軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

140話 試練突入

水霊の街で釣りを始めてから3時間。釣果は上々であった。店で売っていた魚は全部入手できている。

手に入れたばかりの水中探査がメチャクチャ役に立った。魚群探知機の様に利用できたのだ。まだ精度が低いから魚の種類までは正確には分からないけど、魚の近くにピンポイントでエサを落とせた。

それでもビギニウナギは中々手ごわかったけどね。リッケの釣り餌をかなり無駄にしたが、最終的には2匹手に入った。

「よし。そろそろあがるか。オルト、罠籠を引き上げてくれ」

「ム!」

罠籠と言うのは、釣り場などで仕掛けておくと、獲物がかかるかもしれないというアイテムだ。何が取れるか、そもそも取れるかどうかも分からない運任せの道具ではあるが、うちには幸運持ちのオルトがいるからね。もしかしたらと思って購入してみたのだ。

「ムームムッ!」

「お、何か穫れたか」

「ム」

オルトが差し出した罠籠の中には、エビが2匹と、二枚貝が2つ入っていた。ビギニエビとビギニシジミとなっている。

にしても、貝はどうやって罠に入ったのか。まあ、ゲームだし、深くは気にしなくていいか。

「やったな!」

「ム!」

釣りも堪能したし、いよいよダンジョンに向かってみますか。もしレベル帯が合わない高難易度ダンジョンだったら速攻で逃げ出そう。

俺は水遊びをしていたオルト以外のモンスたちを呼び戻し、ダンジョンに向かった。

ダンジョンへと続いているという扉の前に、1人のウンディーネが立っている。

「こんにちは。試練へ挑戦なされますか?」

「そのつもりなんだが、1つ質問いいか?」

「なんでしょう?」

「入ったら、攻略するまで出られないとかないよな?」

「それは大丈夫ですよ。好きな時に戻ってこれます」

だったらとりあえず入ってみればいいか。戦闘は無理でも何か有用な物が採取できるかもしれない。

「じゃあ、入ろう」

「分かりました。ご武運を」

と言う事で、勢い込んで水霊の試練に足を踏み入れた俺たちだったんだが、最初の部屋には何もいなかった。

「……肩透かしもいいとこだな」

ちょっとホッともしたけどね。

ダンジョンの中は、先程の広場とはまた材質が違っていた。青みがかった、少しザラッとした手触りの石だ。

最初の部屋は12畳ほどの部屋になっていた。正面に先の見えない通路が伸び、左右の溝には綺麗な水を湛えている。

どうも水の中に光源があるらしく、部屋全体にユラユラと揺れる水の影が映し出されていた。これがまた幻想的で美しいのだ。正直、ダンジョンとは思えない雰囲気だ。

「水の中の光はどんな感じだ?」

「ムムー」

「クマー」

この美しい光景を造り出す光源がどんなものなのか少し気になり、オルトとクママと一緒に溝の中を覗き込む。

「あれか~。光の玉みたいなのが底にあるな」

「キュー」

「ヤー」

俺の頭の上から水の中をのぞくリックとファウも、その美しさに感嘆の声を上げていた。

「それにしても深いな……」

あの光源の深さを考えたら、水深10メートルくらいはあるんじゃないか? 泳げないプレイヤーが落ちたら、それだけで死に戻るだろう。もしかしてこれもトラップなんだろうか?

しかも、どうやら下はもっと広くなっているらしい。多分、左右の溝が下で繋がっているんじゃなかろうか?

