軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

887.最後の試練

三つのフロアを問題なく越えたメイたちは、人魚を追って一つ下の階へ。

「ゲートの起動装置はさらに地下。そこへ進むには、この宝珠が必要になります」

そう言って人魚は、碧の宝珠をメイに渡した。

「この先にある扉はその宝珠でしか開きません。一度しか使えないので大切にしてください。それでは向かいましょう」

人魚がそう言うと、一頭のイルカがやって来た。

「この道は迷路のようになっています。この子に案内を任せましょう」

乳白色の紋様ブロックが積まれたシンプルな通路は、繰り返す十字路の所々が行き止まりになった、シンプルな迷宮。

各所に見られる紋様の輝きは、侵入者よけの仕掛けになっているのだろう。

先行するイルカと人魚は、スイスイと先へ進む。

「つづきますっ! 【バンビステップ】!」

先行するのはメイ。

少し進んだところで侵入者対策が反応。

続く道の向こう側の壁から、10センチほどの雫弾が放たれる。

「よっ! それ、それっ!」

これをメイは、かわしながら進む。

そして足元に点灯ブロックが続く箇所まで来たところで、一気に速度を上昇。

あえて光ブロックを踏むことで罠を反応させる。

予想通り、踏むと水刃が吹き上がる仕掛け。

メイはこれを置き去りにして走る。

「【疾風迅雷】【加速】【加速】!」

そのすぐ後に続くのはツバメ。

メイのルートをトレースしていけば、そこにある罠はクールタイム中。

仮に連続発動する仕掛けなら、その事実を後続のレンたちに知らせることができる。

ツバメは分かりやすく、大げさに回避の動きを見せつつ進行。

「ッ! 【回天】!」

天井のブロック塊が落とした重い大雫を、【村雨】のジャンプ回転斬りで真っ二つに割り、しっかりと二番手の役割を全うする。

空中を泳ぐイルカと人魚が、角を曲がった。

メイがその後を追って行くと、足元の紋様から生まれる人魚型水塊。

出会い頭に、巨大な戦斧を叩きつけにくる。

「【装備変更】! とっつげきー!」

いきなりの攻撃にもかかわらず、メイは驚異的な反射で【鹿角】パリィを発動。

戦斧を弾き返すと、そのまま剣の一撃で砕き割る。

「ぶわっ!」

飛沫が顔にかかって、メイは顔を犬のようにブルブルと振るいながら疾走。

その動きを見て和み過ぎたツバメ。

飛んできた水弾が頭に当たって、軽くHPが減る。

メイが再び角を曲がった先には、長い直線の通路。

そこに生まれたのは、水刃の檻。

天井から床へと伸びる無数の水刃が、こちらに向けて迫って来る。

イルカと人魚は、水刃の間をスイスイと泳いで抜けていく。

見た目はレーザートラップの様なこの罠。

一度喰らうと弾かれて、そこから連続して刃を受け続けるという手痛い仕掛けだ。

「【バンビステップ】!」

だがメイはこれを、余裕のステップでかわしていく。

一方ツバメは速度を落として、しっかりと回避。

【敏捷】組には、まるで問題なしだ。

「ど、どうしましょう……」

一方まもりは、早くも映画とかで見たレーザーのトラップを思い出して震える。

後ろに続くレンと、ちょっと不安そうに互いを見合うが――。

「回避が難しいなら、正面からぶつかってやりましょう!」

「は、はひっ! いきます!

