軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

860.空の王

「それじゃあ、いきましょうか」

「一気にガーゴイルを片付けちゃおう!」

「これで最後、出し惜しみは要らんな」

「了解だにゃん」

笑って、4人は動き出す。

「【クイックステップ】!」

「【因幡ステップ】】!」

駆け出すアーリィとバニー。

「【三枚おろし】!」

先行したのはバニー。

一撃入れ、反撃をかわしてもう一撃。

そのまま左側へ離脱して、重騎士の視線を奪う。

「【ヴァルキリーストライク】!」

そこへ一直線に跳び込んできたアーリィが一撃を入れ、右側へ抜ける。

綺麗な連撃に、体勢を崩した重騎士型。

「【爆歩】!」

そこに飛び込んで行くのは夜琉。

その身体の大きさゆえに、回避は不可能。

重騎士型は盾を構え、完全な防御体勢で迎え撃つ。

だが夜琉の大太刀の一撃は、防御など許さない。

「【天地裂断】!」

縦に走る斬撃が、空間をズラすような形で断裂。

手にした盾ごと、大きく弾き飛ばされ転がる。

ここまでで約5割。

一気にHPを奪われた騎士型は反撃に出る。しかし。

「バ、【バーサーカー】」

残ったわずかなMPで、アーリィが畳みかけにいく。

起き上がった騎士型の振り降ろしをかわし、払いをかわし、盾の叩きつけをバク転でかわして、振り払いを掻い潜って跳躍。

「ウォオオオオオオ――――ッ!! 【白鳥乱舞】!」

三連の跳躍から放つ荒々しい刃の乱舞で、狂ったように斬りつける。

「あと、おねがい……っ」

しかしここでMP切れ。

ガクンと動きを止めたアーリィが振り返って手を出すと、タッチして前に出たのはバニー。

「おまかせあれっ! まだまだいくよ【微っ塵切り】ィィィィ――――っ!」

荒れ狂う斬撃の直後に、続くめちゃくちゃ軌道の高速二刀流攻撃。

叩き込まれる怒涛の連撃に斬り飛ばされ、ヒザを突く重騎士。

ここで前に出てきたのは、灰猫だ。

「【デモンスレイヤー】」

放たれる最後の一撃。

神殿区画の床がえぐれるほどの魔力光が、剣の重騎士をそのまま粒子に変えた。

「負けてられないぽよっ!」

「【マイン・エクスプロード】」

飛び掛かってきたランスの重騎士型に、自身を巻き込む範囲高火力攻撃を発動。

計算君は【食いしばり】でHPを1だけ残して、高いダメージとダウンを奪い取った。

「【凪一閃】!」

追撃にマウント氏の振り払いが続き、稼いだ時間で黒少女が魔法を発動。

「切り裂け【氷のイバラ】!」

地面を伸びる氷の枝から、生えた氷刃が重騎士を切り裂く。

残りHPは2割強。

スライムはここで、一気に勝負をつけにいく。

「【超可変・海王】ぽよ――――っ!」

変身は巨大な一角の海獣。

その豪快な飛びかかりが、ランスの重騎士型を消し飛ばした。

HP全損。

二体の重騎士型が消え去り、足止めは完璧な形で成された。

「あとは私たちだけね!」

「うんっ!」

「いきましょう」

「は、はひっ」

座り込んだまま剣を掲げるアーリィや、手を振る掲示板組に、思わず気合が入る。

あとは、空の王の打倒だけ。

メイたちは、いよいよ残りHPが4割ほどとなった巨鳥に向かい合う。

「ギャアアアアアアアアアア――――ッ!!」

猛烈な咆哮と共に、翼の色が紅色に変わっていく。

空の王が両翼を広げると、大量の紅羽が舞い散った。

そして、暴風を操る。

舞い散る無数の紅羽は次々に炸裂、パパパパパと起こる小さな爆発の乱舞が、光の網を生み出す。

「【加速】【リブースト】! くっ!」

「【バンビステップ】!」

渦巻く風の奔流は次々にその風向を変えて、襲い掛かる。

ツバメは爆発に肩を弾かれ、メイもかすめた羽に薄くダメージをもらう。

直後。通り過ぎた風は一転して逆風になり、羽が舞い戻ってくる。

「わわわわっ!」

「やっかいですね、これは……っ!」

輝きと共に迫る羽の嵐に、ツバメとメイはHPを削られていく。

「【クイックガード】【地壁の盾】、盾!」

まもりはすでにHP2割強のレンを守りつつ必死の防御で抑えるが、これもギリギリの状態だ。

「風弾がくる……っ!」

レンは空の王の挙動を見て、青ざめる。

クチバシに集まる緑の奔流は、先ほどメイを吹き飛ばした【暴風弾】だ。

紅羽がふわふわと舞い降りる中、放たれる風弾。

「【不動】【天雲の盾】!」

飛来した【暴風弾】を、まもりが盾で受けた。

