軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

291話 アイネ

「キイイイイイイ!」

「うげー、どこも狂った精霊は不気味だな~」

狂った風霊は幼児の姿である分、他の精霊よりもこっちの方がちょっと怖いかもしれない。妙な迫力があるし、ホラー感も強かった。

「足場が狭くてあまり激しく動けん。遠距離攻撃で削れ!」

「――!」

「キュ!」

俺もアクアボールを放って、狂った風霊を攻撃する。ヒムカたちには、ブリーズ・キティの接近を阻むように指示したんだが、これが俺の指示ミスだった。

「ウニャ!」

「ちょっ! ずるい!」

なんとこの子猫ちゃん達、空を飛ぶことができたのだ。いや、空を蹴って走っているといった方が正しいか?

そりゃあ、こんなダンジョンに出現するわけだし、落下しないような能力を持ってるよな。

気付いた時には無防備な状態で真後ろに回り込まれてしまっていた。

「ウニャニャー!」

「その姿で突進か! ぐっ!」

風の反動を使っているので衝撃が大きい。ダメージではなく、明らかに下に落として倒すことを目的にした攻撃だろう。

「このダンジョン、嫌らし過ぎだろ!」

それでも何とか落下する事だけは免れ、遠距離攻撃でモンスターたちを撃破できていた。だが、これから先が中々厳しそうだ。

他の精霊の試練に登場するモンスターに比べ、戦闘力自体は低いだろう。攻撃力も防御力も大したことは無い。だが、回避力が高い上に、飛行能力持ち。しかも攻撃には吹き飛ばし属性が付いている場合も多い。いつか落下して死ぬ未来しか見えなかった。

「うーん。探索はそこそこにして、シルフゲットしたら帰るか」

「ヤー?」

「いや、俺たちは飛べないからな?」

それから1時間後。

「素材は幾つか取れたな」

「キュー」

「ヤー」

「うんうん、分かってる分かってる。お前らのおかげだ」

特にこのダンジョンでゲットしたかったエアプランツは、足場の裏側など、少々採取するのが難しい場所に生えている。それを安全にゲットできるのは、登攀を持つリックと、飛行ができるファウのおかげだった。

「こっちが防風草。こっちが暴風草。見た目は似ているが、名前が違うな」

採取した草の内、防風草が7つ、暴風草が1つという割合だ。レア度に関しては同じ3なのだが、このダンジョンでは暴風草の方が珍しいらしい。

「問題は鉱石か」

オルトがいないので、採掘が全然できていない。どうも足場の裏側に採掘ポイントもあるっぽいんだが、ファウとリックでは採掘ができないし、俺もそこまで行けない。

ロープを柱に結んでトライしたのだが、命からがらだった。時間もかかるし、ゲットしたアイテムは低品質の鉄鉱石である。

風鉱石が取れるはずなんだが……。俺の採掘レベルでは確率が低いようだ。

しかし、出現モンスターが風属性の攻撃ばかりしてくるこのダンジョンに、オルトを召喚するのはちょっと難しい。

「帰りに召喚して、少しだけ採掘してもらうか。とりあえずはシルフゲットが最優先で」

そのままさらに4部屋先に進んだ場所で、俺たちは狂った風霊のユニーク個体に遭遇していた。称号などのおかげで出会いやすいはずなんだが、結構時間がかかったな。まあ、物欲レーダーさんが仕事をしているんだろう。

普通の狂った風霊は緑の髪の毛なのだが、目の前の狂った風霊は白い髪の毛だ。これはシルフの長と同じ特徴である。間違いなくユニーク個体だろう。

「よし、倒さないようにテイムするぞ! サクラ、拘束を頼む」

「――」

「みんなは、他のモンスターを頼む!」

「クマ!」

「キキュ!」

いやー、俺の手加減アクアボールでHPを削るところまではいったんだが、その後が大変だった。やはり飛ぶモンスターを拘束するのはサクラでも難しかったのだ。

それでもサクラが樹魔術で麻痺攻撃をしつこく繰り返し、なんとかその動きを止めることに成功していた。

「よし! いいぞ!」

麻痺状態にした位置も完璧だ。あそこなら谷底に落ちることもない。真下がちょうど地面だ。

「あとはテイムする――あ?」

「――……」

思わずサクラと顔を見合わせてしまった。だって、狂った風霊が目の前で死んでしまったのだ。何が起きた?

「……ああ、もしかして落下ダメージ」

飛んでいるところを麻痺させたため、狂った風霊は1メートル程の高さから地面に落下していた。普通ならあの程度の高さで落下ダメージは発生しないはずなんだが……。

多分、打ち所が悪かったんだろう。もろに頭から落ちたのだ。手加減アクアボールで残りHPが1まで減っていたことも災いした。

「風結晶が手に入ったからいいもんね……」

そう自分に言い聞かせなくては泣きそうなのだ。

「はぁ、仕方ない。次は麻痺させてからHPを削ろうな」

「――……」

落ち込み気味のサクラを慰めつつ、俺たちはさらに先へと進むのだった。

それからさらに2時間後。

「召喚!」

「フマー!」

俺はようやくテイムしたシルフを、牧場から召喚していた。入れ替えたのはリックである。

名前:アイネ 種族:シルフ 基礎Lv15

契約者:ユート

HP:38/38 MP:60/60

腕力8 体力10 敏捷15

器用13 知力12 精神8

スキル:糸紡ぎ、風魔術、採集、栽培、機織り、浮遊、養蚕

装備:風霊の針、風霊の狩衣、風霊の鞄

「フマ?」

「よしよし、可愛いな~」

ユニークシルフのアイネは、シルフの長にソックリだった。違うのはさらに幼く見えると言うことと、杖を装備していないところだろう。あと、服もアイネの方がやや地味だ。

だが、白い髪の毛や、白ブラウスに緑カボチャパンツという基本的な部分は一緒である。

それにスキルもなかなか面白い。被服皮革を持っていると予測していたんだが、その前段階のスキルだった。糸や布を作ることができるらしい。

「養蚕ね……。また必要な物を揃えないとな。これからよろしく頼むぞ、アイネ」

「フマ!」