軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

姉弟喧嘩

「ハァ~……、賑わってますね」

「さすが領都だな」

「あぁ……」

フェリーラ領の領都フォンカンポに入ったレオたち。

メイン通りを通る馬車の窓から眺めた街の景色は、多くの商店が立ち並び、みんな活気に溢れているように感じる。

それを見て、レオは喜びと驚きが入り混じる感想を述べる。

ドナートとヴィートも似たような感じだが、レオと違うのは時折綺麗な女性に目が行っているといったところだろう。

ディステ領の領都に住んではいたが、病弱だったレオは町中に行くことができなかった。

ここを見て大きな町はどういう物なのかというのを、記憶するように目を動かしていた。

「いつかヴェントレ島をここみたいに賑わう町にしたいです」

「———―そうか……?」

「はい!」

落ち着かない様子で町を見渡していたレオは、不意に思ったことを言葉に出していた。

成人したてとは言ってもまだ幼さの残る子供のレオが、たった1年で村にまで発展させたことに、その手腕はかなりのものだとファウストは評価している。

しかし、食料や島の収益などを考えると、ここから人が爆発的に増えるということはないと思える。

フォンカンポのような町になるには、かなりの年月を必要とする事だろう。

しかし、小さな村の領主が言うには夢物語のようだが、目指さない者が望みを叶えられるとは思えない。

そのため、ファウストは子供を見る親のように、レオの夢を否定しなかった。

「あっ! ギルドだ!」

「ぐっ……」

さっきまでのんびりした気分でいたが、レオの言葉でファウストの表情が渋くなった。

以前言っていたように、ここのギルマスはファウストの姉だという話だ。

弟は姉には勝てない。

そんなことを小さく呟いていたようだが、レオには頭のおかしい兄たちはいたが、姉はいなかったのでその言葉の真意が分からないでいた。

「いらっしゃい! ここフォンカンポのギルマス兼フェリーラ領の統括をしているデメトリアよ」

「ヴェントレ島の領主レオポルドと申します。よろしくお願いします!」

ギルドに着いてすぐ、レオはファウストと共にギルマスの部屋へと案内された。

ドナートとヴィートは、念のため馬車の警護を冒険者たちとしている。

表情が強張っている感じのファウストと共に部屋に入ると、待ち受けていた女性が自己紹介をしてレオに握手を求めてきた。

レオも返すように名前を名乗り、デメトリアと握手を交わした。

「……な、何でしょうか?」

「なかなかかわいい顔しているわね」

「ハハ……、ありがとうございます」

女性としては背の高い方なのだろうが、身長は170cm程度のレオと同じくらい。

180cmを越えるファウストとは、頭半分ほど差がある感じだ。

筋肉の付き方も、引き締まっているように見えるが、がっしりしたファウストには及ばない。

顏は目の形だけが同じで、姉弟だというのに似ていない気がする。

凛とした感じの女性と形容した方が良いかもしれない。

たしかに纏う空気は強そうに思えるが、本当にファウストよりも強いのかいまいち判断できない。

握手をしたままでデメトリアが手を離さないでいるので、レオは不思議に思って問いかける。

すると、レオの顔を見て保護欲が湧き上がったのか、頭を撫でつつ褒めてきた。

一応成人しているし、男なので可愛いと言われるのも何だか微妙で、レオは乾いた笑いを返すしかなかった。

「……久しぶりね。ファウスト」

「あぁ……久しぶり」

レオとの挨拶も済み、デメトリアは隣のファウストに目を移す。

少しの間目を合わせた後、挨拶を交わす姉弟。

しかし、何だか空気が重い。

「まぁ、あんたには文句を言いたいところだけど、まずはリヴィオの報告に出ていた奴らを牢に連れて行きましょう」

「あぁ……」

何だかこの後何か起きそうで嫌な感じだが、まずはギルド前の捕縛者の輸送が先だ。

