作り上げるのであった。

お米が発見されれば、蟹チャーハンや蟹ピラフ。蟹雑炊に蟹の炊き込みご飯などの最強ラインナップが試せたんだがな。

発見されていないのだから仕方がない。それに、今作った料理の数々も十分に美味しいだろう。

「我ながら最高のできだ!」

俺の叫びを聞きつけたのか、フィルマたちがゾロゾロと集まってくる。そして、俺の作ったカニ料理を見て目をギラつかせた。

「私カニ玉!」

「あー、ずるいよクルミ!」

「くくく……蟹パンは私のもの」

「フムー!」

放っておくと喧嘩になりそうだ。ここはジャンケンで公平に決めるべきだろう。ああ、カニ鍋とシチューは一度に5人分作れたので、全員が食べられる。

結果、俺は鍋、シチュー、味噌汁、お吸い物だった。うん、ジャンケンで全敗するとは思わなかったね。汁ものばかりだ。

考えてみれば鍋とシチューがある時点で、味噌汁やお吸い物はいらんよな。

クルミたちの蟹欲がゲームの神様を動かしたのかもしれん。

「まあ、俺は食べようと思えばまた食べれるからいいんだけどさ」

蟹料理を貪り食らうクルミたちを見ていると、悔しさも半減だ。真面目で清楚な雰囲気のあるフィルマまでもが一心不乱に蟹料理を食べる様は、蟹の魔力を再確認させてくれた。

「ズズズ……。うん、美味い。ルフレ。どうだ? 美味しいか?」

「フムー!」

ルフレが満面の笑みで、焼き蟹の足を天高くかざす。まあ、美味いということだろう。皆が喜んでくれているし、作ってよかったな。