軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

229話 アンデッドはしばらくいいや

「火に囲まれ続けてるのも微妙にストレス感じるし、もう帰ろうかな……」

でも、火鉱石とか発泡樹の実は、実験用にもっとあってもいいんだよね。あと、火耐性塗料は色々と有用なのではないかとも思い直した。食器とかにも使えそうだし、防具に使用できたらこのダンジョンの攻略にも役立ちそうだ。そう考えると、もう少し数を確保しておいてもいい気がする。

しかし、テイムしたばかりであるサラマンダーのヒムカを迎えに行って、その能力や性格をすぐにでも見極めたい気持ちもある。

「うーん……?」

このまま火霊の試練の探索を続けるか、一度切り上げるかどうか悩んでいた時、俺はあることに気が付いた。

「そう言えば、ルフレとファウはもう直ぐ進化なのか?」

ダンジョンに潜っているうちにルフレとファウのレベルが上がっている。ルフレが24、ファウが23だ。

ルフレがオルトと同じ条件で進化するとなると、あと1つレベルアップすれば進化なんだよな。ファウはレベル25で進化と決まっているわけじゃないが、両親であるオルト、サクラともに25だったことを考えると、その可能性は高いはずだ。

「これは狙っていくしかないだろ」

「フム?」

「ヤー?」

全然分かって無さそうなルフレとファウの頭をナデナデしつつ、今後の予定をまとめていく。まだしばらくダンジョンに挑戦を続けるなら、一度火霊門を出て畑に戻る方がいい。色々と準備を整えないといけないのだ。

ここで切り上げるのであれば、HPとMPを使い切るまでもう数戦こなすだけでいいんだけどね。長時間戦うとなると、ポーション類がもう残り少ない。

それに、長時間戦闘するなら、ヒムカを連れてきた方がレベル上げにもなるし、今日の分の畑仕事も完全に終わらせておかないといけない。

そう考えて、火霊の試練を脱出した直後であった。

「カタカタ」

「うわあぁ!」

俺は思わず悲鳴を上げてしまっていた。

だって、目の前にいきなり武装した骸骨が立っていたんだぞ。誰だってビビるだろう。しかもその横にはそれなりにリアルなゾンビがいるし!

ゾンビの見た目的にはいわゆる腐った死体ではなく、ウィルス感染系の外見をしている。まあ、どちらにせよ気持ち悪いことにかわりはないが。

「あ。すいません。驚かしちゃいました?」

「あ、え?」

一瞬、ゾンビが可愛い声で喋ったのかと思ったが、違っていた。アンデッドの後ろからひょっこりと誰かが顔を出したのだ。

頭のてっぺんからぴょこんと突き出た白い耳。マジックのアシスタントをしているバニーさん風の可愛い系の衣装。メッチャ可愛い、ウサギ獣人の男だった。

そう。男だ。

このゲームは性別をリアルからは変えられないし、初対面でも鑑定すれば性別が分かる。目の前にいる、一見美少女に見えるウサミミさんは、見紛う事なき男なのであった。

ウサミミの男。でも可愛い美少年。そして、フリフリ衣装。なんだろう、素直にキモイと言い切れないこの感情……。

上半身の装備は、基本は燕尾服風で、そこにフリルなどを足してアレンジしてある。下半身はミニスカートに、黒白のストライプニーソックスだ。そうか、装備の外見はいじれるから、男でもスカートが履けるんだな。

「どうされました?」

「い、いや、なんでもない」

くっ、可愛い顔で小首を傾げて俺を見上げるんじゃない! やばい扉が開いたらどうするんだ! まさかゲームの世界で男の娘に出会うことになるとは! いや、待てよ。ゲームの世界で出会うのは別に変じゃないのか? むしろ、ゲームの世界にこそいる存在なわけだし、それが当たり前か? やばい、訳が分からなくなってきた!

