軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

対抗策

「戦闘をおこなったことで分かったことを報告します」

「あぁ」

予想外のことばかり続き、ローデラ男爵の隊がやられてしまった。

スケルトンや市民兵が多く集まった敵の軍に押され、王国の軍は拠点となる場所へと一時撤退した。

貴族たちが集まり、今回の戦いで得た情報がアルドブラノから報告されることになった。

「今回戦っていた平民らしき軽装の者たちは、恐らく一部もしくは全員が奴隷とされていた可能性があります」

戦っている最中、兵の中には平民兵の背中を斬りつけた者が何人かいた。

そして、その背中には奴隷紋が付けられていることが確認できた。

そのことから推察すると、あれだけの人間を集められた理由が想像できた。

「奴隷!? あれだけの数の奴隷をどうやって集めたのだ?」

「……犯罪奴隷などではないと思われます」

「強制奴隷ということか……」

報告を受け、ディスカラは驚きの表情に変わる。

万を超える人間を集めていて、それが全員奴隷などと言うはずがない。

ヴァティーク王国の奴隷は犯罪奴隷しか存在しない。

国中の奴隷を集めてもそれほどの人数に達するはずがない。

しかし、その疑問もすぐに解消されることになった。

犯罪奴隷でないなら強制的に奴隷にしたということになる。

盗賊騒ぎの事件のこともあって、ルイゼン領内で多くの人間が強制奴隷にされている可能性が高いということが分かっている。

それを踏まえて考えると、奴隷を集めたというよりも集めた人間を奴隷化したと考えるのが正解だろう。

「元ディステ家の親子もいたことで、可能性は高いと思われます」

「あのクソ親子が!!」

盗賊事件で首謀者の存在は最後までつかめなかったが、仮面の親子という情報だけは入っていた。

それは恐らく、元ディステ家の親子のことを言っていたのだと王国側は判断した。

その2人を匿っていたムツィオも無関係ではないはずだ。

仮面をしていたのも、独立宣言がされるまで王国側に知られないための物だったのかもしれない。

市民を奴隷にして無理やり従わせる所業と共に、ローデラを殺した存在ということもあって、ディスカラは怒りで拳を強く握った。

「次にスケルトンのことですが……」

「そうだ! 何であのスケルトンは敵に襲い掛からないんだ?」

市民兵のことも問題だが、もっと厄介なのは大量のスケルトン集団の方だ。

1対1体の強さはそこまで強くなくても、どこから出現するかも分からず、しかも数による攻撃は面倒極まりない。

しかも、アンデッドの魔物であるはずのスケルトンが、敵には全く攻撃をしようとしていなかった点も疑問に感じる。

「……全部が従魔ということでしょうか?」

「アンデッドを従魔?」

「そんなことをする人間がいるのか?」

集まっている貴族たちが各々疑問をぶつけ合うようにしてざわつく。

確かに従魔である可能性もある。

従魔なら主人の命に従い、敵のみに襲い掛かるようにできるかもしれない。

しかし、アンデッドを従魔にする人間がいるかという話だ。

アンデッドなんて普通は気味悪がって近付きたくもない存在だ。

従魔だとしても、あれほどのスケルトンをどうやって集めたのかということが疑問に残る。

「……気になることと言えばもう1つ」

「何だ?」

「戦った兵士たちからの報告では、そのスケルトンには魔石が存在していませんでした」

スケルトンがどうやって集められたのかは、敵に聞かなければ分からない。

なので、ひとまず置いてい置くとして、他にも報告に上がっている疑問があった。

それが、アルドブラノの言った魔石の存在だ。

「どういうことだ? 従魔だろうと魔石のない魔物なんていないはずだ!」

魔物には魔石が存在するというのはアンデッドも同じはずだ。

にもかかわらず、魔石がないスケルトンが大量に出現し、こちらに襲い掛かってきていた。

ディスカラの言うように、魔石がないのにどうして動いているのか分からない。

「分かりませんが、通常のスケルトンと同様に強さはそこまででなく、頭部を破壊すれば行動が不能となることは変わらないようです」

普通のスケルトンは、魔石が頭部に隠されている。

そのため、頭部を破壊して魔石を取ってしまえば倒せる相手だ。

今回出現しているスケルトンたちも、頭部を破壊すると動けなくなるのは証明されている。

それに関しては朗報といえるだろう。

「倒せるのは分かったが、数が問題だ……」

奴隷化した市民と敵の本体と言うべき兵を合わせただけでこちらよりも兵数が多いというのに、さらに万を超えるスケルトンまで相手にしないといけないかと思うと、数的に不利な状況だ。

市民兵とスケルトンがそこまで強くないとは言っても、兵は敵に囲まれた状況で戦わなければいけないようになってしまう。

相当腕の立つ人間でない限り、その状況で無傷というのはあり得ない。

こちらも覚悟を持って戦わないと、勝利を得るのは難しい状況だ。

「砦に出現したスケルトンも同様に魔石が存在していませんでした。もしかしたら敵は何かスケルトンを作り出せる方法があるのではないでしょうか?」

「作り出す? そんなバカな……」

アルドブラノの考えに、ディスカラは信じられないと言ったように呟く。

敵の造り出した砦から出現したスケルトンと戦った経験で、アルドブラノは魔石が存在しないことを前もって報告していたが、その理由が解明されないままでいた。

しかし、今回の戦いで大量にスケルトンが出現したのを見て、もしかしたらという考えが浮かんだのだ。

そう考えれば、スケルトンの大量出現させることも出来るのではないだろうか。

「砦自体もあの大量のスケルトンたちの力を借りれば不可能ではありません」

「確かに、あれだけのスケルトンがいれば可能かもな……」

スケルトンなら人間の労働者とは違い、疲労も文句も言うことはないだろう。

それが大量にいれば、砦の建築を急ピッチで作り上げることも出来るはずだ。

ここに来てようやく砦の乱立の謎が解けた気がした。

「敵がスケルトンを作り出す方法があるとして、何にしてもあれだけの数に対抗するにはこちらも対抗処置を取らないと……」

「そうだな……」

会議に加わる貴族の1人から尤もな意見が出る。

敵がスケルトンや市民の強制奴隷で人数を増やせるとなると、今の数で攻め込むのはまた返り討ちに遭う可能性がある。

同数とは言わないが、近い数の兵がこちらにも必要といってもいい。

「……陛下に進言してみよう」

今回の情報を知れば、本腰を上げてことに当たらないとルイゼン領の奪還は難しいということが分かってもらえる。

そうすればクラウディオからの何かしらの援護があるはずだ。

「兵の徴集をですか?」

「いや、そうしたいところだが、人が増えれば出費も嵩む」

ディスカラとしても一番望むのは多くの兵だ。

兵数が近ければ、敵の本体に迫ることができるはずだ。

しかし、兵1人を何日も養うには金がかかる。

盗賊事件で疲弊しているルイゼン領周辺の領に兵を出せというのは酷な状況だ。

そのため、兵の徴集は難しい。

「国中の精鋭を集めてことに当たる!」

「少数精鋭で挑むということですか?」

「あぁ!」

多くの兵を集めるよりも、国民の中から精鋭を集めてことに当たった方が資金面では安く済ませることができる。

当然相当な戦闘力のある人間でなくてはならないが、国の中には強力な魔物とも戦える人間が何人もいる。

そういった者たちなら、きっと数による攻撃にも対応可能なはずだ。

せめてスケルトンと市民兵を一掃できるだけの力を持った人間を集めてもらおうと、ディスカラはクラウディオへ向けて文を届けることにした。