軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

858.接近戦

空の王はレンの爆炎六連発を受け、それでも1割強のダメージに留めた。

すぐさま空中で華麗に一回転して体勢を整えると、そのまま滑降して反撃に入る。

「ギアアアアアアアア――――ッ!!」

「「「「ッ!!」」」」

飛行しながらの【咆哮】には、さすがに対応できない。

思わず硬直したメイたちの前に足を着くと、そこを起点にコマのように一回転。

「わあああーっ!」

「くっ!」

鋼のような両翼が、前方にいたメイとツバメを弾き飛ばす。

メイで1割、入りが浅かったツバメで2割ほどのダメージ。

空の王はすぐさま翼を広げ飛翔、ジェットコースターのような縦の回転で再接近して、レンを狙う。

「【地壁の盾】!」

まもりがすぐさま防御に入り、これを防ぎに入るが――。

「っ!?」

なんと空の王は、そのまままもりを『つかんで』空へ。

一気に上空へ向かう。

「高速【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】!」

その意図に気づいたレンがすぐさま空の王を攻撃するも、錐もみ回転しながらの上昇でこれを回避し、落下を開始。

一直線の下降からそのまま、つかんでいたまもりを離した。

「きゃあああああっ!」

「まもりっ!」

神殿に直撃したまもりは、そのまま壁を突き破った。

半壊する神殿。

ダメージは防御の高いまもりでも3割弱に及び、その火力の高さを見せつける。

さらに空の王は旋回して向きを変えると、こちらに向き直った。そして。

ドン! と衝撃波を残して急加速。

「「「ッ!?」」」

その大きな体躯に見合わない、驚異的な速度で迫りくる。

「【加速】【リブースト】!」

迫る爪は、地を擦り火花を上げる。

これをツバメは最速の回避でかわして転がる。

すると空の王は再び空中で回転し、もう一度ツバメを狙って超加速。

「そういうことでしたら! 【跳躍】!」

ツバメは頭上を越える形での回避から【反転】することで、着地後の反撃を狙う。しかし。

空の王は、翼を広げたままスクリュー回転。

「あああああーっ!」

大きく攻撃の範囲を広げた一撃がツバメを斬り飛ばし、2割を超えるダメージを与えた。

「【バンビステップ】【ラビットジャンプ】!」

だがこの隙を突く形で、メイは距離を詰めていた。

ようやく地に足を着いた空の王に向けて、跳躍から剣を振り降ろしにいく。

すると空の王は、その顔をメイに向けた。

そのクチバシの前に集まる風の奔流。

「わあああああ――――っ!!」

空中から迫るメイの剣が当たる直前、放たれた風の奔流がメイを消し飛ばす。

ドン! という爆発音の直後、視界から一瞬で外れるほどの速度で地面を転がった。

「接近での戦いにも自信ありって感じかしら!! 【連続魔法】【ファイアボルト】!」

距離を取らずとも戦えることを誇示するかのような戦いぶりに、唇をかむレン。

大きく硬質な翼や鋭い爪による攻撃でも、その火力は十二分。

炎弾の連射で、どうにか追撃をけん制する。

「でも、そういうことなら……!」

起き上がったメイに、レンは目配せ一つで合図を送る。

空の王はレンの牽制で軌道を変え、その狙いをツバメに合わせた。

そして再び、高速の突撃で迫る。

「メイっ!」

「おまかせくださいっ! 【裸足の女神】!」

さらに追撃を狙う急加速を見て、ツバメのもとへ駆けつける。

「ツバメちゃん、大丈夫?」

「は、はい。ですがどうして……」

自分を抱えて逃げるのならまだしも、隣に来てヒザを突いた意味を計りかねるツバメ。

轟音を響かせ迫る、空の王。

得意のスクリュー回転を前に、もはや回避も難しい距離となる。

しかしメイは慌てない。

その狙いは回避ではなく、あくまで反撃。

右手を突き、空の王が攻撃体勢に入ったところでスキルを発動する。

「大きくなーれ!」

メイのまいた【豊樹の種】が、一気に伸びる。

それは小さな密林を生み出すほどの、圧倒的な成長。

木々が絡み合って壁になれば、迫る空の王に対する分厚い『網』となる。

突撃。

凄まじい勢いで、斬れ飛んでいく木々。

空の王は鋼の翼で、無数の枝を切り裂き迫る。

しかしその驚異的な枝と葉の密度は、貫通までは許さない。

メイたちにその一撃を届かせる直前で制止し、空の王はギリギリのところで木々の網に囚われた。

「いきましょう! まもり!」

「は、はひっ!」

駆け出していた二人。

メイとツバメを追い越す形で駆けつけたレンは杖を、まもりは盾を空の王へと向ける。

「【フリーズブラスト】!」

「【フリーズブラスト】!」

あらかじめ【マジックイーター】で仕込んでいた氷嵐を放てば、レンの放ったものと融合して切り裂く氷雪の暴風となる。

二人がかりの氷嵐を受けた空の王はすぐさま翼を開き、空への退避を狙う。

「そうはさせないわ! 【悪魔の腕】!」

しかしレンがそれを許さない。

地面の魔法陣から伸びた悪魔の巨碗が空の王の脚をつかみ、時間を稼ぐ。

叩き落せないのは、やはりそれだけの大物ということか。

「お願い! ツバメ!」

「はいっ! 【加速】【跳躍】!」

レンの呼び声に、ツバメが即座に応える。

「【ヴェノム・エンチャント】【四連剣舞】!」

