軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

120話 グラシャラボラスの脅威

俺たちサポート班がグラシャラボラスに戦いを挑んで10分後。

「もう半分になっちまったぞ!」

「くそ! お熊様がもうやばい!」

「回復してやれ!」

「ポーションのクーリングタイムがまだ終わってない! 回復魔術持ち、頼む!」

すでに3分の1の生産職が死に戻ってしまっていた。やはり装備が紙なので、攻撃を食らう=死に戻りである。グラシャラボラスの攻撃は思っていたよりも遅く、戦闘職なら躱し続けることも出来るのかもしれないが……。

前衛での戦闘経験が乏しい俺たちには、そんな芸当は不可能なのだ。あるものは拳で叩き潰され、あるものは飲み込まれ、あるものはぶん投げられ、次々と数が減っていく。

「戦闘部隊、早く戻って来て!」

「グラアアオァァァ!」

「ぎゃー!」

「ああ、スケガワ!」

人が減れば、標的にされる確率も上がる。

「グラァァ!」

「やべっ!」

ガーディアン・ベアにアンチ・パラライズを振りかけ終えて、一瞬気を抜いてしまった時だった。真上から、グラシャラボラスの拳が俺に向かって振り下ろされている。凄まじい速度で迫る拳。

あー、これは躱せない。死んだな~。俺が抜けると従魔たちも消えるから、一気に人数が減っちゃうなー。

そんなことを考えていたら、いきなり前から飛びかかって来たオルトに、思い切りドンと突きとばされた。

「ムムー!」

「え? オルト?」

そして、俺の鼻先を巨大な拳が掠め、ドズンという重たい音が響く。

俺は凄まじい風圧で後ろに飛ばされ、尻もちをついていた。慌てて顔を上げるが、今まで俺が居た場所にはグラシャラボラスの拳がデンと鎮座していた。

一縷の望みなどかける隙も無い。今の攻撃でオルトが死に戻っていない可能性はゼロだった。

グラシャラボラスの拳が引き上げられる。

その下には、何も存在していない。見えるのは地面と草だけだ。オルトはいない。

「オルト……まじかよ!」

オルトが居たはずの場所に駆け寄るが、当然何もなかった。

やばい、助かったんだけど、なんか泣きそうだ。考えてみたら、目の前でモンスが死に戻るのは初めてだった。思った以上にショックがデカイ。

すぐに復活するのだが、目の前で死に戻られた衝撃はかなりのものだ。

「くそ……! このデカブツ! やりやがったな!」

「――!」

「クックマー!」

思わずグラシャラボラスに突撃しそうになって、サクラとクママに止められてしまった。

「――!」

「クマ!」

俺を叱る様に、サクラが怖い顔をしている。クママもポカポカと俺の足を叩く。

「ぐ、すまん」

オルトの死を無駄にしないためにも、馬鹿な真似はしちゃいかんな。まさかモンスたちに諭されるとは思わなかった。

というか、オルトが死に戻った衝撃の余波は、俺だけに留まらなかったようだ。

「オオオ、オルトちゃーん!」

「ノームちゃんがー!」

「ぎゃー!」

オルトの死に戻りを目撃してしまったファンたちの口から悲鳴が上がる。

しかもそのせいで動きが止まって、死に戻ってしまったプレイヤーが数人いた。おいおい、ショック受け過ぎだろ!

下手したら俺よりもショック受けてないか?

「きゃー!」

「アメリア!」

一番嘆いていたアメリアが、グラシャラボラスの剛腕に捕らえられ、お手玉の様にポーンと投げられた!

「きゃぁぁぁ――!」

ドン!

ゲームなので、高所から落下したからと言って悲惨な姿にはならない。血や諸々の液体が飛び散ったり、内臓がデローンということもなく、その姿のまま地面に叩きつけられ、HPが減少するだけだ。

それでも、知った顔が遥か上空から地面に落下する光景は、中々恐怖を誘う。目の前で死に戻るし。

しかも、アメリアが死に戻ったということは、最大戦力の一角であったアメリアのモンス達も消えるという事だ。これって、不味いんじゃないか?

さらに悪いことは重なるもので、グラシャラボラスの右足を封じていてくれていたガーディアン・ベアが吹き飛ばされ、動かなくなってしまった。あわてて回復に向かったプレイヤーの回復魔術でもHPが一切回復しない。多分、死亡の代わりの行動不能なんだろう。

「白銀さん! これって、一度態勢を立て直した方が良くないですか?」

「た、確かに」

「じゃあ、皆に――」

ふーかと一旦距離をとるかどうか、相談している時だった。

「ブルオオオオ!」

再び、謎の咆哮が森に響き渡った。

「あれをみろ!」

「また何か来たぞ! あれは何だ?」

「鳥か?」

「飛行機か――って、飛んですらいないけど!」

「お約束だって。まあ、スーパーマンじゃないことは確かだけど……」

皆が騒めく中、姿を現したのは巨大な猪だった。こいつにも見覚えがある。もう一匹の守護獣、ガーディアン・ボアだ。

「ブルオオオオ!」

「グラアァ!」

現れたガーディアン・ボアは勢いを落とすことなく、ガーディアン・ベアがしがみ付いていたのとは逆の左足に突進していった。

長い牙で左足をロックしつつ、足首の辺りに噛み付いて動きを封じてくれる。それを確認したふーかは、即座に生き残ったプレイヤーたちに指示を飛ばした。

「今の内に態勢を立て直しましょう! 一旦白銀さんの周りに集まってください!」

「ちょ、何で俺の周り?」

「だって、白銀さんがリーダーだし!」

「いやいや、何でだよ! ふーかがリーダーだろ!」

「私は料理班のリーダーなだけです! 全体のリーダーは白銀さんでしょ! 貢献度も1位なんだし! ねえみんな?」

ふーかがいつの間にか集まってきていた他の生産職に尋ねる。すると、何故か皆が一斉に頷くではないか!

「な、何故……。あ! 面倒な役を押し付ける気だろ!」

「……そ、そんな訳ないですよ!」

「そ、そうそう! 白銀さんなら相応しいって思ってるからこそだ!」

なぜ目を合わせない! くそ、だったら俺の指示に従ってもらうからな!

「あーもう! とりあえず回復をして、その後はガーディアン・ボアの援護だ! 急げよ!」

「「「おう!」」」

みんな調子いいんだから!