軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

107話 スケガワ

ボス戦を終えた俺たちは、リッケたちを連れて村に戻ろうとしていた。道中、コクテンたちにボスと戦う事になったいきさつは説明済みである。

それはもう羨ましがられた。称号についてもそうだし、強い相手との戦闘もだ。

コクテンたち陽動組の方では、ジークフリードが大活躍だったらしい。防御重視で挑んだらしいが、やはりガーディアン・ベアは強く、死に戻り寸前にまで追い詰められたらしい。

そこで活躍したのがジークフリードと、彼の愛馬だった。ガーディアン・ベアのヘイトを引き受けた後、付かず離れず囮となって逃げ続けたのだ。その間にコクテンたちは回復し、馬が疲れ始めた頃に再び戦いを引き受ける。それを繰り返して、なんとか注意を引き続けてくれたようだ。

「僕よりも、ハイヨーが頑張ってくれたからね」

「ハイヨー?」

「僕の愛馬の名前さ! どうだい? 格好良いだろ?」

「そっか、騎士系の職業は、騎乗モンスターを持てるんだっけ?」

「ああ! 騎士と言えば白馬だからね! キャラ作成時にボーナスポイントをつぎ込んで、ハイヨーを手に入れたんだよ!」

俺も人の事は言えないけどさ、ハイヨーって。しかもそのハイヨーなんだが、馬? いや、馬は馬なんだが、騎士プレイをしているジークフリードの愛馬として、これでいいのか?

その外見は、俺の想像する騎士愛馬とはちょっとばかり違っていた。いわゆるサラブレットではないね。顔は、白い奇跡の馬が活躍する競馬漫画に登場したオッサン鼻毛馬にそっくりだ。体はずんぐりむっくりで、どう見てもロバだった。ブサイクじゃね?

「クマ」

「ブルル」

「ムー」

「ブルン」

そんなハイヨーとうちの子たちが話している。すると、ハイヨーがその場で足を折って体勢を低くした。オルトとクママがはしゃぎながらその背によじ登っているな。おいおい、怒られないか?

だがハイヨーは怒りもせず、カポカポとゆっくり歩き出す。うちの子たちはその背の上で満面の笑みだ。面倒見のいいお馬さんだよ! ブサイクとか思ってごめんな!

そもそも、良い従魔って言うのは主が満足できているかどうかが重要だ。うちのオルトだって、最初は馬鹿にされてたけど、俺にとっては最高の従魔だからね! ジークフリードにとってはハイヨーが最高の馬なんだろう。

村に戻った後は、今後の相談だ。何せ、神聖樹はもう1本あるっていう話なのだ。ただ、どうやらまだ発見はされていないらしい。

「でも、絶対にイベントあると思うんだよな」

「まあ、ガーディアン・ボアが暴走してて、神聖樹が枯れかけてるんじゃないですかね?」

「私もそう思う」

俺としては、次の神聖樹に係わるつもりはなかった。今回は死なずに済んだけど、道中もボス戦も、運が良かっただけだ。実力的には全く不足だし、一緒に行くパーティに迷惑かけるだけだからな。あと、それでまた称号をゲットしたりしたら、他のプレイヤーからの嫉妬が凄そうだ。なので、他のトッププレイヤーたちにお任せするつもりだった。

だが、そうはいかない様だ。

「神聖樹に関しては、育樹をお持ちの白銀さんの力が必要かもしれませんよ?」

「今回、樹が復活したのだって、白銀さんたちが何かしたからじゃない?」

そりゃあ、肥料を上げたりしたが、神聖樹が復活したのはボスを倒したからじゃないのか? だが、そう言われると、否定も出来んな。

「ボス戦はともかく、その後ユート君に神聖樹まで来てもらう必要はあるかもしれないね」

「まじか……」

だとすると、できれば村の近くが良いんだが。出現する敵が強すぎると、そもそも辿りつくことさえ出来そうもないのだ。

「2本目の神聖樹の情報は全くないのか?」

「そうだねぇ。少なくとも、発見したって言う話は聞かないな。守護獣の目撃情報もないし」

と言う事で俺たちは分かれて情報を集めることにした。コクテンやジークフリードはプレイヤーへの聞き込み。俺とマルカたちはインゴットを武器にするとどうなるかの調査だ。なので、まずはマルカの言っていたスケガワという鍛冶師に会いに行くことにした。

