軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

912.鍵の隠し場所

「やりましたっ、今夜はお寿司になりました!」

「「おおーっ」」

星屑内。

テンション上がっているまもりに、メイとツバメが拍手をおくる。

そんな三人を見て、レンは笑う。

「さて、それじゃあナディカの海底遺跡に行った際に得た情報から確認しましょうか。ゼティアの鍵になる青年は、おそらく管理者っていうアサシンたちのボスにつかまってる」

「『自分を探してほしい』と言っていましたね」

残されたホログラムのメッセージでは、これから捕まるであろう自分を見つけ出してほしいとのことだった。

「それでなくとも影の存在として動いているアサシンたち。そんな組織が何かを隠す場所なんて想像もつかなかったんだけど……」

レンはそう言って、一つの提案をする。

「鍵の青年は当然、ゼティアの門自体に関わる存在。鍵と言っているけど、命が失われてもダメなパターンもあるって考えると、アサシンたちにすれば生かしたまま捕えておく必要がある」

「た、確かにそうですね」

「なるほどー」

「そこで不意に思ったんだけど、人を生かしたまま管理できる場所って……監獄がおあつらえ向きじゃない?」

「確かにそうですね……! 固い守り、複雑な建物の造り、そして何より――」

「覚えてるよ! 不思議な部屋にいた人だね!」

思い出すのは、真っ白な牢獄。

異常な空間の中心に置かれたイスに、縛り付けられていた何者か。

着せられた拘束着と、白の鉄仮面。

牢に刻まれたナンバーは『 番』と、空白になっていた謎の囚人。

「あの特別な守られ方とあまりに印象的な部屋の作り、そして大監獄の物語自体には関わっていないっていうのは、気になるでしょう?」

「おおーっ」

メイは「確かにっ」と、首をブンブン振る。

「そういうわけで今日は、ちょっと大監獄の様子を見に行ってみましょう」

「りょうかいですっ!」

こうしてメイたちは、ポータルでフランシスに到着。

南部にある森の、舗装された道を通ってアンジェール大監獄へ。

「相変わらず、雰囲気は十分ね」

「だ、大監獄の脱出劇。映画のようで迫力満点でした……っ!」

メイたちの冒険は脱獄系ドラマのような作りになっていて、まもりはワクワクしながら見た事を思い出す。

「さすがに正面からってことは、ないと思うけど……」

かつてメイがこじ開けたような、大きな鉄扉がつけられた門の前に立つ。

「一応正面から玄関に入れるようになっていて、別の脱獄クエストでは仲間のプレイヤーに、面会に来てもらうこともできるらしいです」

「そこで得たアイテム等で、看守を買収することも可能なんだって」

「そうなんだー」

そんなことを話しながら、四人が大監獄の敷地内に踏み込んだ瞬間――。

「「「「っ!?」」」」

突然の爆発音。

あがった煙は大監獄の後方、以前メイたちが逃げ込んだ森の方からだ。

「どうやら、何かが起こったみたいね!」

「行ってみようよ!」

「はいっ!」

「はひっ」

四人は顔を見合わせ、走り出す。

続く大きな爆発は、何者かが監獄を攻撃しているかのようだ。

「黒仮面です……!」

攻撃を仕掛けているのは、黒仮面たち。

そして攻撃を受けているのは、看守ではなくアサシンたちだった。

「【爆水】」

黒仮面の一人が手にした水色結晶を輝かせると、氾濫した川のような大水が流れ込み、数人のアサシンたちを退場させた。

「【回転跳躍】【豪放烈槍】!」

上手く水流を飛び越えたアサシンは、空中から槍を投擲。

その爆発によって、数人の黒仮面が吹き飛んだ。

「間違いなく、何かが起きてるわね」

「『鍵』の奪い合い。そう考えるとつじつまが合いそうです」

ナディカで得た本の情報をもとに、『鍵』の青年を奪いに来た黒仮面。

それに気づいたアサシンが、反抗していると考えるのが妥当だろう。

「【烈風】!」

「くっ!! あああああっ!!」

豪快な槍の一撃を放ったアサシンも、着地際を緑色結晶の一撃に吹き飛ばされた。

やはり豊富な結晶攻撃を擁する黒仮面の方が優勢だ。

「レンちゃん!」

「間違いないわ!」

戦いの最奥に見えたのは、白の拘束着に仮面姿をした『鍵』と思われる人物。

「消えろ、欲深き者ども」

青年を連れたアサシンは、明らかに特別な装備をしている。

長い外套に身を包んだ状態で伸ばした手が輝き、黒仮面軍団の中央に魔力光が集結。

盛大な爆発を巻き起こし、一瞬で戦況をひっくり返した。

「まだだ! すぐに増援が来る!」

しかし黒仮面は、数で攻めるつもりのようだ。

聞こえた言葉に、アサシンたちのリーダー格であろう人物はつぶやく。

「――――行くぞ。極東であれば、隠し所に困ることはない」

「「「承知」」」

そう言って、手にした転移宝珠を輝かせる。

すると白の拘束着を身に付けた『鍵』の青年は、アサシンたちと共に消え去った。

「二度目の監獄攻略かと思ったけど、そういうわけでもないみたいね」

「極東……ヤマトでしょうか」

「た、たしかに、ヤマトなら不思議な力を使った隠し方ができそうですね」

「不思議な隠し方……それなら当てがあるわ」

「行ってみようよ!」

こうしてメイたちは大監獄から再びフランシスへ戻り、ポータルでヤマトを目指す。

初めて大型イベントに参加した、和の国。

その中からレンは、『京』の町を指すことにした。

「おおーっ! すごーい!」

「これは……綺麗ですね」

「よ、夜桜ですっ……」

たどり着いた京は夜。

舞い散る花びら。

並ぶ桜の木はどれも満開で、無数の提灯がその美しい桃色の花を照らし出している。

続く建物はどれも和風で、五重塔と並んでいても違和感のないものばかり。

細い川にかかった朱色の橋が、とてもよく雰囲気を出している。

消えた『鍵』の青年と、アサシンたち。

始まる怪異の街の冒険に、早くもメイの尻尾はブンブンと揺れていた。