軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

確定

「初めまして。ヴェントレ島領主レオポルドと申します」

「初めまして。王室調査官のフィルミーノです」

メルクリオに紹介された王室調査官の男性に対し、レオたちは頭を下げる。

フィルミーノと言う名前らしく、返すようにレオたちへ礼をした。

「王室調査官の方ですか?」

「王家が管轄している貴族を対象とした調査機関で、彼らの調査報告はそのまま王へ報告されることになる」

レオには聞いたことない機関だったため、いまいちピンときていなかった。

それに気付いたメルクリオは、王室調査官と言う役職の説明をした。

貴族の疑わしい事件や事故に対し、色々な手段を用いて調査するそうだ。

「私がおこなってもいいのだが、その場合もう1回王都で確認してもらわないといけなくなる。しかし、彼に調べてもらえば、王室にそのまま報告される。無駄な手間が省けていいだろ?」

「なるほど! ご配慮ありがとうございます!」

王都にいる時、デメトリアから送られた手紙を読み、メルクリオはすぐに行動に移ったそうだ。

5日目のミサが終わって早々であったが、宰相のサヴェリオと面会できた。

そこでデメトリアの報告書を見せ、ディステ家の悪事を糾弾することを進言したのだ。

捕縛者を王都へ運ぶより、然るべき者をフォンカンポへ送った方が安全だと、サヴェリオはフィルミーノの派遣を要請したのだ。

サヴェリオのその態度などから、メルクリオはなんとなく気付いた。

どうやら新しく即位したクラウディオ陛下は、カルノ王の時からのおこないとディステ領の現状から、どうにかしてカロージェロから領地没収や降爵などの処置ができないか考えていたようだ。

しかし、決定的となる証拠もなく、今年のみの経済状態だけで判断するのは、他の赤字領地の貴族たちにも恐怖や嫌悪感を与えることになりかねない。

今年の経済状況が数年続かない限り手が出せないでいたため、メルクリオが持って来た情報は渡りに船といったところなのだろう。

今は平民である自分のことで宰相閣下にまで動いてもらったことに、レオはメルクリオに感謝し深く頭を下げた。

「気にしないで良い。だから後ろ盾になるって言ったんだ」

「……どういうことでしょう?」

頭を下げたレオに対し、メルクリオはなんてことないように言葉をかける。

先程も唐突に後ろ盾になってくれるといっていたが、このことが関係しているらしい。

その理由が気になり、頭を上げたレオは思わず問いかけた。

「これで予てから面倒だった悪徳貴族が1つ潰せることになり、クラウディオ陛下への私の心証はかなり良いものとなった」

カルノ王の生存時、いくつかの貴族が王家へ虚偽の報告や隠ぺいを図っていた。

大体が細かい税収に関してのことだったが、中には王家の威光を利用した悪徳貴族もいた。

新しく即位したクラウディオ王の最初の仕事は、カルノ王の時に好き勝手していた悪徳貴族を一掃することらしい。

その仕事において、早々に大きな協力をしたのだから、王のメルクリオへの心象が良くなるのは当然のことだ。

新しく王になったクラウディオへ、どの貴族もどうにかして近付きたいという思惑がある。

メルクリオも同じ様に思っていた部分はある。

それが、どの貴族よりも早く心証アップができたのだ。

今回この案件を持ってきてくれたことに、メルクリオの方こそレオに感謝したい気分だ。

「それに、君は盗賊が盗んだ資金まで私に譲ってくれた。ここまでされたら後ろ盾くらいたいしたことではない」

「お役に立てて良かったです」

どうやらレオの気付かない所で、メルクリオに貢献できていたようだ。

レオの考えていた盗賊のアジトの財宝なんかよりも、これからのことを考えれば陛下からの心象が良くなる方が良いに決まっている。

先の未来のこととして陛下への心象が良くなることに加え、すぐさま領内の経済に使える資金まで提供してもらえた。

ここまで多くの利益を与えられ、メルクリオはレオのことが気にいった。

最大の懸念はカロージェロの息子ということだったが、それも先程の確認で解消できた。

そのため、メルクリオはレオの後ろ盾になることを決定したのだ。

「さて、フィルミーノ殿。早速ギルドへ向かいましょうか?」

「はい」

陛下への報告を少しでも早くするためか、わざわざ捕縛者をこの邸に運ぶより、ギルドへ向かった方が手っ取り早い。

そのため、メルクリオやフィルミーノがギルドへ向かうことになった。

「まずはこちらの者から行います」

「お願いする」

ギルドに着いてすぐ、早速フィルミーノによる強制隷属魔法がかけられることになった。

先にかけるのは、ヴェントレ島で捕まえた方だ。

食事をさせると自決する可能性が高いため、拘束をした状態で点滴による栄養摂取をおこなっていた。

そのせいか、運動不足で手足は痩せているが、レオたちを睨みつける目を見る限り健康状態は良好なようだ。

「【我に逆らうな! 我の命に従え!】」

「グッ!!」

捕縛者の背中に手を当てると、フィルミーノは詠唱を始め、闇魔法による隷属魔法を発動させた。

その魔法により、捕縛者は小さな呻き声を上げた。

上半身裸の背中には、隷属完了をしめすように魔法陣が浮かび上がった。

魔物を従える時にも用いる魔法だが、人間に用いるのは犯罪者だけにしか認められていない。

人間に対して強制的にこの魔法を用いるのは重犯罪だが、貴族には犯罪調査の場合のみ有効となっている。

王室調査官の彼らの多くは平民出身だが、彼らには特別にその権限が与えられている。

この職に就く時に同意の下でおこなっているため強制的ではないのだが、そもそも王室調査官にも隷属魔法がかけられている。

王の命に従い、嘘偽りない調査と報告をおこうための処置であり、王家直属の機関のため、法衣貴族の扱いになっている。

「これで拘束はしなくても大丈夫です」

「分かりました。エトーレ!」

魔法が完了したので、自決の心配がなくなった。

そのため、フィルミーノは拘束を解くように指示をした。

その指示に従い、レオの合図を受けたエトーレが捕縛者を縛り付けていた糸を解いた。

「単刀直入に聞こう。お前たちにレオ殿暗殺を指示したのは誰だ?」

「……ディステ領領主、カロージェロ伯爵の指示です」

質問に対する答えは、思った通りカロージェロの名前だった。

続いてもう1人の捕縛者にも隷属魔法をかけたが、返ってきたのは同じ答えだった。

「決定だな……」

「はい……」

分かっていた答えではあったが、改めて父親が息子を殺そうとしていた事が分かり、メルクリオは複雑な心境でレオの顔を見た。

レオも若干落ち込んでいる自分に気付いた。

とっくの昔に父のことなど何とも思わなくなっていたはずだが、ほんの僅かながらそうでないことを期待していたということなのだろうか。

そのことが自分のことでありながら意外だった。

「これで犯人が分かって良かったです!」

一息ついて気持ちを落ち着かせると、レオの中で何かスッキリした気分になった。

この証言で、ようやく完全に父との縁が切れたような気がしたからだろうか。

「……この証言は私が責任を持って陛下へと報告しておきます」

「頼みます!」「お願いします!」

レオとカロージェロの関係はフィルミーノも説明を受けている。

そのため、表情は変わっていないが、口調からレオのことを心配しているのが分かる。

しかし、どんなことがあろうとも、王への報告は偽らない。

この捕縛者2人から得た証言を、フィルミーノはしっかり報告することを告げた。

それに対し、メルクリオとレオは軽く頭を下げ、フィルミーノに任せることにしたのだった。