軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

227話 ワンダリングロック

次の部屋には、予想通りというか期待通りというか、いつか出現するだろうと思っていたモンスターが俺たちを待ち構えていた。

「狂った火霊だな」

今までの狂った精霊の例に漏れず、サラマンダーに似た背格好なのに顔がメチャクチャ怖かった。

やつれた雰囲気の細面に、丸い穴が3つ空いている。ボーリングの玉の持ち手っぽいって言えばいいかね? 鼻はなく、目と口があった場所が暗く落ち窪んだ穴となっているのだ。

眼球はないのに何故か睨まれている気がするのは、俺が狂った火霊の外見にビビっているからだろうか?

「あ、相変わらず不気味だぜ」

あれが可愛い精霊さんになると思えん。

「まあ、ユニーク個体でもないし、普通に戦ってみるか」

運良く他に敵もいない。色々と検証するチャンスだろう。すると、意外に戦いやすい事が分かった。

まず、狂った火霊の攻撃方法は火魔術と近接格闘なのだが、火魔術はルフレと俺のアクアシールドでほぼ無効化することができた。

ほぼと言うのは、ダメージを軽減は出来ても、完全にゼロにすることが出来ないからだ。だが燃焼状態になるのを防ぐ効果があるらしく、度々火炎を浴びた前衛組が1度も燃えることはなかった。

これは大きな発見だな。上手く利用すれば、このダンジョンの攻略に役立つだろう。

近接格闘に関しては、オルトがほぼ完ぺきに防いでくれる。動きもファイアラークに比べれば遅いし的も大きいので、クママとドリモの集中攻撃であっさりと倒すことができていた。

狂った火霊に対してファウの火魔召喚を使ってみたんだが、ほぼダメージは与えられなかった。攻撃の衝撃で動きを阻害することはできるものの、それだけだったら演奏にMPを使ってもらった方が有意義だろう。

「狂った火霊はオルトがいてくれれば普通に戦えるな」

「ムム!」

力こぶポーズをするオルトが頼もしいぜ。

「ルフレもアクアシールドを優先的に頼むな?」

「フム!」

皆を褒めながら次の部屋に進むと、2体の狂った火霊に加えて、新たなモンスターの姿があった。

「デカい岩にしか見えないが……。ワンダリングロック?」

それはバランスボール程度の、灰色の岩の塊であった。よく見ると、岩の表面に顔らしきものがある。こちらを睨む様な、ナマハゲっぽい鬼面である。

サイズや色的に、いきなり自爆呪文をぶっ放したりしないか心配になる姿をしているな。

「オルトはワンダリングロックを警戒。クママとドリモは先に火霊を狙え。リックはワンダリングロックの注意を引きつけろ」

「クマ!」

「モグモ!」

「キュ!」

「ファウは防御重視の演奏を! ルフレはアクアシールドをドリモたちに!」

「ヤー!」

「フム!」

本当に自爆するかどうかは分からないが、初見のモンスターに対しては様子見をしたい。オルトの防御力を信じて任せよう。今回は俺も水魔術をガンガン使って行くぞ。先に狂った火霊を落として、ワンダリングロックに集中するのだ。

ワンダリングロックの攻撃方法は転がっての突進らしい。あの大きさの岩が突っ込んで来る姿は中々迫力がある。だが、オルトは危なげなく受け止めていた。

「よし、ワンダリングロックはオルトに任せれば問題ない! この隙に火霊たちを倒すぞ!」

なんて思っていたんだが……。

「ゴロゴゴー!」

「ムムー?」

なんと、オルトが吹き飛ばされた! ワンダリングロックのクリティカル攻撃をくらってしまったらしい。吹き飛ばし耐性を持っているはずのオルトが、部屋の壁際まで飛ばされていた。

普通のダンジョンだったら、復帰にちょっと時間がかかる程度の話で済むんだが……。

「ムムー!」

「オルト! いま消してやるからな!」

今回の戦闘ではクママとドリモを優先したため、オルトにはアクアシールドを使っていない。だがそのせいで壁炎の効果をもろに受け、燃焼状態になってしまっていた。

大慌ての様子でこちらに走ってくるオルトに水をぶっかけてやる。なるほど、このダンジョンのギミックを利用してダメージを増加させてくる敵か!

「ム、ムムー」

「ふぅ。焦ったー」

やっぱうちの子たちが燃えている姿は、何度見ても慣れないな。しかもオルトと俺が目を離している隙に、ワンダリングロックがリックに攻撃を仕掛けていた。

運悪く攻撃直後の硬直中に攻撃されたらしく、まともにワンダリングロックの突進が当たる。吹き飛ばし耐性が無いどころか、小型で軽いリックは盛大に飛ばされてしまった。

「ギキュー!」

「ああ! リックー!」

リックが燃えている姿はオルト達以上に心臓に悪い。全身が炎に包まれているからな。

「ほら、水だぞ!」

「キュ~……」

俺はリックの火を消してやりながら、オルトに指示を出した。

「オルト、ワンダリングロックをもう少しだけ抑えていてくれ。リックは麻痺を狙っていけ。白梨を木実弾に使っていい!」

「ムム!」

「キキュ!」

良い敬礼だ! その間に、俺は狂った火霊を撃破するぞ!

そして俺たちはアクアボールを盛大に使いまくって、狂った火霊2体を撃破する。ドリモの燃焼はルフレが即行で治してくれたので、俺が攻撃に集中できたのも大きかっただろう。

「次はワンダリングロックだ!」

まあ、俺たちがそう意気込んで振り返った時には、もうワンダリングロックは死に体だったけどね。リックの木実弾によって麻痺させられ、動けなくなっていたのだ。あとは全員の攻撃で即行撃破である。

岩なだけあって硬かったが、麻痺していればドリモの追い風+強撃コンボの的だ。なにせ、成功するまで繰り返せる。しかも樹属性が弱点であるらしく、俺の樹魔術でかなりのダメージを与えることができた。

「しかし、この岩野郎は厄介だな……」

やはりオルトに相手をしてもらうべきだろう。先程はクリティカルを食らうという不運があったものの、それさえなければオルトの受けの敵ではない。残っている2種類の敵に関しては、ファイアラーク、狂った火霊の順で撃破するパターンがいいかな?

モンスターへの対処はそんな感じでいいだろう。後は、狂った火霊のユニーク個体が出てきたらテイムするだけだ。

このダンジョンでは無理をするつもりはないので、そこそこの成果で脱出するつもりだった。

「採取物もあまり良くはないし」

この時点で採取できているのは、微炎草と火鉱石、銅鉱石であった。微炎草は畑で育てた物の方が品質が高いし、鉱石は土霊の試練の方がいい物が採れる。火鉱石はいい物なのだろうが、俺には売る以外の使い道がないし、目の色を変えて採る程の価値はなかった。

暑気耐性薬の材料が手に入ると期待しているんだが、どうだろうね?

「いや、待てよ。鉱石って、塗料に使えるんだっけ? もしかして火鉱石も?」

軽く調べてみると、火耐性塗料という物を作るのに、火鉱石が必要であるらしい。別に火耐性とかどうでもいい。俺が塗料を塗るのは日用品ばかりだし。

ただ、その色は赤とオレンジのマーブル模様で、非常に美しかった。この色だけでも、入手する意味はあるだろう。

「ふむ……火鉱石は少し確保しておくか」