軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

束の間の休息

「おぉ! おはようございます。レオ様!」

「おはよう! エフィージオ!」

ヴェントレ島は周囲を海に囲まれている。

つまり、漁業が収益として成り立つため、当然レオは漁師を募集しようとした。

しかし、募集をする前に声をかけた者たちが、みんな漁師になることを承諾したため、募集の必要がなくなってしまった。

元々、海賊や海賊狩りと物騒なことをしていて、船と海に関して玄人の人間がいたのだから、それにかかわる仕事をしたいと思うのも当たり前といえば当たり前だ。

その1人が、レオに挨拶をしたエフィージオだ。

ムツィオへの報復としてできた海賊の一員だったが、元は漁師の家の出身だという話だ。

エフィージオや他の漁師希望者に船を提供したことで、島は新鮮な魚が出回るようになった。

今日も漁港には多くの種類の魚が上げられていて、エフィージオも船から降ろし終えたばかりのようだ。

朝の漁から帰ってきて、このまま近くの市場へと持っていくエフィージオに時折会いに来るのは、レオの日課になっている。

「今日もまあまあ獲れましたぜ!」

「それは良かった」

まあまあなどと謙遜しているが、エフィージオは島でトップ争いをしている程の腕前だ。

どうやら今日もかなりの量の魚が手に入ったことだろう。

人口も順調に増えつつあるのも、新鮮で美味しい魚が手に入るのが理由なのではないかと思えてくる。

何にしても大漁はありがたいことだ。

「いつものように雑魚をもらって良いかい?」

「もちろん!」

レオがエフィージオに会いに来る理由は、小さく味や見た目に問題があり、商品価値のかなり低い魚をもらいに来たのだ。

たまたま漁にかかった雑魚は基本的に海に戻してしまうことが多いのだが、レオが欲しいというので数日分を集めて取っておいた。

それをエフィージオが取り出してきて、レオはその魚たちを魔法の指輪に収納した。

「いつも言っていやすが、雑魚なんて言わずに獲ってきたのを持って行っていいんですぜ!」

「いや、それは売り物として扱える商品だから、ちゃんとお金を出して買うよ」

「相変わらずっすね」

漁師として働けるのは、逃れてきた自分たちを受け入れてくれたレオのお陰でもある。

そのお礼のためにも、毎回獲れた良い魚を持って行ってもらおうというのだが、レオにはいつも断られていた。

エフィージオたちの獲ってくる魚は良質のため、一匹でも良い値段が付く。

それをタダでもらうのは良くないという思いからなのだろう。

律儀なレオに、エフィージオは頭が下がる思いだ。

「欲しい時は言ってください。レオ様にならいつでも提供しやすぜ!」

「そうだな……、じゃあ、何かの記念の時にはありがたくもらおうかな?」

「分かりやした! その時をお待ちしておりやす!」

レオの従魔は魚好きというのは、島の住人のほとんどが知っていることだ。

いつも雑魚を譲ってばかりで、せめて欲しい時には言ってほしい。

毎回のやり取りで、記念の時の提供という答えを引き出すのがエフィージオの精一杯だった。

出来ればその時には大量に渡そうかと、エフィージオは密かに考えている。

「じゃあ、帰るね。ただでさえ漁師は危険な職業なんだから気を付けてね」

「ありがとうございやす! またきてくだせえ!」

漁師は危険な職業だ。

魔物が船にぶつかってくるということも時折あるそうだ。

そのために船はなるべく丈夫にしてあるが、強力な魔物によって穴を開けられたりする場合もあるそうだ。

そういった魔物は陸地から遠く離れた海域にいるものだが、ごく稀に陸地近くに寄ってくることもあるらしい。

船から落とされたり沈められてしまえば、戦う術のない人間はひとたまりもない。

毎回そういった危険と隣り合わせになりながら漁をしてくるのだから、エフィージオだけでなく漁師みんなには気を付けてもらいたい。

