軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

総攻撃

スケルトンドラゴンの大火球が放たれる寸前、レオの鷲型人形がスケルトンドラゴンの頭部へと衝突した。

それによって、溜め込んでいた魔力が暴発し大爆発を起こす。

発射しようとしていた魔力を、スケルトンドラゴン自身が受ける形になった。

大爆発と共に巻き上がった土煙が舞い上がり、戦場は少しの間視界が覆われる。

そして、土煙が治まると、爆発によって頭部と共に上半身が吹き飛んだスケルトンドラゴンの骨が散乱していた。

「くそーーーっ!!」

このような結果になり、ジェロニモは大きな声をあげて怒りを露わにする。

今にも切れそうなほどの血管をこめかみに浮き上がらせ、スケルトンドラゴンの骨に目を向けた。

「あと少しで王国の虫どもを大量に消せたというのに!!」

自分の命を失ってでも味方の命を救い出す。

そんなことをする人間がいるということが、ジェロニモの中には存在していなかった。

いや、昔のジェロニモなら、もしかしたらそう言ったことも分からないでもなかったかもしれない。

しかし、自分とエレナの命にしか執着しなくなった彼には、その考えが浮かばなくなってしまったようだ。

ドラゴンの骨がルイゼン領に存在していたのは、完全なる運というほかない。

この世界のどこかに住むというドラゴンを探すのにも莫大な金がかかるし、人間が倒すことなどできる訳もない。

過去の遺跡などをまた探すにしても、頭蓋骨が無事な可能性も低い。

つまり、もう1度手に入れることなど不可能といってもいいかもしれない。

貴重な存在を失ったことに、ジェロニモは歯ぎしりをするしかなかった。

「い、いかがいたしましょう……?」

このような結果になったことは、コルラードにとっても予想外だった。

唯一無二と思われたジェロニモの能力に似たスキル使いがいたこともだが、それがスケルトンドラゴンを倒すまでの存在だったということにだ。

驚きはするが、それで固まったままでいる訳にはいかない。

コルラードは、スケルトンドラゴンを失った今、戦うにしても退却するにしても、これからどうするのをかの判断をジェロニモへと尋ねた。

「クッ!!」

スケルトンワイバーンだけでなく、スケルトンドラゴンまでもが壊されてしまっては、敵に大打撃を与える手段がない。

撤退の選択が正しいのだろうが、何か攻め込める隙はないものかと、ジェロニモは焦りながら望遠の魔道具を使って王国側の砦の様子を眺めた。

「……何だ? 奴らほとんどの兵が項垂れているぞ?」

王国の兵たちを見て、ジェロニモは訝しんだ。

スケルトンドラゴンが破壊され、忌々しくも意気揚々としている王国兵を想像していたのだが、様子が全然違っていた。

ほとんどの兵が蹲り、倒れている者も少なくない。

スケルトンドラゴンの攻撃を受けたわけでもないのに、そのような状況になっているのが不思議で仕方がなかった。

「……もしかして、スケルトンドラゴンに放った魔力障壁が原因では?」

「そうかっ!! 僅かな抵抗にしかなっていなかったが、あれだけの魔力を使えば魔力切れになるのは当然。奴ら疲労困憊で動けないのか!?」

同じく望遠の魔道具で見たコルラードは、少し考え込むと1つ思い当たる節があった。

スケルトンドラゴンに何度も魔力障壁を破壊された上に、これまでで一番厚い魔力障壁が最後に張られていた。

ジェロニモのように膨大な魔力の持ち主でもいれば特に何とも思わないが、普通の人間があれほどの魔力を使って無事でいられる方がおかしい。

コルラードの言葉に、ジェロニモも同じことを思い至った。

そして、王国兵が動けなくなっている状況を見て笑みを浮かべた。

「まだチャンスだ!! 今なら奴らが抵抗なく虐殺できる!! スケルトンたちによる攻撃を仕掛ける!!」

「了解しました!」

スケルトンドラゴンを破壊したのはいいが、魔力切れ寸前の疲労困憊の状態では抵抗することなどできないだろう。

この状況を好機と見たジェロニモは、残っているスケルトンたちを動かし攻め立てることにした。

「陛下!」

「どうした? テスタ……」

「我々も行かせてもらいます!!」