文字通り、まもりの背中を両手で押しながら走るレンの言葉に、思い切って盾を構える。

「いきますっ! 【コンティニューガード】【天雲の盾】……【チャリオット】!」

そしてそのまま、水刃の檻に突撃。

天井から迫る水の刃を弾き飛ばしながら、そのまま力づくで突き抜けてみせた。

「本当、まもりには最高のスキルね! 【低空高速飛行】!」

直後、レンは低空飛行で一歩前に出る。

「【超高速魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】!」

「「っ!?」」

急な魔法に驚く、メイとツバメ。

レンの放った炎弾は、前衛コンビのさらに先にある紋様の発動を、強制停止させた。

「さすがレンちゃん!」

「まもりさんとの連携は見ていて楽しいですね【加速】【瞬剣殺】!」

ここで頭上から落ちてきた高粘度の足止め水滴六つを、ツバメが斬り飛ばす。

「【ラビットジャンプ】【アクロバット】」

そしてそんなツバメを狙って正面から飛んできた水弾を、メイが斬り払う。

二人は軽いハイタッチをかわし、レンとまもりと共に迷路と化した通路を駆け抜けた。

勢いのままに飛び込んだのは、一つの長いフロア。

先行するイルカと人魚に反応し、紋様が放つ水砲弾。

その量は思った以上に多く、イルカが弾かれた。

「あっ!」

驚いたイルカは、慌てて進路を変更。

「ダメです! そっちは!」

人魚は慌てて声を上げるが、混乱状態のイルカは止まらない。

突然開いた床穴に、逃げ込んでしまう。

すると分厚いガラスのような水床が生まれ、イルカを閉じ込めてしまった。

『落とし穴』のような空間に閉じ込められたイルカはそのまま壁にぶつかり、気を失った。

見れば落とし穴部屋の床部分には、紋様と黄色の結晶。

そこからあふれ出した紫色の液体が、部屋内に溜まっていく。

「わあ! 大丈夫ーっ!?」

「侵入者用の毒罠です! このままではあの子が……っ!」

慌てて床を叩く人魚。

しかしこれだけでは終わらない。

この罠が発動したことで、起動する『捕獲モード』

通路にも、シャッター型の扉が降りてくる。

「この子を助けるにはどうすればいいのっ?」

「宝珠を使って、足元の紋様を起動するしかありません……でも、そうなったら宝珠の力がなくなり、先へは進めなくなります」

見れば降りてくるシャッターにも、紋様と宝珠用の穴。

イルカを助ければ、その間に閉じたシャッターを開くことができない。

迫られる選択。

メイの動きを、止める者はなし。

迷うことなく床の紋様に宝珠を使用し、水床が霧散したところでイルカの救助に向かう。

ここでレンは悩み、一つの判断をくだす。

「ツバメもお願い! 私たちは扉を潜りましょう」

「は、はひっ!」

レンはまもりと共に、降りていく扉を潜る。

その間に落とし穴部屋の床に着地したメイは、イルカを抱えて跳躍。しかし。

「あれっ!?」

跳び上がろうとしたメイの足が、床の紋様ブロックに張り付いた。

これでは、落とし穴から出られない。

「ツバメちゃん、来ちゃダメーっ!」

まさかの罠にメイは慌てて制止をかけるが、ツバメは紋様の上に着地。

「大丈夫です! 【罠解除】!」

レンがツバメを残したのは、この可能性を踏まえて。

紋様の輝きに手を触れ、ツバメはあっさり『張り付き罠』を解除した。

「メイさん、いきましょう! 【跳躍】!」

「ありがとうツバメちゃんっ! 【ラビットジャンプ】!」

「メイ! こっちよ!」

イルカを抱えたメイはツバメと共に落とし穴を抜け出すと、心配そうにしていた人魚の手を取った。

そしてレンの待つ、扉に向けて走る。

「【装備変更】【裸足の女神】!」

「……【加速】【リブースト】!」

両手にイルカと人魚のメイを優先し、遅れて駆け出したツバメ。

そのままメイは見事に、イルカと人魚を連れた状態で扉を潜った。

だがすでに残りの幅は40センチほど。

このまま駆け抜けるには厳しい状況だ。

「【スライディング】!」

しかしそのわずかな隙間を、見事に滑り抜ける。

メイを優先し、その上で自分も間に合わせたツバメ。

レンは杖を振り上げ、まもりも思わず飛び跳ねる。

「……毒は大丈夫かな?」

メイは連れてきたイルカを確認するが、特に異変などはなし。

「この子に毒は効きませんよ。この遺跡に生きる……機械なのですから」

「そうだったんだ! よかったね!」

メイはイルカを抱えて喜ぶ。

「それなら、あんなに慌てなくてもよかったんじゃない?」

意外なオチに、レンが問う。

「この試練は最初から、貴方たちを試すものだったのです。目前の命の危機を救えない者を、ゲートに向かわせるわけにはいきません」

「なるほど、言われてみれば『相応しい』かどうかを試すって言ってたわね」

本来、提示された二つの選択肢から『イルカを助ける方を選択し成功すれば』、ドアが閉じても達成となるクエスト。

「……まさかこの子を助け、さらに閉まる扉にも間に合ってしまうとは……あなた達は、私の想像をはるかに超えているようです」

イルカを助け、さらに閉じる扉までクリアする。

二つの問題を、見事に成立させた四人。

こうして人魚は最初から最後まで、『想定外の展開』用セリフを口にすることになったのだった。