軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

948.怒涛の攻勢

HP半減からの完全回復。

八岐大蛇に仕掛けられた特殊能力は、再生だった。

「いやぁ……これはキツイなぁ」

「メイちゃんたちもHP5割を切ってるのに、また一からだろ……?」

さすがに観戦者たちも、この数的不利は厳しいとため息をついた。

「……ここからぽよ」

「その通り。あの使徒長が笑ったということは、何かが起こる」

「俺は今、猛烈に期待している……っ!」

そんな中でも、掲示板組はこの逆境がどう跳ね返されるのかに期待をし始めた。

HP全快を迎えた八岐大蛇。

だがこれまで受けたダメージの総量により、その攻撃はさらに苛烈になる。

「半端な攻撃では回復されちゃうわね。とにかくまずは、隙を待ちましょう」

うなずき合う四人に、動き出す八つの首。

これまでとは違い、八つ全てが容赦なくメイを狙う。

一体目の頭が飛び掛かりのような軌道で【喰らいつき】を放ち、メイがこれをバックステップでかわすと、すぐさま側方から二つ目の頭が特攻。

「【アクロバット】!」

メイはさらに後方へ向け、バク転で回避。

すると三体目と四体目が接近しながら放つ大炎弾が、目の前でぶつかり大きな炎となる。

「もう一回【アクロバット】!」

そして炎を突き破り、左右前方から挟み込むようにして迫る五、六体目の喰らいつき。

「【ラビットジャンプ】!」

メイはこれを斜め後方への跳躍で回避するが、跳び上がったところを狙い七体目が迫る。

「高速【誘導弾】【フリーズボルト】!」

レンがすぐさまけん制し、進路をずらす。

これによってメイは弾かれ転がるにとどまり、ダメージは1割以下。

そこに上方から来るのは、八体目の【火炎放射】だ。

「効きませんっ!」

【王者のマント】でかき消し、八連の攻撃を最低限のダメージで斬り抜けたメイ。

反撃に入ろうとするが、すでに一体目が高速で迫りきていた。

「【かばう】【コンティニューガード】【不動】【地壁の盾】!」

飛び込んできたまもりの盾は、迫る【喰らいつき】からの防御に成功。

すさまじい勢いで通り過ぎていく蛇龍の鱗がこすれて、大量の火花と擦過音が飛び散る。

見事な防御に、八岐大蛇は連携を続ける。

続けて見えたのは、放たれる三つの大炎弾。

「いーちゃんっ!」

しかしまもりが盾防御に入ってくれたことで、メイも飛来する炎弾を即座に認識できた。

吹かす暴風で、炎弾の軌道をそらしてみせる。

「あ、ありがとうございますっ!」

「こちらこそだよっ!」

「【ブリザード】!」

笑い合う二人のもとに右側から迫る二体の蛇龍に、気づいたのはレン。

いち早く氷嵐の壁を作って、進路を塞ぐ。

「うまいぽよっ!」

二体にまとめて魔法を同時に当てるのは、難しい。

ならばその道を塞ぐことで進行を止める。

見事なけん制に、スライムが思わず感嘆の声をあげた。

「レンさんっ!」

呼び声はツバメ。

差す指が向いているのは、高い位置からこちらを狙う一体の蛇龍。

その口内の輝きは、【火之夜藝走駆】のもの。

道に沿って業火を走らせる、あの一撃だ。

「そうはさせないわっ! 【超高速魔法】【魔砲術】【誘導弾】【フリーズボルト】!」

京の夜空を高速で遡る氷弾が、そのまま蛇龍の頭部に直撃。

見事に頭を撃ち抜き、【炎球】の使用を強制停止した。

「「「うおおおおおお――――っ!!」」」

脅威の一撃を止めたレン。

あまりに見事な狙撃に、観戦者たちは思わず歓声を上げる。

「メイちゃんたちって、攻撃のすごさが目立つけど……」

「守りの戦いも、こんなにうまいのか……っ!」

いよいよ八体の連携に対応し始めたメイたちは、『攻』だけでなく『守』においても注目の的となる。

しかし四体の蛇龍は激しい咆哮をあげ、新たな攻撃を仕掛けてくる。

「……今度は、炎弾じゃないのですかっ!?」

吐き出されたのは、炎弾よりもさらにまばゆい輝きを放つ【溶岩弾】

四つの大きな溶岩塊は空中で破裂、付近に飛沫をまき散らす。

中空に散らばる無数の灼熱は、粒の大きな雨のようで回避が難しい。

「熱ちちちちっ!!」

思わずメイが声をあげる。

そのダメージは低いが、『飛沫が当たっただけ』にしては減りが大きい。

当然、直撃すれば大変なことになるだろう。

