軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

318話 赤、青、黄色

フィルマとルフレが水中を探索している間、俺たちは地底湖でフィッシングタイムだ。

しかも、誰が一番最初に釣れるか、いつの間にか勝負の様相を呈していた。

「きたきたきた! フィィィッシュ!」

「ヒムムー!」

「フマー!」

「――!」

俺に先を越されたヒムカとアイネは悔しそうである。ふっふっふ、釣り勝負は俺の勝ちだな!

まあ、装備の差だけど。

そもそもヒムカとアイネ、サクラは釣りスキルを持っていないので、本来であれば釣竿を使うことさえできない。しかし、そこはアイテムでカバーすることができた。

クルミたちが貸してくれた特殊な釣り竿に、釣りスキルが付与されていたのだ。これがあれば釣りスキルがない人間でも釣りができるという素敵アイテムである。

ただ、その竿に付与された釣りスキルは最低限のものなので、本当にLv1程度の効果しかなかったが。

対して俺の釣りスキルは15。高いとは言えないが、色々な場所でちょっとずつ遊ぶことで、ジワジワ育てて来たからね。正直負ける気がせんのだよ!

「くくく……白銀さんが3位ね」

「おめでとう!」

まあ、リキューとクルミはすでに5匹くらい釣りあげているんだけど!

「――!」

「ヤヤー!」

サクラもファウもやめて! そんな俺が優勝したみたいに喜ばないで! ファウはそんな荘厳な音楽かき鳴らさなくていいから!

釣れた魚は、地底湖魚というそのまんまの名前の魚である。

「これ、食べられるの? 食用ってなってるけど……」

そう呟いてしまう程、その色はカラフルだった。大きさや形はぼぼアユなんだが、その色合いはグッピーよりもさらに派手だ。鱗は赤や青、黄色の物がランダムで配置され、尾や背のヒレなどもドぎつい原色に染められている。

個体によって色合いが違うようだが、派手なことに変わりはなかった。

「まだフィルマは戻ってこないし……。とりあえず釣った魚を料理してみるか」

「くくく……刺身……」

「刺身? 一応、川魚に入ると思うけど……」

まあ、ゲームの中だから寄生虫も大丈夫かな? リクエスト通り、刺身にしてみるか。味を見るのにもちょうどいいし。

そう思って、刺身を造ってみたんだが――。

「ぶぶぅ! まっず! 超まずいんだけどこれー!」

「な、なんだこりゃ! くそ不味い! 苦いし生臭いし!」

おいおい、生ゴミ口に入れたみたいなんだけど! 食用ってなってたじゃないか! なんでだよ。切っただけだから、不味くなりようもないだろ! 最初からマズいとしか思えないんだが……。

しかし、俺とクルミが悶絶する一方で、リキューが何かを企むような不敵な顔で笑っていた。

「くくく……美味……」

「ちょ、リキューがあんな幸せそうな顔で笑ってる! あんた、舌までおかしくなっちゃったの?」

あれはリキューなりのハッピースマイルだったらしい。

「だ、だいじょぶなのか?」

「くくく……何が?」

強がっている様子はなかった。どうやら本当に美味しいと感じているらしい。クルミがリキューの皿に乗っていた刺身をつまみ上げると、恐る恐る口に入れる。

「お、おい。クルミ、大丈夫か?」

「もぎゅもぎゅ……美味しい! これ美味しいよ白銀さん!」

「え? まじか?」

その言葉を聞いて、俺もリキューの皿から刺身を取って食べてみた。先程の強烈な不味さを警戒していたんだが、その刺身の味は全く違っていた。

ねっとりとした甘い脂と、ほんのり甘い身。サーモンそっくりの味だった。文句なく美味しい。

「リキュー、これ食べて見ろよ」

「くくく……おえ……なにこれ……」

やはりリキューの舌がおかしい訳じゃないか。俺の皿の刺身を食べたリキューが、即座に吐き出している。

意味が分からず首を傾げていると、クルミが「あっ!」と小さく叫んだ。

「どうしたんだ?」

「思い出した! そう言えば、ヒレの色で味が変わるって……! 確か掲示板に書いてあったよ!」

その後詳しく調べてみると、どうやら地底湖魚にはヒレが赤、青、黄の3種類があるようだった。鑑定などの表記では違いがないんだが、ヒレの色で味が全く違うらしい。

しかも、その味は日替わりだ。なんと、湖の光の色と同色のヒレの魚が美味しく、違うと不味くなるという。

今回はリキューの刺身だけ青ヒレの地底湖魚を使ったようだ。まあ、その辺は全く覚えていないが。

「とりあえず、もう1度青い魚を刺身にしてみるか」

そして実験をした結果、やはり青ヒレの魚だけが美味しいということが判明したのだった。

不味い刺身は釣りの餌にしてみたが、一向に釣れない。魚さえ食べないと言うことなんだろう。しかも、試しに美味しい刺身を使ってみたら普通に釣れるのだ。

バフ付き料理を使うなんて勿体ないって騒がれたけどね。まあ、すぐに新しいのを作るから許してくれ。何せ、美味しい刺身を使ったら、青ヒレばかり釣れたのだ。3分の3だ。偶然だろうが、ラッキーだな。

そんなことをしていると、フィルマとルフレが戻ってきた。満足げではあるが、ちょっと悔しそうでもある。

「あー、楽しかった!」

「フム!」

「でも、新しい発見は有りませんでした」

「フムー……」

フィルマでも、目新しい物を見つけることはできなかったらしい。

「すいません白銀さん。お待たせしたうえ、ルフレちゃんまで貸していただいたのに成果は有りませんでした」

「フム! フムム!」

謝るフィルマの背中をポンポンと叩いたルフレが、魚を数匹取り出してアピールしている。フィルマを慰めつつ、成果がないわけじゃないと言っているんだろう。

「まあまあ、新発見がそうそう簡単に見付かるわけないって。それに、ルフレも楽しかったみたいだから、むしろ俺の方こそお礼を言いたいくらいだ。なあ、ルフレ?」

「フムー!」

「あは。ありがとうルフレちゃん」

とは言え、やはりフィルマは少し元気がない。これは、美味い刺身を食べさせてやらねば。幸い、ルフレの取ってきた魚は青ヒレだからな。他にも、塩焼きとかにしてみるか。

だが、その前に、俺たちの苦しみも共有してもらわんとなぁ? クルミとリキューに軽く目くばせすると、2人が同時にうなずいた。俺たちの心は1つであるらしい。

「まあ、とりあえずこれでも食って、元気出せよ」

「くくく……ほっぺたおちるわ」

「すっごい美味しいよ!」

俺たちは、青くないヒレの魚で作った刺身を、満面の笑みでフィルマに差し出すのであった。