目的の魚も貰ったことだし、レオはエフィージオに用心を促して家に帰ることにした。

そんなレオを姿が見えなくなるまで見送り、エフィージオは魚を市場へと運び始めたのだった。

「今日もらってきたのは食べられるのが多いみたいだ」

エフィージオから貰ってきた雑魚を取り出し、食べられるものと食べられないものにより分ける。

食べられないのは毒持ちの魚たちだ。

雑魚といっても、小骨が多かったり、少し傷がついていたりとしているものなので、調理すればちゃんと美味しく食べられる。

魚好きの従魔を持つレオは、いつも新鮮で美味しい魚を与えられるわけではないので、こうした工夫で喜んでもらっているのだ。

従魔たちからは癒しをもらっているので、これくらいはしてあげたい。

毒持ちの方は、毒の部分だけ取り除いて焼却処分し、残った身の方は釣りの撒き餌に使うようにしている。

「早速始めるか!」

料理をするのは、レオにとっても楽しい趣味のようなものだ。

湖の調査はゆっくりでも順調に進んでいる。

しかし、夏にはみんなを連れて遊びに行ける程度にしたいため、速度を上げるためにも人形の製作は続けないといけない。

今日料理するのも、最近のイルカ型人形を作ることに疲れてきた息抜きの部分がある。

「まずは捌いて……」

料理の下準備として、レオはもらってきた魚を捌きだした。

小骨が多くてもミンチにしてしまえば気にならなくなる。

そのため、レオは捌いた魚は種類にかかわらず全部ミンチに変えていった。

「これにこれを混ぜて……」

続いて用意したのは玉ねぎ。

それを細かくなるまでみじん切りにして魚のミンチに混ぜる。

そこにパン粉を入れて塩コショウし、全体をよく混ぜる。

これで魚肉のタネが出来上がりだ。

「次にソースだな」

鍋にオリーブオイルとみじん切りしたにんにくを入れ、弱火で炒めて香りを出す。

少ししたらみじん切りした玉ねぎを入れて炒め、トマトを潰しながら入れて煮込む。

このソースに最初に作った魚肉のタネをスプーンで団子状にして入れていく。

これを煮込んで、盛りつければ完成だ。

「お待たせ! 魚のつみれのポルペッティーニだよ!」

「ニャッ♪」「♪」

出来た料理を出してあげると、従魔であるクオーレとエトーレは喜んで食べ始めた。

色々味付けをしたので、魚本来の味とは違うようになっていると思うが、気にいってくれたようだ。

ポルペッティーニとは、小さく成形した肉団子のことを言うのだが、それを今回は魚肉で作ることにしたのだ。

「美味しいです!」

「そう? 良かった!」

料理をすると言って誘ったら、エレナも食べに来てくれた。

昔から自分の料理を気にいってくれているので、レオとしてはありがたい。

料理は成功だったようで、エレナは笑顔で食べてくれた。

「これにチーズかけても美味しいよ」

「あっ! 本当です!」

トマト料理にチーズは合うので、外れることはない。

エレナの方の料理にチーズをかけてあげると、それを食べたエレナは目を輝かせた。

食の好みがかなり合うらしく、自分が美味しいと思ったものはエレナも気にいってくれるので作りがいがある。

他にも数品出したがどれも好評らしく、今回も喜んでもらえてレオは満足だった。

「食後にこれをどうぞ!」

「あぁ、エレナが育てたハーブティーだね?」

「はい!」

食後に出てきたのは、薄く茶色い色をした飲み物だった。

紅茶かと思って香りを嗅ぐと、紅茶とは違う華やかな香りがしてきた。

それによって、レオはエレナが趣味で育てているというハーブを使ったハーブティーだということに気が付いた。

「ルイボスやカモミールなどを加えたオリジナルブレンドです」

「へ~、香りも良いし、何だか落ち着いてくる」

人形作りは好きだが、毎日毎日だと流石に気分が滅入ってくる。

ストレス発散を兼ねた食事会だったが、エレナのハーブティーも合わさって、すっかり飛んで行った気分になった。

その日は1日人形作りは中止して、のんびり過ごすことにしたレオだった。