軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

154話 レベリング

サクラの木工が終わったあと、俺たちは水霊の街に向かう準備をしていた。農業ギルドで高級肥料を買い、水臨大樹の精霊様に挨拶をしにいった。

「良く来ましたね、我が娘よ」

「――♪」

大樹の精霊様に頭を撫でられてサクラは嬉しそうなんだが、やっぱりイベントみたいなことは起きない。まあ、サクラが嬉しそうだからいいんだけどね。

いや、急にサクラが光り始めたぞ。何だ? 驚いていたら、光が収まった直後にサクラが何かを俺に差し出してきた。

「従魔の心!」

「――♪」

名称:従魔の心・サクラ

レア度:1 品質:★10

効果:従魔の心が結晶化した物。売却・譲渡不可

オルトに続いてサクラもか。以前出会ったテイマー仲間のイワン君と情報交換した時に、従魔の心の詳しい情報もゲットしている。

これは俺の予想通り、従魔の好感度が最大になるとゲットできるアイテムらしい。そして、これと宝石を錬金術で合成すると、特殊なアイテムが作れるのだ。まあ、合成するためには獣魔ギルドのギルドランクが7になっていないとダメなので、俺にはまだ無理なんだけど。もう少しでランクアップすると思うので、依頼を頑張ろう。

「くれるのか?」

「――♪」

「ありがとな」

それにしてもこのタイミングでサクラの好感度が上昇したってことは、大樹の精霊様に会わせてあげると喜んでくれてるってことだよな。今後も忘れずに毎週会いに来よう。

その後、水霊の街へは、ほぼ問題なく到着できた。1度通ったルートだし、敵はもう相手にはならないからな。

そんなこと考えていたら――。

「ルオオオオオ!」

「ぎゃぁぁぁぁ! 逃げろ~!」

「ルオオオオ!」

久しぶりのプレデターでした! 森の木々に隠れており、発見されるまで気づかなかったのだ。羽音の森の徘徊ボス、プレデターはジャイアントグラスホッパーという巨大なバッタである。

外見は巨大なショウリョウバッタなんだが、結構リアルだ。特に口の辺りは見るだけでゾワッとする気持ち悪さだった。こいつがビョンとジャンプして襲って来るのだ。メチャクチャ怖い。

俺たちは全力で逃走し、命からがら水霊門へと逃げ込んでいた。いやー、出くわしたのが水霊門のそばで良かった。

「歓迎します。解放者よ」

「今日は一日居るので、よろしくお願いします」

まずは軽く休憩しよう。水霊の街で釣りをしながら、失ったHPとMPを自動回復させる。今日もエビとシジミが穫れたし、幸先が良いだろう。

その後、俺たちはダンジョンへと向かった。

「今日の狙いはファング・グルーパーだ。みんなも頼むぞ」

「ムム!」

「ヤー!」

「キュー!」

「クマ!」

「――♪」

「フムー!」

いやー、皆が横並びで敬礼する姿は壮観だね。そして一糸乱れぬ敬礼にちょっと驚いた。絶対にどっかで練習してるな。まあ、やる気があるのは良い事だ。

うちの子たちは格上の相手でも、頑張って戦ってくれた。俺なんか狂った水霊とかが出たら未だにビビっちゃうのにな。だって、あの顔だよ? 声も怖いしさ~。完璧にホラーじゃん。絶対に生理的に無理っていうプレイヤーがいると思うな。

そうやって苦労して戦闘を続けながら、俺たちは、半日ほどダンジョンの浅い階層と水霊の街を往復し続けた。1度採取してしまうとリポップに時間がかかるので、採取はそれほどできない。だが、狙いのファング・グルーパーは順調に狩ることができている。

もう20匹は仕留めただろう。おかげでレベルがかなり上がった。これがレベリングってやつなんだろう。このゲームを始めてから、本格的なレベリングは初めてやったかもな。

俺は基礎レベルが4、職業レベルが5、他にもスキルがかなり上がっている。水魔術は21まで達し、アクアヒールという回復魔術を覚えた。これはかなり使える術なのだ。何せ、ポーションを使わなくても回復が出来て、アイテムの温存になる。まあ、今日はもうポーションを使い切っちゃったけど。もうちょっと早く覚えてればな~。

