軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06.転生王子、再び護衛を叱る

そもそもの話、ベディがどこから連れて来られたかって事も説明しなきゃいけないんだけど、そうすると軍部の話もしなくちゃいけなくなるから、とってもややこしい。

ヴァルテ王国の軍部は大きく分けて2つに分かれている。 青(アスール) 軍と 赤(ルベル) 軍。そこからまた細かく色々分かれているんだけど、簡単に言うとアスールが騎士団でルベルが兵士団かな。

騎士って言うのは、何か叙勲を受けた兵士の事なんだけど、まぁ正直貴族出はほぼ騎士になっている。学校を出て入団して、簡単な試験ですぐなれちゃうんだって。

で、もちろん貴族が多いし学卒だから要人警護なんかにもよく付く。

逆に学校を出ていなくても軍に入る事は出来る。それだとルベルから始まり。

ルベルから騎士になれる人も極少数だけどいるし、騎士にならなくても武勲を上げる人もいる。

もう分かったと思うけど、クバラから出て軍に入ったベディはもちろんルベルだ。

しかも話を聞くに、ルベルでも下の方の部隊にいたみたいだから……つまり、王宮について何も知らなかったのだ。

2日の付き合いだけど、ベディの事だから事前に勉強するなんて事はしなかったんだろうと簡単に予想がつく。ボクの事をちゃんと把握していただけでもえらいかもしれない。

今日は一日お休みをあげたつもりだったんだけど、ベディはそうそうに兵舎からボクの使用人用の部屋への引っ越しを済ませて、ボクの所に飛んできてくれたのだろう。護衛の鑑である。

ここが本棟で、王位継承権一位のオリヴィエーロ兄様とその取り巻きがいなければね!!

王様のお父様と正室のご夫人、そして正当な王子様たちが暮らす建物に、側室の子の護衛が、王太子に挨拶もなく、走ってくる…………ボクが護衛を持てたのは2日でした。貴重な体験だったよ、ありがとうベディ…………――――――――――って、そうなってたまるか!!

ボクは殺気立つ兄様のお取り巻きの隙をついて、相変わらず手を振って駆けてくるベディに向かって走り出した。

「ベディ―――――!!」

ガシィッ!

ボクはベディに弾丸のごとくに飛びついた。

自分でもなかなかの勢いだったと思ったが、ベディはビクともせずにボクを受け止めてくれた。

「坊ちゃん?」

ボクが急に飛びついて来たのにはビックリしたみたいだけど、そんなのに構ってるヒマはないよ!

「よかったぁ!ボク迷子になっちゃって、心細かった~!ベディ探してくれてたんだね!!」

「え?いや……」

いやじゃないの!お返事!!

「ね!!!」

「は、はい」

よし!

ボクはベディに抱っこされたまま、顔を顰めている側近たちに囲まれた兄様にぺこりと頭を下げた。

「ごめんなさい、オリヴィエーロ兄様。本棟に来ることがあんまり無いから、迷子になってとりみだしてしまいました」

ボクの言葉に、ようやくここにいるのが王太子殿下である事に気付いたベディの体が固まる。

「ああ……。迎えが来て良かったな。もう行って良いぞ」

オリヴィエーロ兄様もボクが言いたい事が分かったみたいで、頷いてくれた。ほらベディ!早く行って!あっ、ちゃんと礼をしてから!

「第八王子を初めて見ました。騒がしい子でしたね」

「全く、オリヴィエーロ様が同じ年の頃にはもっと落ち着いておりました」

「生まれも田舎で位も低く教育レベルも違うのだから、あんなものだろう」

「臣下も礼儀のなっていない男だったな。どこの騎士団の者だ?」

「あれはルベルの兵士ですよ」

「ルベルの?王族の護衛がルベルの者なのか?」

「まぁ第八王子ですから、それで十分なのでしょう」

違いない、と笑いあいながらも自分の顔色をうかがう側近たちに、オリヴィエーロは心の中だけで嘆息し、笑って見せた。

「私には優秀なお前たちが付いていてくれているから、誇らしいよ」

必死に護衛をかばおうとした弟の姿を思い出しながら、オリヴィエーロは目の前の臣下達の姿を透明の壁越しに眺めた。

◇◇◇

「という訳で、ベディにはまず王宮内の事をちゃんと勉強してもらいます」

正座をしたベディの前に、ボクはなるべく怖そうに見える様に腕組みをしてふんぞり返った。後ろにはメリエルが資料を持って控えている。

「で、でも俺の仕事は坊ちゃんの護衛と毒見で……」

「護衛の仕事をする前に不敬罪でクビかしばり首になっちゃうかもしれないでしょ!」

「しばり……!?」

ビックリするベディにボクがビックリするよ!ここ王宮なんだよ!?

「さっきのは第三王子のオリヴィエーロ兄様で、次期国王なんだよ!?

オリヴィエーロ兄様の周りの人達は熱狂的な信者が多くて、過激派が多いんだから、ベディなんてすぐ牢屋行きになっちゃうの!」

思うにベディは未開の地とされるクバラ育ちだから、あんまり国の恩恵も受けていないし王族にも関わりが無かったのかも。

でも15歳で王都に来たらしいから、4年も軍部にいたら感じそうだと思ったんだけど、ベディがいたのは、ルベル軍の中でも国内の辺境の探索なんかを主体とする第十五部隊だって聞いて納得。辺境出身だからと配属されたらしいけど、何という適材適所。

そりゃ王都にいる期間も短くて、あの容姿のままでも何も言われないよね。

正直そっちが天職だと思うけど、本人の希望は王都勤務だし、ボクもせっかく手に入れた護衛も毒見係も手放したくない。

第十五部隊の人達には悪いけど、ボクはベディを返すつもりはないよ!

「それには勉強だよ!正直ベディには足りない所が多すぎるよ!」

多分それこそがボクに対する嫌がらせなんだろうけど、ボクはあきらめない。

「全くでございます。王宮内の勢力図と配置図を頭に入れるまでは、この棟から出るのも控えてくださいませ」

「護衛なのに!?」

すっごく驚いてるけど、その護衛に必須の項目が足りていないんだから、今のままでは護衛の仕事なんてさせられない。

「うん、早く護衛になれる様にがんばろうね」

「上層部から護衛に任命されているはずなのに、対象に認められないって……」

「それだけあなたが足りていないのです。自覚して猛省して精進なさいませ」

「メリエル、ベディが護衛に足りていないのはベディのせいじゃなくて、足りていない人を選んだ人のせいだからベディを責めないであげて」

「全然フォローになってないっす、坊ちゃん……」

という訳で、ベディはしばらくは王宮の常識を学ぶとして、ボクは毒の勉強を続けることにした。

「え、坊ちゃんも別棟にいるんじゃないんですか!?」

「大きな図書室も温室もここにはないからねー」

「危ないんじゃ……」

今までも護衛はいなかったし、城内では他の兄様たちも結構自由に動いているから平気だよ。でもそう思うなら……

「早く護衛になってね、ベディ」

「うう……はい、頑張ります」