「えーっと、そのー、骸骨がいたから」

「すいません。僕の従魔です」

ボクっ娘キター! いや、違う! 男だから当たり前だった。もう、おっさんはパニック状態だよ!

「えーっと、テイマー?」

「いえ、ネクロマンサーです」

「え? まじ?」

さらに驚きだ! 超不人気職のネクロマンサーにこんなところで出くわすとは! たしか全体で30人くらいしかいないって聞いたことがあるぞ。

「はい、まじです。この子たちが証拠ですよ」

「カタカタ!」

「ヴァァァ」

白い骸骨とゾンビがフレンドリーに手を挙げて挨拶してくれた。めっちゃ怖い。そして気持ち悪い。

実はこのゲーム、この手のスプラッタ&ホラー案件に関しては、プレイヤーからの見え方を変更することもできる。小、中学生や、苦手な人間に配慮した結果なのだろう。

しかもいくつか種類があり、黒っぽい影のように見えるフィルターや、凄まじくマイルドに見えるフィルターなどがあるそうだ。

ただ、ここまでゴースト以外のアンデッドに出くわさなかったので、俺はその設定をデフォルトのままにしていたんだよね。そもそも、せっかくファンタジー世界に来た気分なんだから、その辺は妥協したくない気もする。今後、もっと気色悪いアンデッドが出た時にどうするか考えよう。

「可愛いでしょう?」

「か、かわいい?」

「はい! 動く骸骨とかセクシーですよね! このタイプのゾンビが速く動く姿とか見てるだけでキュンとするし!」

やばい、なんだこいつ。男の娘で僕っ子でネクロマンサーでアンデッド好き? それぞれの特徴にインパクトが凄まじすぎて、逆にイメージが掴みにくいな。

「改めまして、ネクロマンサーのクリスです」

「えー、テイマーのユートです」

「知ってます! 有名人ですもん!」

語尾に「もん」ってつけるな! 可愛いじゃないか!

「白銀さんですよね?」

「まあ、そうだな」

「お会いできて光栄です。それにしても、白銀さんはアンデッドをテイムしないんですか?」

「え? アンデッド?」

「はい!」

クリスは目をキラキラさせながら、ズイと近づいて来た。ハラスメントブロックが機能しているので接触はしないが、メッチャ近い。

「確かに白銀さんのモンスたちは、世間的に言えば可愛いのでしょう! ですが、僕に言わせれば甘いです!」

「は、はあ」

「脳内で、この小さくて可愛い従魔たちの後ろに、骸骨を足してみてください! ゾンビでもいいですよ? どうです?」

「どうですって……」

今にも襲い掛かられそうな「オルト! 後ろ後ろ!」の図にしか思えないんだが。

「ステキでしょ?」

「そうかな~」

「そうですよ。可愛い従魔に、さらに可愛いアンデッドを足すんです。すっごく可愛くなるに決まってるんです」

アンデッド好きの趣味はわからんな。そもそも、クリスはうちの子たちにあまり興味が無いらしい。アメリアやウルスラがオルトたちに向けていた視線にくらべると、その熱量が全く違っている。

アンデッド一筋ってことなのだろう。

「僕のおすすめは第3エリアに登場するプアゾンビですよ! 進化先に、ゾンビとスケルトン、どっちも選べますから!」

「ああ、そう……」

「ゴーストもいいんですけど、やっぱりスケルトンやゾンビにくらべると可愛さが一段落ちますからね」

「えーっと、機会があったら考えてみるよ」

やばい、ここは一時離脱だ。このままでは本気で色々な扉が開いてしまう! 俺はノーマルでいたいんだ! 男の娘もアンデッドも、遠くから眺めるだけで充分である。

「じゃ、じゃあ、おれ用事があるんで」

「あーん。もっとアンデッド談義しましょうよ~!」

「さ、さよなら!」

「次会ったら、ゾンビの可愛さについて教えてあげますね~」

ノーセンキューです!