ドン! という強烈な爆発音の直後、一帯に暴風が吹き荒れる。

「【天雲の盾】! 盾! 盾!」

「本当に、とんでもない威力……っ!」

次々に飛来する【暴風弾】はドン、ドン、ドン! と爆発音を立てる。

吹き荒れる風に、まもりの背後に隠れたレンも思わず足をフラつかせた。

「っ!」

吹き荒れる暴風に、メイとツバメはその場にしゃがみ込んで防御を固める。

続く【暴風弾】の連射を、受け続けるまもり。

そんな中、一つの風弾がまもりの頭上を越えていった。

「「「「ッ!?」」」」

外れた【暴風弾】が炸裂し、突然後方から吹き荒れる突風。

四人はついに体勢を崩された。

もちろん空の王は、この隙を逃さない。

わずか一度の羽ばたきで滑空に入り、そこから得意の急加速。

衝撃波を残し、直接攻撃を狙いに迫る。

その狙いはレン。

「【フレアストライク】!」

迫る空の王に放った魔法が、弾かれる。

まもりはすぐさま盾を構えて壁になるが、さらにその前に出たのはツバメ。

「つかみの可能性があります、ここは私が。まもりさん、空の王の飛来時の脚に注意してみてください!」

ツバメは空の王の急加速をしっかり目視し、直前まで攻撃の種類の見極めに使う。

そしてその爪が地面にぶつかり、火花を上げた瞬間。

「急停止です! 【跳躍】!」

ツバメはギリギリまで引き付けてから、前方へ跳躍。

急停止した空の王は、その場で両翼を豪快に振り回す。

「【エアリアル】【反転】!」

空の王の背後を取り着地したツバメ、しかし大きく開いたままの翼は、空刃放出の合図だ。

「右、左、もう一度左です……っ!」

飛来する多数の空刃を、ツバメは必死の回避でやり過ごす。

「【加速】!」

頬をかすめていく空刃。

ようやく生まれた隙を見て、走り出す。

「っ!!」

しかし振り返りと同時に放つのは、盛大なバク宙蹴り。

ツバメは全力で停止。

空の王の爪が、あご先を通り抜けていく。

どうにか近距離連携を切り抜けたツバメは、さすがに安堵の息をついた。しかし。

空の王はその状態から、羽ばたき一つで急降下。

「ッ!?」

その爪でツバメをつかみ、そのまま地面の床石に擦り付けた。

上がる猛烈な砂煙、ダメージは2割強。

空の王はツバメを置き去りにして上昇すると、上空から三連発の【暴風弾】を放ち、メイたちの体勢を崩したところで急降下。

そのまま再び滑空に入る。

「……いきます」

それを見て、前に出たのはまもり。

「ツバメさんのおかげで、分かったと思います……!」

迫り来る空の王は、そのまま急加速。

まもり目がけて特攻を仕掛ける。

「接敵直前で足を前に出していれば『つかみ』……下げていれば直接攻撃です! 【不動】【地壁の盾】!」

その判断は正解。

空の王の爪と、まもりの盾がぶつかり火花を上げた。

両者のぶつかり合いによって生まれる、わずかな隙間。

「逃がしませんっ! 【獅子霊の盾】っ!」

まもりの盾から胸元まで飛び出した大型の獅子が、その牙で空の王の脚に喰らいつく。

「【フレアバースト】――ッ!!」

まもりの後ろにいたレンが、すぐさま杖を掲げて爆炎を叩き込む。

大きく吹き飛ばされた空の王は、HPが残り3割強まで減少。

空中で一回転して体勢を整えると、崩れた神殿のガレキの前に立ち、強烈な咆哮を上げた。

「様子が……変わったわ」

「最後の攻勢の、始まりでしょうか」

「……ごくり」

放つのは、三連発の【暴風弾】

「【天雲の盾】っ!」

一発はまもりの盾を打ち、二発目は盾をかすめて後方で炸裂。

そして三発目はなんと、まもりの足元に着弾。

体勢を崩したところに、さらに続く【暴風弾】

「きゃあっ」

右から左から吹きすさぶ暴風に、ついにまもりが倒れ込む。

ここで空の王は、両の翼を開いて再び咆哮。

すると前面に広い半円型の範囲を持つ、【羽散弾】が巻き散らされる。

「わーっ!」

「こ、これはっ!」

「マズいわ……!」

まもりが転倒したことで、防御を選んだレンのHPが削られていく。

ツバメは回避と防御を使い分けるが、それでも残りはもうわずか。

倒れたところに暴風と羽刃を受けたまもり、そしてメイのHPが半分を割った。

「さらに、【暴風弾】ですか……っ」

防御し切ったと思いきや、すぐさま放たれる【暴風弾】

吹き抜ける突風が、メイたちのラインを大きく下げる。

あとは【羽散弾】を続けるだけで、レンとツバメは脱落だ。

この状況を崩すには、もう一つのパーティが【羽散弾】を受けないよう、回り込むような戦略が必要なのだろう。