樹魔術も11になり、プラントヒールを覚えた。植物を癒し、栽培を僅かに促進させる術らしい。ヒールとは名付けられていても、普通の回復魔術としては使用できない術だった。これで癒せるのはサクラだけだ。農業には使えるだろうけどね。

従魔たちはオルト、リック、クママが3、サクラが4、ファウ、ルフレが5つもレベルが上昇している。クママはレベル20で力溜めというスキルを覚えて、より攻撃力が増したな。これは、一定時間かけて力を溜めると、その次の攻撃力が倍化するというものだ。相手が硬くてもダメージが通るため、亀戦で重宝している。

あと目を引いたのはリックの上昇値だな。今までは1レベルにつき、HPMPが+2、さらにステータスの総計が+2されていた。ただ、進化したおかげか、HPMPが+3ずつ、ステータス総計が+3されるようになっている。

基礎ステータスの低い、いわゆる初期の雑魚モンスと呼ばれている様な種族だが、進化するレベルが低く設定されているので、進化を繰り返していけば上位種族との差が多少は縮まりそうだった。

これ以上の探索は厳しいし、最後に危険覚悟で未探索の区域に突っ込もうかな? 今日は安全策で、昨日調べた場所よりも奥には行っていない。少しは冒険しないとね。ダンジョンから脱出するための使い捨てアイテム『脱出の玉』と、通常戦闘から離脱できる『逃走の玉』は未だに使わずに温存できているし、何とかなるだろう。

「よし、次の部屋に行くぞ。いいな?」

「ムム!」

「――!」

盾役であるオルトとサクラを先頭に、俺たちは新たな部屋へと足を踏み入れた。

「おお~。遺跡の中に樹か。神秘的だね~」

その部屋は、今までの部屋とは大分違っていた。広さは同じくらいなのだが、部屋の中央に円形の水場が設置してあり、そこから一本の樹が生えていたのだ。

「敵は――いるよね!」

樹の影からポンド・タートルが姿を現す。ただ、1匹だけだ。狂った水霊よりは時間はかかるが、攻撃力は低いし、死に戻る可能性は低い相手である。これはラッキーだろう。

「一斉攻撃だ! みんな!」

「クマー!」

「キュー!」

クママとリックを先頭に俺たちは亀に挑みかかった。そして、ダメージを食らいながらも亀を倒すことに成功する。ここでの戦闘も慣れて来たものだ。いや、苦戦はするけどさ。

「ほほー。これは綺麗だなー」

「ヤー」

「フムー」

俺は改めて部屋を見回した。青く光る部屋の中央に力強くそびえる青々とした1本の樹。絵になる光景だ。樹を鑑定してみると、水樹と表示される。聞いたことがある名前だな。

「これが水樹なのか」

どうやらこのマングローブの様な形の樹が、俺の杖にも使われている水樹であるらしかった。なるほど、水樹ね。

「キキュ!」

「クマー」

リックとクママが水樹を調べているが、特に目ぼしい物はないらしい。まあ、この水樹自体が良い木材だしね。俺は取りあえずこの木を伐採しておくことにした。

「よし、水樹ゲットだぜ!」

ただ、樹がある代わりに魚はいなかったのは残念だな。

「さて、この奥は――ストップ!」

「ム?」

危ない危ない。部屋の前で使った水中探査には、ポンド・タートルの反応が2つもある。しかも、部屋全部をカバーできているわけではないので、探知範囲外にさらに居る可能性もあった。これは絶対に勝てんだろう。

「今日はここまでにしておこう。戻るぞ」

結局、戻る道中で狂った水霊2体に遭遇してしまい、逃走の玉を使う羽目になったが、何とか死に戻りを出さずに街まで帰還できたのだった。

今日は水霊の街の宿屋でログアウトして、明日東の町に戻ることにしよう。