「そうだ、こんなときこそあれだ」

俺は水中探査を使ってみることにした。

コーンというソナーの様な甲高い音と共に、水中の3Dマップが浮かび上がる。

「お、やっぱり下で繋がってるな」

俺たちが立っている場所は実は橋の様な形状で、その下は水で満たされていた。それだけではない、どうやら橋の下に宝箱が隠されているらしい。

3Dマップにはそういった情報も色違いで表示されるようだった。これは思った以上に便利だな。

「にしても、宝箱か……。ぜひ欲しいところだが――」

うちの子たちで、潜水が出来そうな子はいない。

「仕方ない、俺が行くか……。アクア・ラング!」

水中呼吸薬を使おうかどうか迷ったが、これくらいならアクア・ラングだけで行けると思うんだよな。

「じゃあ、ちょっと行ってくるな」

「――……」

「大丈夫だって」

心配そうなサクラの頭を撫でて安心させると、俺は意を決して水中に飛び込んだ。

そして気づく。

(あ、やばい。ローブが水吸って動きが……)

前に水路に入った時はそこまで気にならなかったんだけどな。リアルに比べればましなんだが、さすがに全身水に浸かると、かなり動きが阻害されてしまうらしい。サクラが心配してたのはこれか!

くっそ、仕方ないな。俺はとりあえずローブなどの防具をすべて外して、インベントリに仕舞い込んだ。これで多少はマシなはずだ。モンスターが出現したら一発アウトだけどね。

目論見通り、水中で泳げるようになったな。まるで水の中に沈んだ遺跡でダイビングをしているかのようだ。しかも光源のおかげで薄暗さも全くなく、ただただ美しかった。

おっと、今は見とれてる場合じゃない。下に向かって泳いでいくと、水中は俺が思っていた以上に広かった。俺の低レベルの水中探査スキルでは調べきれない程に。なんと、奥に向かって通路が伸びているではないか。

もしかして、水中にもダンジョンが張り巡らされているのだろうか? これは中々攻略が難しそうなダンジョンだった。

(宝箱発見!)

宝箱は目の前だ。だが、そこではたと気づく。これって罠とかどうなんだ? もし攻撃系の罠だと、防具なしだとヤバいんじゃ……。俺は取りあえず水上に戻ることにした。

「ぷはーっ! あの宝箱どうしよう」

絶対に開けたいが、死ぬのは嫌だ。でも、防具が無いと危険度は跳ね上がる。

「……仕方ないな」

ボーナスポイントは残っているし、スキルをゲットしちゃおう。色々と考えた結果、俺は2つのスキルを取得することにした。

1つは罠察知。これは宝箱に限らず、ダンジョンなどで罠を発見できるスキルだ。今後、ソロで行動するのに役立ってくれるだろう。

もう1つが水泳。これがあると防具を装備したままでも泳げるようになるらしい。釣りのために水辺に行くことも増えるだろうし、取っておいても良いと考えたのだ。

罠察知が4ポイント、水泳が2ポイント必要だった。

「じゃあ、再チャレンジだ」

再び水に入ると、今度はローブを着たままでも泳ぐことができた。重さは感じるが、先程とは比べものにならないくらいスイスイ泳げる。

そして、罠察知で確認したところ、この宝箱に罠はなかった。大騒ぎして損した気もするが、どうせ今後必要になるスキルだったし、仕方ない。

宝箱を開くと、中には1つのネックレスが入っていた。鑑定は後回しにして、とりあえず水上に戻る。

「空気のネックレスか。良いものじゃないか」

名称:空気のネックレス

レア度:3 品質:★9 耐久:200

効果:防御力+4、呼吸ボーナス

重量:1

どうやら、その名の通り空気を供給してくれて、潜水時間にボーナスが入るらしい。防御力は低いものの、このダンジョンの攻略にはとても役立つだろう。

さらにもう1つ、インベントリにアイテムボックスが入っていた。どうも、隠し宝箱を最初に開けたプレイヤーにボーナスが与えられるらしい。

開くと、青翡翠という宝石が入っていた。以前入手した緑翡翠の色違いみたいだな。これは良いものだ。

因みにこのゲーム内で、普通の宝箱は採取ポイントと同じで個人個人にポップする。なので、俺が開けた直後でも、他のプレイヤーは宝箱が無いと言う事態にはならないのだ。