軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

905.ゼティアの門

海底遺跡ナディカの『門』を守っていた、海の王。

見事な連携で打倒に成功したメイたちは、歓喜に笑い合う。

「海の王に飲み込まれた後は、どういう状態になっているのですか?」

パーティメンバーを欠落させる【喰らいつき】を受けていた迷子ちゃんに、ツバメがたずねる。

「身体の中には、いくつにも分かれた部屋の中に魚とかが泳いでたりしてました」

「とか……魚だけではないのですか?」

「小さな船もありましたよ」

「その船、中に誰か住んでたりして」

そういって、レンが笑う。

「その展開はワクワクしますね」

「本当だねぇ」

「実はですね、身体の中で見つけた錬金術のスキルブックを持ってきてしまいました!」

「おおーっ!」

「海の王の中にあったスキルブック?」

「素材集めが必要なのですが、かなりハイレベルな物のようです!」

ちゃっかりしている迷子ちゃんの持つスキルブックは、見た目も豪華なハードカバー。

これは良いスキルが出てきそうだ。

「海の王に飲み込まれないと取れないスキルブック……面白いものを手に入れたわね! これで戦いも一段落したし、先へ進みましょうか」

「そうしましょうっ!」

五人は海底遺跡ナディカに残された、ゼティアの門の下へ。

海の王は、近くをゆっくりと泳いでついてくる。

するとここにも、遺跡の紋様とは違う『今』の魔法陣。

光が灯り、女性にも男性にも見える不思議な雰囲気の青年が投影される。

『エルラト、そしてナディカの門にたどり着いた君は、すでに王たちに認められた至上の強者ということになるだろう』

ボリュームのある長い白髪をスカーフのようなもので束ね、大きな白のローブをまとった姿は神秘的。

手には、古木を銀で飾った杖が握られている。

『かつて、赤月の夜によって文明は崩壊した。だが王たちが共に戦うことで、どうにか異世界の怪物からこの世界を守ることには成功した』

『組織はこのようなことが二度と起きないよう、ゼティアに関する情報を統制することにしたんだ。武力すら用いてね』

「やっぱりアサシンたちは、世界を崩壊させた赤月の夜を防ぐことが目的なのね」

「ですがそうなると、このまま進んで大丈夫なのでしょうか……」

「わ、私たちの行動が、世界の崩壊のために知らずのうちに加担している形になってしまいそうです……っ」

ゼティアの門に近づけば、それだけ異世界への扉が開く『赤月の夜』へ近づくことになりそうだ。

それは異世界を利用してさらに兵器を生み出そうとしている黒仮面たちと、同じ行動なのではないか。

まもりはそんな不安を抱く。

『ゼティアの封印は、永遠ではない』

『今は封印魔法でどうにか異世界からの侵攻を防いでいるが……それが失われる時は必ずやってくる』

青年は不意に、その顔を神殿の方へと向けた。

『どうやらヤツらが来たようだ。今回は……管理者も一緒だ』

『組織の選択は、束の間の安息を得る延命措置に過ぎない。封印が解ければ異世界からの攻勢で門が開き、暁の夜が再びおとずれるだろう。我らは力を合わせなくてはならないんだ。世界の崩壊を再演しないために』

『管理者が動き出してしまった以上、交信はこれが最後になるだろう。私を見つけてほしい。世界のために。『鍵』である私を生かしたまま封じるならどこになるかを考えて欲しい。きっと私はそこにいる』

『また会えることを信じている』

そう言い残して、ホログラムは消えた。

「そういうことだったのですか」

「攻略組がアサシン側についたのは、『延命』の情報を聞かないと、組織が単純に世界を守っているように見えるからじゃないかしら」

黒仮面のしていることは、旧世界の過ちと同じ。

自然を汚染するほどの兵器の利用と過信。

このままでは黒仮面たちにゼティアの門が開かれ、赤月の夜が再来してしまう。

それを防ぐために、『鍵』を守るアサシン側についたのだろう。

だが『鍵の青年ルート』では、アサシンがいる組織の行動も延命に過ぎないということが分かる。

「おそらくもう、組織は青年を捕らえてるでしょうね」

「次は『鍵』の青年を探すという流れになるわけですね」

「こんな大きな話、私も聞いてしまった良かったのでしょうか……」

「全然問題ないわよ」

「問題ありませんっ!」

「なんだったら、色んな人たちにも聞かせてあげて」

そんなメイたちのこだわりのなさに、迷子ちゃんはさすがに驚く。

「この後は『鍵』の青年を緩やかな滅びを待つ組織から取り戻して、旧文明や異世界の素材を使った兵器を作ろうとしている黒仮面を出し抜くという感じでしょうか」

「そうなりそうね。ヒントももらったし、のんびり考えましょうか」

「りょうかいですっ!」

「は、はひっ」

メインの大きな話が見えても、メイたちはなおマイペースだ。

「あ、そ、そうです! 帰還は強制ではないようですし、良ければお菓子でも……」

「祝勝会ね、いいじゃない!」

「綺麗な海の遺跡を眺めながら……いいですね」

「それでしたら、また新しい紅茶でもいかがですかっ!」

「おおーっ! ぜひお願いしますっ!」

大きな戦いと、重要な情報を得た直後。

それでも楽し気に祝勝会を始めるメイたちに驚きながらも、迷子ちゃんは張り切ってメイドスキルの準備を始めるのだった。