「あぁ! 好きなだけ殺してこい!!」

「ハッ!」

スケルトンドラゴンを破壊されて、いら立ちを募らせていたのはテスタも同じだった。

破壊の象徴とも言うべきスケルトンドラゴンの大火球攻撃。

あれにより、ひとたまりもなく人間が消え去る様が愉快で仕方がなかったというのに、もう二度と見られなくされてしまった。

その怒りを晴らすには、王国兵たちの命で贖うってもらおうと考えたテスタは、組織の人間を総動員して攻めかかることを決めた。

提案を受けたジェロニモは、今のテスタを止めることはできないと判断し、好きにさせることにした。

ジェロニモの了承を得たテスタは、頭を下げると部下たちと共に消えるようにいなくなっていった。

「クッ! レオ……」

スケルトンドラゴンが破壊されたことで、あの脅威に怯える必要はなくなった。

しかし、その代償として、レオという王国にとって貴重な存在が消えてしまった。

戦いが終わり、レオのこれからのことを色々と期待していたというのに、このような結果になってしまったことに、メルクリオは悔しくて仕方がなかった。

その思いだけで、魔力切れで気を失いそうになるのを何とか抑え、後方に控える王国軍に向けての信号弾を上げた。

「ほぉ、最後に後方へ合図を送ったか……」

「っ!! な、何…者だ!?」

これで怖気づいていた貴族たちも参戦してくれる。

その僅かな安堵によって、メルクリオの意識は途絶えそうになったところへ声が聞こえてきた。

その声の方へ目を向けると、黒装束に身を包んだ人間がメルクリオを見下ろすように立っていた。

闇組織の長であるテスタだ。

「これから死ぬ者に名乗る意味はない」

「……く、くそっ……」

メルクリオの問いに対し、黒装束の人間は短剣を取り出して返答する。

その動きで、兵たちが動けなくなっていることに気付き、敵が攻め込んで来たのだとメルクリオは理解した。

「私を殺しても、ルイゼンの負けはほぼ決定した」

「そうかもな……。しかし、ギリギリまで稼がせてもらうさ……」

王国側はスケルトンの対処に慣れている。

数が多かろうとどうにかできることが分かった今では、脅威とはなりにくい。

最大の脅威であるスケルトンドラゴンがいなくなったため、もう王国側に恐れるものはない。

余程のことでもない限り、攻め続ければ勝利を得るのは王国側だというのは分かっているはずだ。

しかし、テスタは完全にジェロニモに忠誠を誓っている訳ではない。

テスタの強制奴隷の能力はどこの国でも稼げるため、ジェロニモにこだわる必要もない。

ギリギリまで資金を得て、いざとなったら退散するのが最適な選択だ。

「スケルトンドラゴンの破壊シーンが見れなくなるし、今回のことで組織の人間もだいぶ減らされてしまった。その憂さ晴らしをさせてもらいに来ただけだ」

「何…だと……」

「死ね!!」

黒い布に覆われ、目線以外は見ることができない。

しかし、それでもこの黒装束の男がイラ立っているのが口調で分かる。

最後の言葉とでも言うように、短い言葉と共に男は手に持つ短刀を振り上げた。

憂さ晴らしなどという個人的な感情で、自分が殺されることになるとは思わなかった。

そんな死は認められない。

しかし、振り下ろされる短剣に抵抗することもできないメルクリオは、襲い来るであろう痛みに目を瞑った。

「そうはさせないぜ!!」

「っ!!」

メルクリオに突き刺そうとした時、テスタは背後からの声にその場から跳び退く。

そして、その声を出した人間へと対峙した。

スケルトンよりも先に砦内に乗り込んだのは、無抵抗な者を殺す楽しみを味わうためだ。

少し見て回ったが、まともに戦える人間はいなかった。

今頃自分同様乗り込んだ組織の者たち数名が、無抵抗な王国兵たちを虐殺しているはずだというのに、目の前に立つ王国兵でもないような出で立ちの男に、テスタは首を傾げた。

「何者だ!?」

「死に行く者には名乗らねんだろ? こんなこともあろうかと、うちの領主から指示を受けていたんでな……」

問いに対し、先程テスタがいった言葉を嘲るように返し、男は大剣を軽々と構えた。

一触即発の空気が流れ、テスタと ガイオ(・・・) の戦闘が始まった。