軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

894.まもりと紫結晶

遺跡深部であるこの場所には、研究室が並んでいる。

そしてどこかに、ゼティアの門へと続く道があるようだ。

「行くぞ、我らは散開して探索を続ける」

アサシンたちを蹴散らした四人の黒仮面は分かれ、このフロアの探索を始めた。

盾に隠れていたまもりが、ここでそっと顔を出す。

「競争になるのかしら……黒仮面たちが先にたどり着いた場合、どうなるのか気になるわね」

「鉢合わせになった場合、戦闘になりそうです」

「貴方は何か知っているの?」

レンが聞くと、人魚は首を振る。

「私が知っているのはこのフロアまで。ここから先に進む方法は分かりません」

「なるほどね。結晶兵器はやっかいになりそうだし、できればパーティで動きたいところだけど……」

三人ずつ四チームのような分割できればいいが、メイたちの場合どうしても個人チームになってしまう。

「でもメイが私たちの速度に合わせる必要がなくなるし、ちょっと怖さもあるけど分担して探しましょうか」

「りょうかいですっ」

「分かりました」

「は、はひっ!」

この広い空間からゲートへ続く道は、人魚でも分からない。

「皆さん、どうかご無事で」

そう言ってこの場に留まる人魚に手を振って、四人は動き出す。

探索の担当場所は、各自の足の速さで決めた。

メイやツバメは奥、レンとまもりが手前という分担だ。

前衛二人が見事な足の運びで奥を目指す中、レンも低空飛行を使って後に続く。

そんな中、盾を前方に構えたまま走るのはまもり。

手前の空間の探索のため、盾に隠れるような走り方で灰色の空間を進む。

続く無機質な廊下と、並ぶ扉。

本来ノブがある辺りに描かれた紋様に触れると、扉が開く。

この付近は実験機材などの置き場になっているのか、分かりやすく似たような光景が続いている。

見るからに怪しい場所もない。

まもりは各部屋を調べて進み、見つけたフロアに駆け込んだ。

「……フローリスの実験時、妨害に入ってきた冒険者か」

「っ!?」

フローリスからの流れでやってきた者にだけ投げられる言葉に、驚きの表情を浮かべるまもり。

「この場所にいるということは、狙いは兵器かゲートだろう」

通路の先からやって来た黒仮面は、フロアの中央へと進みながら告げる。

「不穏分子には消えてもらう。我らが結晶兵器の贄となるがいい」

そして手甲に仕込んだ紫色の結晶を、強く輝かせた。

するとその身体が一瞬で、紫色の結晶に包まれる。

帝国の軍服に紫色の結晶が浸食したかのような姿は、強い威容を放つ。

「この結晶で全てを飲み込んでやる。かの花の街のようにな」

「そ、そんなのダメですっ」

思わず叫んだまもりに対して、黒仮面は右手を上げた。

「【浸食せよ】」

その言葉と共に、付近の床が一気に紫の結晶に覆われた。

そして、一斉に結晶の刃を突き上げる。

「っ!」

これをまもりは、大急ぎのバックステップでかわす。

戦闘開始時にある程度の距離があったことで、回避が間に合った形だ。

粉砕して消える紫結晶。

黒仮面は低く長い跳躍でまもりに迫り、逆立つ鱗のようになった結晶の腕で攻撃を仕掛ける。

「【クイックガード】【地壁の盾】盾盾っ!」

右右左という拳の連打。

これを防御したところで、黒仮面は右手を大きく引いた。

「【天衝】」

「っ!?」

結晶が集結し、巨大化した手による上段からの叩きつけ。

「ち、【地壁の盾】!」

まもりはこれも、盾を掲げることで防御。

しかしその威力は思った以上に高く、大きく後退させられた。

「【爆手】」

黒仮面は続けて左手を突き出す。

すると結晶があっという間に生成、組み上がる形で腕を伸ばして直進。

「【地壁の盾】!」

これも続けて防御に入るまもり。

だが伸びてきた結晶の巨碗は、そのまま盾をつかんだ。

結晶の手は、盾をつかんだまま煌々と輝き始める。

「【天雲の盾】っ!」

巻き起こる爆発に、慌てて属性防御に変えて対応。

「きゃあっ」

しかしその威力は高く、まもりは再び大きく弾かれた。

「これが結晶兵器の力だ。貴様は花の街の後を追え」

「っ!!」

駆け出す黒仮面の言葉に対して、まもりはなんと前に出た。

「【ローリングシールド】!」

迫る敵に対して、『置いておく』ような形の盾の回転撃。

これが黒仮面を打ち、進行を止める。