そのため、デメトリアの指示を受け、ファウストは素直に頷いた。

「メルクリオ様とも連絡は取り合っているわ。よっぽど失礼なことでもしない限り強制隷属をおこなってくれるはずよ」

「ありがとうございます!」

捕縛者を牢に入れた後、レオとファウストはまたデメトリアの部屋へと招かれた。

ソファーに対面して座り、デメトリアの言葉に協力の感謝をする。

ドナートとヴィートは、牢の捕縛者を監視する役割を手伝うということになりこの場にいない。

ここの牢番もいるし、冒険者にお願いすれば良いといったのだが、念には念を入れてのことだという話だ。

レオたちは、カロージェロの手の者を全滅させたことは知らない。

そのため、確かにまだ完全に安心できないと判断し、2人の言う通り念のための見張りをお願いすることにした。

「今日王都を出発するって話だから、この町の到着は4~5時くらいかしらね……」

「じゃあ、早くても面会は明日になりますかね?」

「そうね。メルクリオ様には全ての経緯を書いた手紙を送ってあるから、邸の方から迎えを寄越してくれるそうよ」

王都のピサーノからフォンカンポの町までは100km程で結構近い。

早朝出発して順調に進めば、確かに夕方ぐらいの到着になるだろう。

少しの休憩を挟むにしても、馬車移動で疲労した状態では面会なんてしたくないはず。

そうなると、面会は明日以降になる。

経緯も知っているなら、そんなに待つことにはならないはずだ。

「それにしても、レオはなかなか面白い子ね。あのヴェントレ島を開拓しているなんて……」

「行ったことあるんですか?」

「えぇ! 昔にね」

話は変わって、デメトリアはヴェントレ島の話を始めた。

その思い出しているような口ぶりは、レオが行く前の島を知っているかのようだ。

尋ねてみたら、案の定行ったことがあったそうだ。

「開拓と言ってもまだ東の端っこだけで、ようやく村と呼べる程度です」

「そう……。1つ忠告しておくわ。あの島は西にある山周辺に特に気を付けなさい。あそこら辺が危険な魔物の生息地になっているから」

「あっ、はい! 助言ありがとうございます!」

島の現状を簡単に説明すると、デメトリアは真面目な顔をしてレオへ経験者としての忠告をしてきた。

ヴェントレ島の西には火山があり、文献ではその火山の噴火によってできた島だという話だ。

島全体的に魔物は多いが、デメトリアが行った時はその山周辺が1番危険な領域だったそうだ。

「あそこ温泉あるから行きたいんだけどね……」

「温泉ですか? う~ん観光の目玉の1つに欲しいですね。まぁ、先の話ですけど……」

「ギルドが出来て、冒険者に狩らせてからじゃないとやめといた方が良いわ」

「そうですね」

火山の恩恵として、どうやら温泉が湧いている所があるらしく、デメトリアはその湯に浸かったそうだ。

健康にいいという話なので、レオはお風呂が好きだ。

それもあって、温泉は興味がそそられる。

しかし、危険な魔物が多いのだから、それをどうにかしてからでないと話にならない。

温泉は当分はお預けだ。

「じゃあ、ファウスト! 訓練場行くわよ!」

「え゛っ?」

話も終わり、デメトリアは予定通りという口調でファウストを訓練場に誘う。

文句を言うというのは、もしかして拳でということなのだろうか。

口数が減っていたファウストは、その誘いにおかしな声で反応した。

断ることをせず、2人は闘技場へと向かって行った。

「この馬鹿が!! 勝手にディステ領エリアのギルマスを辞めやがって!!」

「痛えな!! 拳闘スキル持ちに剣術スキルの俺が素手で勝てるわけねえだろ!!」

レオも勉強として元高ランク冒険者同士の訓練を見せてもらうことにしたのだが、武器無し状態で戦う姉弟喧嘩といったところだろうか。

拳闘スキルとは、その身のみで戦うことを得意とするスキルだ。

武器無しの方がデメトリアのスキルが有利のため、ファウストが口でも拳でも終始押されていた。