短剣の四連撃を叩き込むと、空の王はその強靭な足で地面を蹴り、豪快なバク宙蹴りを放つ。

「【加速】【リブースト】【反転】!」

しかしすでに走り出していたツバメは、空の王の足元を潜って後方へと潜り抜けていた。

「【連続投擲】」

速い反転から狙うは、四本の【ブレード】による攻撃。

その身体の大きさがアダとなり、回避は不可能。

刺さる四本の【ブレード】によって、蓄積した毒素が炸裂。

空の王は大きくその身を震わせ、再び地に落ちる。

「【サクリファイス】」

ここでツバメは、一気に攻勢をかける。

武器をダガーから【村雨】に換え、HPの2割を使用。

「――――【斬鉄剣】」

鞘から抜き放たれた豪快な斬撃エフェクトが、空を駆ける。

容赦のない威力は、巨大な空の王ですら斬り飛ばす。

その巨体は神殿に直撃。

風がその長い黒髪を揺らす中、ツバメは静かに【村雨】を鞘へ戻した。

「こっちにはメイとツバメがいるのよ。接近戦でも勝ってみせようっていうのは、さすがに甘く見過ぎだわ」

そう言って、強気の笑みを見せるレン。

これで空の王の残りHPは、残り6割強。

「う、うおおおおお――――っ!!」

一方、重騎士ガーゴイルは追従プレイヤー達を攻め続けていた。

右手に持ったランスでの【滑空突き】は、前衛の防御を弾き飛ばす。

そのため後衛組は攻撃ではなく、身を守るため一斉に攻撃。

しかし重騎士ガーゴイルは、盾を持ったまま飛行する【飛行防御】によって前進。

放つ【滑空突き】が、再びその威力を見せつける。

「「「うわああああああ――――っ!」」」

弾き飛ばされる後衛組。

運良くかわした魔導士も、続くランスの振り払いに弾き飛ばされる。

「マズいぞ、対ガーゴイルの防衛線が崩れる……っ!」

「耐えろ! メイちゃんたちのところには行かせるな!」

メイたちが戦う浮き島前から少し離れた神殿前庭園に、二体の重騎士ガーゴイルを引き込んだ追従組。

メイたちの相手は、完全なる超大物だ。

戦況を崩さないため必死に抵抗するが、敵は見上げるほどの体躯を持つ重騎士ガーゴイル。

突き出すランスが、円形の衝撃波を放つ。

「くっ! うおおおお――っ!!」

その広い攻撃範囲と速さに、前衛の【敏捷】組たちが吹き飛ばされる。

こうなれば重騎士ガーゴイルは、一気にプレイヤーの掃討へ動く。

爆発的な低空跳躍から、引いたランス。

埋め込まれた黄色の結晶が煌々と輝き、後衛を守っていた重戦士のもとへ。

あがる豪快な砂埃と、その輝きを前に察する。

「ここまでか……! すまない……っ!」

重戦士が盾を構えたままつぶやいたところに、駆け込んでくる一つのパーティ。

「迷子ちゃんの向かった方向で正解だったな!」

「よく分からないけど、ピンチみたいぽよっ! 【飛び跳ね】っ!」

現れたスライムは速く低い飛び跳ねで、一気に重戦士のもとへ迫る。

「【砲弾跳躍】!」

そしてそのまま、突撃を仕掛ける重騎士型に真横から突撃。

ランスのガーゴイルは弾き飛ばされ、神殿に激突した。

スライムは付近の様子を、あらためて確認する。

「メイさんたちぽよ! 戦っているのは、空の……王様?」

分かるのは、それが至上の大物であるということだけ。しかし。

「メイさんたちが『正しいルート』で来てるのなら、邪魔なガーゴイルを倒して、空の王様との戦いに集中してもらう方がいいぽよ!」

「その選択、90%の確率で正解と見ました」

「こっちも十分大型だ。分担が重要になるわけだな」

「くく、使徒長たちなら必ず隠された真実にたどり着くだろう。そのためには我らが『余計な邪魔者』を省くのが的確であろうな」

スライムたちは、状況を即座に把握。

王都の時と同様に、『混戦を避ける』ことが重要だと認識した。

すると重騎士ガーゴイルは立ち上がり、その狙いをスライム兵団に変えた。

「くるぽよっ!」

速い滑空で仕掛ける、ランスによる突撃。

「えーっ!?」

声を上げたのはマウント氏。

「俺を相手に、単純な物理攻撃を仕掛けしちゃうやつとかいるー!? はい【ソードディフェンダー】!」

挑発するような言葉と共に、突き出されたランスを剣で弾くマウント氏。

火花が散り、滑空中だった重騎士ガーゴイルは弾かれるような形で転倒。

「そこに転がる展開、計算通りです【フレイムマイン】」

そこに計算君の投じた地雷型アイテムが、真紅の炎を噴き上げる。

「……なかなか見事な装備だ」

追撃を受けた重騎士型に、そう言って杖を向けたのは黒少女。

「だが、樹氷の魔女の前に立ち塞がったことが貴様の不運だ――――咲き狂え、雪花の刃【凍花白華】」

『樹氷の魔女』という二つ名に沿う魔法を、探し狂っていた黒少女。

ようやく手に入れた魔法を、さっそく解放。

冷気によって白みがかった空間に現れた、大量の氷花。

次々に砕け散り、生まれた無数の氷の花びらが敵を切り刻む。

新スキルを決めた黒少女は、レンを真似た杖の振り降ろしで決める。

こうして重騎士ガーゴイルに、見事な連携を叩き込んでみせたスライム兵団。

「お前たち、早過ぎな!」

さらにそこへ、追いかけてきた掲示板組が合流。

「……なるほど、メイちゃんたちの戦いを守る形だな」

すぐさま『どう戦うか』を理解して、武器を構える。

こうして重騎士ガーゴイルたちとの戦いは一転、不利を跳ね返す形になったのだった。