「【魔神の大剣】!」

踏み込み、振り下ろすのは1/5でしか当たらない剣。

「くっ」

だがこれもしっかり当てて、黒仮面が大きくのけ反った。

「【シールドバッシュ】!」

さらに踏み込み、放つは盾の衝撃波。

「ぐああああっ!」

吹き飛んだ黒仮面は三度ほど転がり、大きく後退。

慌てて顔を上げると、その眼前には【ストライクシールド】で投じられた大盾。

「なっ!?」

これを黒仮面は、慌てて防御に入る。

するとその頬を弾く形で通り過ぎた盾が、背後の壁に突き刺さった。

「…………」

言葉を失う黒仮面。

めったに見られないまもりの攻めの連携に、HPはなんと4割近くも減少。

「思った以上にできるようだな……ならば、こちらも全力でいく」

そう言って手甲の結晶を輝かせると、これまでは4割程度だった結晶の浸食が、7割のところまで増加。

「気をつけろよ。こうなってしまったら加減などできない。我らが大いなる野望の贄となれ……弱き者よ」

そう言って薄く笑うと、強く地を蹴った。

「【クイックガード】【地壁の盾】!」

飛び掛かりと同時に放たれた、結晶爪の斬り下ろしを盾で受ける。

左の爪で放つ振り上げ、右での振り上げ、そしてそのまま両の爪をクロスする形での振り下ろし。

「盾盾盾っ!」

これを受けると、爪による突きを右左右と連続で繰り出し、そのまま一回転して回し蹴りへ。

「盾盾盾……盾っ!」

一瞬遅れる蹴りも、しっかり待って防御。

見事な盾さばきを見せた直後、脚部の先端が急速に輝き出した。

「【天雲の盾】っ!」

巻き起こる爆発を、慌てて防御を切り変え受ける。

大きく弾かれたまもりに向け、黒仮面はその手を伸ばした。

「【紫棘葬】」

足元から一斉に迫り来るのは、その大きさを数十倍にした結晶製の有刺鉄線。

「ッ!! 【コンティニューガード】【地壁の盾】っ!」

まもりはこれを、しゃがんだまま防御することで受ける。

予想通り、伸び続ける2本の有刺鉄線は盾を執拗に削り、火花を派手にまき散らす。

喰らえばHPを際限なく削り続ける恐ろしい一撃を、見事に耐え抜く。

「っ!?」

まもりが立ち上がった瞬間、頭上に見えたのは結晶塊。

結晶の有刺鉄線に生った実が弾け、付近一帯に紫の刃をまき散らす。

「きゃあっ」

有刺鉄線からの結晶爆破。

嫌らしい二段階攻撃に、それでも防御を成功させるまもり。

だがその勢いに転倒し、そのままゴロンゴロンと後転。

「――――【紫刃乱舞】」

「っ!?」

聞こえた声に、慌てて片ヒザ立ちになり盾を構える。

「っ!」

見えたのは両手の爪、認識したのは『乱舞』という言葉。

「……【爆火盾】っ!」

まもりはそれだけの情報から『斬撃の乱舞』が来ると予想して勝負に出る。

右手の払い、返し。

左手の振り降ろし、振り上げからの払い。

両手を使った四度の突き。

そのまま回転し、結晶と化した脚による回し蹴り。

なんとまもりはヒザ立ちのまま、10連続の攻勢を完全防御。

さらに踏み込んで右の爪、左の爪と二発の突きを続け、そこから右腕に結晶を集結。

豪快な振り払いへと繋ぐ。

それでもなお、まもりは盾を掲げて防御を完遂。

そのタイミングは完璧だ。

「きゃ!」

しかし13発の連携の最後は高火力。

重たい一撃に再び、ゴロゴロと後転させられてしまう。

「【首狩り蹴り】」

再び転がったまもりは、それでも片ヒザを突き盾を取る。

「っ!?」

すでに目前にあった、黒仮面の跳躍蹴り。

虚を突かれ、驚きに目を見張る。

「い、いまっ!」

響き渡る衝突音。

まもりはなんと、この状況からでも引き付けての『ジャスト』ガードに成功。

「いきますっ!」

発動する【爆火盾】

収縮した爆発は範囲こそ大きくないが、その分だけ強烈だ。

巻き起こった紅蓮の炎を受けた黒仮面。

その身にまとった紫結晶が、派手に砕け散る。

そして床をバウンドして転がり、それでも止まらず壁に強く叩きつけられ倒れ伏すと、HPゲージが消し飛んだ。

かなり押されていた戦いだったにもかかわらず、まもりは直撃を一度も受けなかった。

「ふう……」

安堵の息をつき、フロアにある紋様にそーっと触れる。

すると紋様に光が灯ったが、すぐに消え、その後は変化なし。

「ここじゃない……み、みなさーん……!」

驚異的な防御を見せ、結晶兵器を使う黒仮面に勝利したまもり。

頼りない足取りで、皆を探して駆けていくのだった。