俺は全然興味が無かったから気づかなかったが、広場の隅で露店を開いていたのだ。マルカの紹介で、噂のエロ鍛冶師と対面する。

「やあやあ、エロ鍛冶師のスケガワです。白銀さんの噂はかねがね」

「ああ、どうもどうも、テイマーのユートです。最近は白銀さんと呼ばれることが多いです」

エロ鍛冶師のスケガワは思っていた以上にフレンドリーだった。もっと、男は死ね! 女だけ来い! みたいなやつだと思ってたんだけどね。

「うん? どうしたんだい?」

「いや、エロ鍛冶師って凄い異名だと思って」

「ああ、もしかして男嫌いだと思ってた?」

「まあ」

「あはは、そりゃ違う。俺はエロ。一人で妄想を膨らませて女性を性的な目で見るのはスケベだ!」

「どうちがうんだ?」

「エロって言うのは、もっとオープンでフレンドリーで、みなと分かち合う物なのさ!」

うん、意味が分からんな。ただ分かるのは、周りにいるプレイヤーたち。特に女性プレイヤーの眼が非常に厳しいものであるという事だけだった。

「わかった。分かりたくないが、何となくは分かった。だからとりあえずその話はそれくらいで十分だ」

「そうか? まあ、その内じっくり話そうか」

いや、もうお腹いっぱいだから。

「実はこれを見てもらいたいの」

「おお! 何だこのインゴット!」

「ボス戦の後手に入れたの」

「もしかしてさっきの、異変が解決したとか言うアナウンスかい?」

「そうそう」

マルカが守護獣からインゴットを貰った経緯をスケガワに教えた。そして、このインゴットで武器を大量に揃えて、今後出現するであろう大ボス、大悪魔グラシャラボラスとの戦いを優位に進めようという計画を語る。

「じゃあ、俺の仕事はこのインゴットを武器にすることだね?」

「やってくれる?」

「格安にしておこう」

「え? いいの?」

「正直、俺みたいな戦闘力が低い鍛冶師が貢献するには、もってこいの話だからね。イベントの方向性から言って、このインゴットを武器にするだけでもポイントが貰えるだろうし」

マルカたちはインゴットを全て提供することに決めた様だ。その代わり自分たちの装備をタダで作ってもらい、余った分はそのままスケガワに提供する。で、スケガワは希望者に対してそのインゴットを使って武器を作り、販売すると。俺はインゴットをスケガワに無償で提供することにした。

最初は難色を示したのだが、俺のためだと思って受け取ってくれと頼み込んで、無理やり渡しておいた。

新たに称号を得ただけでもかなり嫉妬されそうなのに――というか、説明を聞いていた他のプレイヤーの「また?」っていう顔が怖かったのだ。

これでインゴットで儲けたり、武器の使用者を俺が決めたりしたら、余計に面倒なことになりそうだった。まあ、スケガワに押し付けたとも言えるな。

「ふぅ……。まあ事情は分かるけど……。借りってことにしておくよ? もし鍛冶師が必要な時は遠慮なく声をかけてよ」

「まあ、その時は頼む」

「うんうん。その時にエロの真の良さを教えてあげるから!」

もう2度と会わないかもしれんな。

「このインゴットで作った武器のお代は、武器を1つ作った後に決めるよ? 俺の期待通りの経験値やポイントが入らない場合もあるだろうし。ただ、そうだとしても3万G以上は取らないと約束しておこう」

「え、そんな安くていいの?」

3万が安いとか、さすが前線プレイヤーは凄いな。まあ、スケガワが本当にトップ鍛冶師なら、普通はもっと高いんだろう。

「俺もサーバーへ多少は貢献しないといけないからね」

「逆に希望者が凄い事になりそう」

「それもこれも、武器の性能次第だろうな~」

「さっそく試してみてくれない?」

「オーケーわかった」

さて、インゴットに関して俺の仕事は終わったな。後はマルカたちに任せておけばいいだろう。

「じゃあ、俺も情報収集に行きますか」