軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

956.世界に告ぐ

時間帯は、夕刻から夜に差し掛かる頃。

京の中心にあたる大通りに、灯篭の輝きが混じり出す。

四人は桜の舞う道を、たまちゃんの後に続いて進む。

「どこに向かうのでしょうか」

たどり着いたのは、山に沿うようにして作られた大きな神社の前。

「ここは富士見稲荷。わらわの本拠地のようなものじゃな」

大きな朱色の鳥居をくぐると、参道にも無数の鳥居が続く。

「すごーい……!」

並んだ提灯に照らされる鳥居は神秘的。

この光景は京の中でも有名で、たくさんのプレイヤーが本堂目指して階段を上がっていく。

「お祭りみたいね」

「本当だねぇ【装備変更】っ!」

その光景はどこか、夏祭りの夜を思い出させてワクワクさせる。

【狐耳・尻尾】に変えたメイの尻尾が、ブンブンと揺れ出した。

「メイちゃんたちだ……!」

「これは良いタイミングで来たな」

「狐娘コンビ、ちょっと可愛すぎないか?」

並ぶメイとたまちゃんは、まるで狐の姉妹。

ツバメとまもりは歓喜に頬を緩め、聞こえてくるプレイヤーたちの声も楽しげだ。

「どうじゃ? 大したものじゃろう?」

たどり着いたのは、立派な木造の本堂。

たまちゃんは得意げに笑う。

最後の鳥居を抜けると、前庭には大きな狛犬ならぬ狛狐。

そして広い石畳の道の左右には、大きな石の灯篭が並ぶ。

燃える炎は原始的で、不思議と感情を掻き立てられる。

「……なんだ?」

広い境内。

一人のプレイヤーが、異変に気づいて声をあげた。

見れば前庭に、一つの魔法陣が描かれていく。

「まさか、クエストか?」

「だとしたら新クエストだぞ! ずっと京にいるけど、富士見稲荷で何かが起こるのは初めてだ!」

いまだ誰も知らぬ、謎の事態。

夜の境内に黄金の陣が輝く光景は、不思議な美しさ。

おとずれているたくさんのパーティがざわつき出し、誰もがそこに視線を集中する。

すると黄金の魔法陣から魔力光が空高く吹き上がり、強い風が辺りを吹き抜けた。

「レンちゃん、あれって……!」

そこにいたのは、見覚えのある黒ずくめの集団だった。

「アサシンたちです!」

数は30人ほど。

整列した状態で、現れたアサシンたち。

最後に現れた人物は、その中でも一回り豪華な装備をしている。

「あれって八岐大蛇の戦の後に戦った、『管理者』よね?」

そこにやって来たのは、つい先日戦闘を行ったばかりのアサシンリーダー。

別名、管理者だ。

「なんだなんだ?」

「何をざわついてるんだ?」

生まれる緊張感。

街中で突発的に起こるクエストに期待して、付近のプレイヤーが続々と集まってくる。

「なあ、この組織ここ以外の国とか街でも、同じことを同時にしてるみたいだぞ」

「なんだそれ……!?」

「一体どういうことなんだ?」

さっそく情報が交錯し始める。

どうやら王国であれば王城前、交易の中心都市なら船着き場。

この妙な事態は、人の動きの多いところで同時に行われているようだ。

その中でも管理者がいるこの場所は、その本命と言ったところか。

「――――世界は、未曽有の危機にある」

語り出した管理者の言葉に、皆が耳を傾け出す。

「かつてあった世界を滅ぼした、異世界の化物たち。それを呼び寄せる『門』が、再び開かれようとしているのだ」

「それって、ゼティアってやつ……?」

メイたちの情報を追っているプレイヤーは、自然とその話に思い至る。

「旧世界の滅びから幾星霜。新たな崩壊を止めるために生きてきた我ら『世界維持機構』は、ここに新たなクエストの発注を行う」

「クエスト? こんな大掛かりな形で、大勢にまとめて出すってことか?」

「システム的には、どこからでも参加できるイベントクエストみたいな感じでいいのかね」

管理者の言葉に、ざわつきと同時に始まる憶測。

「その詳細は各国王城や酒場、職業ギルドなどに張られたクエスト票をあらためて確認して欲しい」

そこまで説明したところで一度、間を開ける。

すると集まっていたプレイヤーたちも、自然と次の言葉に耳を傾け始めた。

静かな富士見稲荷の境内で、管理者が告げる。

「――――これは悪しき者たちから、世界を守る戦いだ」

大きな展開に、ノドを鳴らすプレイヤーたち。

「よって世界中にいる全ての冒険者たちに、参加を求めることにした。今より発令するこの依頼を……ワールドクエストとする!」

星屑世界において、初めて発令されたワールドクエスト。

「……おお」

「……おおおおお」

「「「オオオオオオオオオオ――――ッ!!」」」

世界中に同時掲載されるという、イベント級の大展開。

その規模に、思わず大歓声をあげるプレイヤーたち。

「ええええええええええ――――っ!?」

一方メイは、まさかの展開に驚きの声をあげていた。

「世界中に参加を求めるクエストですか」

「これは星屑界でも、初めての試みね」

「た、大変なことになりました……っ」

これにはレンたちも、さすがに驚きを隠せない。

「我らはこれまで長きに渡って統制していたゼティアの情報を、解禁する。すでに『隠す』ことでどうにかできる状況は終わってしまった」

「ここからは守りではなく、ぶつかりに行くってことね」

「すでにエルラト、ナディカの門は我らが抑えている状況だ。しかしゼティアには三つ目の失われた門がある。それはまさに、旧世界を滅ぼした異世界の魔物を呼び寄せたという『災厄の門』。歴史から消し去られたこの門は、最大規模にも関わらず所在不明。我ら世界維持機構も、長きに渡って捜査を続けている」

「なるほど、まだ誰も知らないってことか……」

そんな現状に、再びざわつき出すプレイヤーたち。

「「「……っ!?」」」

突然、禍々しい光が付近を照らした。

「お、おい、なんだあれ!?」

遅れて風が吹き、遠く見える山の一つが燃え上がる。

そして、そのまま消滅。

「……このように、災厄の門を狙う者たちは異世界の力を用いた兵器で木々を焼き、海を汚し、その在処を探っている。たくましき冒険者諸君の参加と活躍を期待する。敵は強大にして凶悪な『帝国残党』。世界を再び崩壊させないため、門を守り、敵を討つ。そのための助力を求む。以上……!」

そう言い残し、管理者は息をつく。

すると魔法陣が鮮烈な魔力を天に放出し、それと共にアサシンたち『世界維持機構』の面々が消えていく。

「すげえ……」

「こんな展開、初めてだ……っ」

「ヤバい、ワクワクしてきたっ!」

天に舞い散る魔力の輝きの中、感嘆する者、驚愕する者、歓喜する者。

どうやらゼティアの門に関わるクエストは、とてつもない規模の戦いになりそうだ。