まもりも盾にぶつかった溶岩液が鳴らす肉を焼くような音に、身体を震わせる。

八岐大蛇は、攻撃の手を休めない。

続けて四つの頭部が、【溶岩弾】を吐き出し追撃。

炸裂して降らす溶岩雨が、身体を焼いていく。

「やっかいな攻撃ね……!」

そしてそんな溶岩雨の中を動く、三つの頭部。

「この雨の中で、回避をとれというのですか……っ!? 【加速】ッ!」

迫る【喰らいつき】を見て、駆け出すツバメ。

正面から連続で来た頭を、【リブースト】で左右に動いてかわしたところに、横から迫る一体。

その口の中には、【爆炎喰らいつき】の輝き。

「ッ!! 【スライディング】!」

ツバメはこれを体勢を限界まで低くすることでギリギリかわすも、目前に炎弾。

「ああああっ!」

とっさの防御もゴロゴロと地面を転がり、HPは残り3割を切る。

「っ!?」

さらに崩れてきた建物のガレキに、挟まる形となってしまった。

予期せぬオブジェクト罠に、唖然とする。

「ま、まだ続くんですか……っ!?」

「もう少し、きっともう少しで『その時』が来る……! もう少しだけがんばりましょう!」

八岐大蛇はメイたちの陣形をしっかり崩した後、トドメとばかりに大技を使用。

突然ズンと、八岐大蛇本体の足元が沈没した。

すると、そこからあふれ出したのは――。

「ええええええええ――――っ!?」

「溶岩流……!?」

高く吹き上がった溶岩の波が、凄まじい勢いで流れ出す。

あっという間に迫る溶岩は、碁盤目状の町にいくつもの十字の赤線を引いていく。

そしてツバメはまだ、ガレキの下から抜け出せていない。

「メ、メイさんっ! ツツツツバメさんをっ!」

「まもりちゃんは!?」

「わ、私は防御してみますっ! 耐えるのが、私に唯一できることなので……っ!」

迫る溶岩流は、高さ1メートル弱ほど。

回避は建物の上に上がる他にない。

「お、お願いしますっ」

「メイ、いきましょう!」

「……りょうかいですっ! 【裸足の女神】っ!」

メイは大急ぎでツバメのもとへ駆けつけ、ガレキを投げ飛ばす。

そしてツバメを抱えると、そのまま屋根の上へ跳躍。

レンも【浮遊】で後に続く。

それと全く同じタイミングで、高い位置への移動法がないまもりを、駆け抜ける溶岩が飲み込んだ。

受けたダメージ自体は、2割ほど。

だが溶岩流のやっかいな点は、その場に残留することだ。

その場から動けないまもりは、HPをドンドン削られていく。

減りの速度は早く、レンは両手を握って祈る。

「な、なんとか……なりました……っ!」

流れる溶岩を受けたまもりのHPはなんと、残り1割ほどまで激減。

この攻撃をツバメが受けていたら、確実に死に戻りとなっていた。

「すごい攻撃だったな……でも、生き残ったぞ!」

「さあ反撃だっ!」

「いけいけ! 一気に叩き込んじまえ!!」

熱を失った溶岩は固まり、砕け散る。

そしてようやく生まれた隙に、観戦者たちが始まる反撃を期待する。

「まもりちゃーん!」

「まもりさん、ありがとうございました……っ」

「無事でよかったわ!」

だが意外にも、ここで反撃は始まらなかった。

メイたちは、まもりのもとに駆けつけ抱き着いた。

「お、おい、大丈夫なのか?」

まもりの無事はうれしいが、すぐさま攻撃に入ると思っていた観客たちは困惑する。

「……レンちゃん! いきましょうっ!」

「了解っ!」

メイの言葉に、大きくうなずくレン。

ツバメとまもりも、確認し合うようにうなずき合う。

始まるのは『反撃の準備』だ。

「前回の『隙』に八岐大蛇は再生した。今度はこっちの番よ! 解放、【増幅のルーン】!」

レンがルーンを起動。

輝きと共に、メイの胸元に浮かぶルーン。

「【蓄食】!」

数値が決まっているスキルを向上させる、レンの【増幅のルーン】

ステータス上げの果実は【蓄食】によって、一度に『10個』まで使えるようになる。

【増幅のルーン】を使えば、その数は『20個』にまで上昇する。

「いただきますっ!」

メイは両手に取り出した【敏捷上げ】のオレンジに、次々と嚙り付いていく。

そのままあっという間に食べ尽くしたメイは、ぴょんぴょんと準備運動をするかのように小さくジャンプ。

青い満月の下、「よしっ」と気合を入れ直す。

そしてレンたちも武器を構え、反撃態勢に入った。

「もう一度言わせてもらうわ。頭――――八つで足りる?」