軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

297話 人を堕落させる悪魔の暖房器具

「部屋数は和室が3つ、茶の間、台所、地下室×2のはずだから、一階の残りの部屋は和室のはずだよな」

残るは、囲炉裏のある茶の間の隣の部屋だ。

「さて、ここは……おおおおお!」

思わず声を上げてしまった。でも、仕方ないじゃないか。だって、俺の目の前に、人を堕落させる悪魔の発明品が鎮座していたのだ。

「炬燵じゃないか!」

和室の中央に置かれていたのは炬燵であった。障子を全部開け放つと、そこは縁側だ。その先にある庭も目に入る。今は雑草がボーボーに生え放題だが、それはそれで風情があるように思えるから不思議だった。

木製の茶箪笥なども置かれ、非常に落ち着いた雰囲気の部屋である。

茶色の天板と、白と黒の市松模様の炬燵布団。地味だ。しかし、俺はその魅力に抗いきることが出来なかった。だって炬燵だぞ? もう、何年入っていないだろうか。

上京してマンションに住むようになってからはエアコンで事足りてしまった。実家にはあるんだけどね。モップのような白い飼い犬と並んで炬燵に入り、そのまま寝落ちして風邪をひいたのもいい思い出だ。

「これは入らざるを得ない」

足先を炬燵に突っ込むと、足がジンワリとした温かさに包まれるのが分かる。そのままさらに腰まで炬燵に入り込むと、快感の余り「おほーっ」という声が出てしまった。

いやー、ゲームの中でもここまで炬燵の気持ち良さを再現できるとは、侮り難しLJO。

「あー、これはいいね~」

目の前に広がる庭を眺めながら、先程入れたお茶をすする。至福のひと時だ。

「お前らも食べておけ~」

「ヤー!」

「キキュ!」

「ダンゴはどうだ? 食べるか?」

「ウニャー」

マスコットは食事が必要ないらしいが、食事は可能であるらしい。焼き魚を出してやったら、ムシャムシャと食べ始める。

「はー……」

食事を終えた俺たちは、炬燵に入ったままボーっとする。

炬燵の上で仲良く並んで庭を眺める三体。ちんまい子たちが身を寄せ合っているその背中は、異常に可愛かった。チビーズ越しの庭のスクショは、その逆光感も相まって、ゲームならではの風情みたいな物さえ感じられる。

これはいいスクショだ。あとで誰かに自慢しよう。

結構な時間、炬燵でのんびりしてしまったよ。

「そうだ、折角だからこの部屋の模様替えしちゃおうかな」

オブジェクトを置くなら、基本はこの部屋と茶の間だろう。他の和室は今後、工房などに改修する可能性があるのだ。

「備え付けの棚があるのは嬉しいな。ここにフィギュアを置いて。ああ、縁日でゲットした妖怪の人形もこの横に置こう」

座敷童の掛け軸は床の間にかけてみる。

「この掛け軸の前に、サクラの作った苔玉を置いたら――おお! いいねぇ!」

ヒムカやサクラの食器類は、茶の間や台所だな。そうだ、チャガマの本体の茶釜! あれも持って来よう! 納屋に置きっぱなしだ。

「さっさと転送扉を納屋に設置してくるか。その方がいろいろと便利だし」

ああ、その前に残りの部屋をチェックしないとね。地下の前に納戸とトランスポーターである。まあ、どっちも中には入れなかった。

部屋の扉にタッチするとウィンドウが起動するのだ。トランスポーターは転移先がないので使用不可。納戸は、アイテム収納庫だった。99種類×99個までアイテムを保管できるらしい。俺はあまり貴重品がないからこの程度で十分だろう。お金も入れておけるようだし、冒険者ギルドに預けてある貴重品などをこっちに持ってきちゃおうかな。

「で、最後に地下なんだけど……。何もないね」

「キュー」

地下は土間が2つ存在しているだけで、備え付けてある物は天井のランプだけである。今のままでは倉庫にしか使えそうもない。早くお金を貯めて生産設備を買おう。

「じゃ、転送扉を設置しないといけないし、一度戻るぞー。ダンゴはまた後でな」

「ウニャー」

縁側で寛いでいるダンゴに声をかけると、お尻をこっちに向けたまま返事をした。この素っ気ない所もネコっぽいな。寂しがっている様子はないので、安心と言えば安心だが。

その後、ホームエリアを出て畑に戻って来たら、見覚えのある男が畑の前にいた。

「あ、白銀さん」

「エリンギ? もしかして待っててくれたのか?」

「いえ、白銀さんの畑を見学に来たらそのタイミングで帰ってこられたので。でも、ちょうど良かった。情報料をお渡ししなければと思っていたんですよ」

エリンギから20万Gの譲渡申請が送られてくる。散財した直後だからありがたい。いやいや違う。そうじゃなかった。

「あ、そういえばそれだ! 4分割でいいって言ってたのに!」

「はい、ですからお言葉に甘えて4分割にさせていただきましたよ?」

「え? でも20万送られてきてるぞ?」

「はい、全部で80万Gになりましたから……」

話を聞くと、アリッサさんの話術が巧み過ぎて、本来秘匿するつもりだった情報も一部明かしてしまったらしい。

「それでも座敷童に関しての情報のかなりの部分は売りませんでしたから」

そう言って去っていった。隠す程の情報はないと思うんだが……。まあいいや。それよりも、これでマスコット枠を増やせるぞ! そっちの方が重要だ!

「やっふー! 早速不動産屋さんに――おっと、まずは転送扉だった」

俺はとりあえず納屋の壁に転送扉を設置してみた。入り口の向かい側である。普通に、地味な木製の引き戸だな。

どうやら設置場所に合わせた姿になるようだった。フレームを任意にいじれるので、もっと目立つ形に変えることもできるらしい。俺はこのまま変更するつもりはないが。

「本当にこれが転送扉なのか?」

俺は恐る恐る転送扉に触れてみた。ホームのトランスポーターと全く同じ画面が立ち上がる。これで転送先を選んで、扉を開けばその場所に繋がるのだろう。

俺の場合は購入したばかりのホームしかないから、一ヶ所しか選べんけど。

「で、選んで開くと、転送されるわけね」

俺が立っているのは、ホームの廊下の突き当りだった。茶の間のすぐ脇である。多分、普通の家だったらトイレがあるであろう場所に転送扉が存在しているからだ。

「戻る時も同じね」

これで俺もモンス達も、簡単に畑とホームを行き来できるだろう。

「よしよし、これでみんながホームに来れるな」