耐えられてあと二発か、三発。

そんな計算がレンの脳裏をよぎった、その瞬間。

「…………いきますっ」

じっと空の王の攻勢を見ていたメイが、そう宣言した。

繰り出される広範囲かつ高密度の【羽散弾】を前に、スキルを発動する。

「【裸足の女神】っ!」

駆け出したメイは、真正面から羽の乱舞に突撃していく。

迫る【羽散弾】

その隙間に小さなステップで入り込み、身体を傾け、小さく飛び、止まることなく駆け抜ける。

放たれる二発目の散弾。

「【アクロバット】! 【装備変更】!」

その角度を見て、即座に装備を変更。

【狼耳】による速いローリングを挟むことで、速度を落とさない。

そして三発目。

「【装備変更】!」

【鹿角】にすることで速度を上げ、迫る羽の壁を驚異的な回避で抜ける。

「ッ!!」

すると今度は、羽ばたきによる【風起こし】

向かい風でメイの速度を落としたところに放たれる、四発目の【羽散弾】

「や……【野生回帰】ィィィィ――ッ!!」

ここで防具をまとめて取り払う。

インナーに角と尻尾だけになったメイは上昇したステータスによって、風に押される分すら取り戻して進む。

だが続けざまに放たれたのは、鈍く輝く紅羽。

それは小爆発が連続することで攻撃範囲の網を生み出す、驚異の範囲攻撃。

かすめただけで足を止められ、止まればそのまま連発を喰らう最悪の一撃だ。

「……い、いきますっ!」

それを『接近しながら』かわすなど、正気の沙汰ではない。

メイの戦いを見守っている全てのプレイヤーが、さすがに首を振る。

しかしメイは、覚悟を決めてスキルを解放。

「よ……よ……【四足歩行】だああああああ――――っ!!」

一気に伸びる加速は、羽の隙間を雷のような軌道で抜けていく。

つながる無数の小爆破が生み出す光の網も、それがつながる寸前に置き去りにする。

「たどり……着いた」

追従プレイヤーが、奇跡のような光景に思わず声をもらす。

「せーのっ!」

驚異の速度で踏み込んだ、空の王の目前。

「【フルスイング】!」

剣を全力で振り降ろす。

すると大きく弾かれた空の王は、空中で一回転。

反撃は超高速飛来からの突撃。

ドン! という轟音と共に衝撃波を起こし、一直線にメイに向けて飛来。

広げた翼と、スクリュー回転。

一転メイは足を止め、静かに見極める。

そして一歩だけ下がり、走り出す。

「【裸足の女神】!」

駆け出したメイは、なんとそのままスクリュー回転する翼の間を駆け抜けた。しかも。

「【ターザンロープ】!」

後方に残すような形で放った【ターザンロープ】が空の王の脚にかかる。

すれ違ったメイと空の王。

振り返ったメイは、両手でロープをつかんでそのままその場で回転。

「せーのっ!」

巨大な空の王を豪快に振り回し、そのまま空高く放り投げる。

「それええええええ――――っ!!」

そして上げたままの右手に、残した召喚の指輪が輝く。

「それでは――――何卒よろしくお願いいたします!」

空中に現れた魔法陣から滑降してきたケツァールは、そのままメイを乗せて空の王を追いかける。

天高く投じられた空の王は、その大きな翼を広げて急制動をかけた。

狙う反撃。

そのクチバシの前に溜まっていくのは、【暴風烈弾】

これまでにない勢いで集束していく、風の奔流。

こぶし大にまで圧縮された風の砲弾が、爆音と共に放たれた。

緑光を煌々と輝かせながら迫る一撃。

ケツァールといえど、触れるだけで容赦なく吹き飛ばされることになるだろう。

しかしメイは、これをかわしもしない。

喰らえば遠く海まで吹き飛ばされるであろう一撃を、メイは真正面から受け止めにいく。

「【ドラミング】っ!!」

始まる豪快なドラミング。

ドンドンと胸元を叩き、敵を一撃で数百メートルは吹き飛ばすであろう【暴風烈弾】を、仁王立ちのまま弾き飛ばした。

ケツァールとメイは止まらない。

「いきますっ」

一直線に空を登り、そのまま剣を構える。

「必殺の……【ソードバッシュ】だああああああああ――――っ!!」

すれ違い際の一撃が、空の王に放たれた。

駆け抜ける衝撃波は空をゆき、そのまま雲を割る。

弾かれた空の王は隕石のように落下して、神殿の一つに突き刺さってHP全損。

盛大な砂煙を巻き上げた。

「「「「オ、オオオオオオオオ――――ッ!!」」」」

その圧倒的な光景に、あがる歓声。

メイたちは見事、空の王の打倒に成功した。