軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

851.神殿区画で待つもの

「内部区画から出られそうです……!」

「外はどうなってるのかな」

「ド、ドキドキしますっ」

聞こえてくるのは、装置らしきものの作動音とざわめき。

間違いなく、外では何かが起きている。

アーリィたちに見送られ、先行するメイたちはブロックの道を進み、そのまま廊下を走って外へ。

そこはメイたちが最初にたどり着いた居住区画から王城を挟んだ反対側、神殿区画の一角だった。

「浮き島が動いてるよ!」

メイが指さしたのは、神殿区画から飛び出ている二つの浮き島。

半月型の浮島はゆっくりと接近していく。

そしてそのまま一つの、大きな満月型の浮き島になった。

「なんだ!? 一体何が起きるんだ……!?」

建ち並ぶ石柱や神殿によって、雰囲気を感じさせるこの区画。

そのフチの部分に当たる場所から突き出した形の、大きな浮島。

その上には何もなく、集まっていたプレイヤーたちも状況を理解できずにいる。

だがこの大げさなギミックに、何も隠されていないはずがない。

「とにかく、渡ってみよう」

この場に集まっていたプレイヤーたちは、すでに数百人にのぼる。

さっそく、先頭にいるプレイヤーが浮島に渡ろうと動き出すが――。

「――――かかれ」

声を上げたのは、そんなプレイヤーたちを神殿の屋根や柱の上から見下ろしていたアサシンたち。

空から現れた一体の大型ガーゴイルが翼を広げ、今まさに浮き島へ向かおうとしている一団のもとへ滑空を始める。

「お、おい! あれを見ろっ!」

その大きな影に気づいたプレイヤーが、慌てて空を指さす。

直後、鳥を模した大型ガーゴイルは猛烈な勢いで飛び込んできた。

「「「「うおおおおおおおお――――っ!?」」」」

浮き島への道の前に、すべり込む形で現れたガーゴイルは剣を大きく払う。

弾き飛ばされたプレイヤーたちは、数十人まとめてフチから落下した。

アサシンたちは、さらに攻勢をかける。

黄色の結晶を掲げると、神殿区画内の各所を守っていた小型のガーゴイルたちが、一斉に飛び立つ。

その数は多く、数百人いるプレイヤーをさらに大きく上回る。

「いっぱいだー……!」

「意地でも進ませる気はないって感じね」

内部区画から始まったアサシンたちの妨害は、いよいよ激しくなってきた。

小型ガーゴイルの数は、もはや一つの大軍だ。

思った以上の大規模戦闘。

浮き島に『隠された何か』の気配を、強く感じる。

「レベルの高いパーティは大型ガーゴイルを! それ以外は小型のガーゴイルを狙え!」

集まっていたプレイヤーたちは慌てて戦闘態勢に入り、分担を決定。

しかしすでに大型ガーゴイルは臨戦態勢。

翼を羽ばたかせながらの跳躍で、手にした片手剣を振り下ろす。

「「「おおおおっ!?」」」

巻き起こる衝撃波が、前衛チームを吹き飛ばした。

さらに大きな踏み込みから放つ振り払いが、二列目に詰めていたプレイヤーたちを大きく転がす。

「「「【ファイアアロー】!」」」

それを見た後衛が慌てて魔法で援護するが、大型ガーゴイルは羽ばたき一つでかき消した。

中級以下の属性魔法に対応するこのスキルは、かなりやっかいだ。

そして初手を大型ガーゴイルに奪われたことで、戦いが安定する前に小型のガーゴイルたちも続々到着。

戦いは、乱戦の様相を呈する。

「レンちゃん!」

「いきましょうか。おそらく私たちの進む道も同じだろうし」

「向かうべきは、あの浮き島ですね」

「は、はひっ」

早くも劣勢を背負わされた、追従プレイヤー達。

メイたち見たさにやって来た一つのパーティは、小型ガーゴイルたちの剣技による連携をどうにか受け止めるが――。

「マズいっ!」

ここまで武器だけの戦いを見せていたガーゴイルが8体、同時に口を開いた。

すると内部に埋め込まれていた黄色の結晶が、豪炎を噴き上げる。

「「「わあああああああ――――っ!!」」」

あがる悲鳴。

突然の合体攻撃に、追従パーティは対応が取れない。しかし。

「おじゃましますっ!」

そんなガーゴイルとパーティの間に駆け込んできたのはメイ。

すると豪炎は弾けて散り、火の粉となって飛び散った。

「うおおっ!? メイちゃんだ!」

「メイですっ!」

仁王立ち状態のメイは、振り返って笑顔を見せる。

【王者のマント】を翻して立つその姿に、思わず目を奪われるパーティ。

そして、戦いの流れが変わり始める。

「いきますっ! 【装備変更】から……それーっ!」

頭を【狐耳】に換えて走り出し、振り上げる【狐火】剣で先頭のガーゴイルを一撃粉砕。

そのまま大きく敵陣に踏み込み、大きく剣を振るう。

「【フルスイング】!」

振り払う一撃は青炎によって大きく広がり、残り7体のガーゴイルたちを一掃。さらに。

「【グリーンハンド】【アイヴィーシード】!」

着いた右手から一斉に広がっていく蔦が、付近のガーゴイルたちに絡みつく。

こうなればプレイヤーたちは、戦いの流れを立て直すことができる。

「【加速】【リブースト】【跳躍】」

一方ツバメは、陣を作って攻めてくる小型ガーゴイルに押される一団のもとへ。

「跳んだ!?」

「あんな敵陣の真ん中に入ったら、アサシンには厳しくないか!?」

跳躍で敵陣に跳び込むという無謀な突撃に、驚くプレイヤーたち。

「【アクアエッジ】【瞬剣殺】!」

放つのは、斬り裂く水刃。

これによって強固な壁になっていた小型ガーゴイルの陣が崩れ、『穴』が生まれた。

後はそこから陣を分断し、潰していけばいいだけだ。

「それにしても、こんな数の敵が出てくるなんて……っ」

「とんでもないところに踏み込んじまったな!」

控える敵の数の多さに、思わず息を飲む追従プレイヤー。

「【魔砲術】【フレアストライク】!」

しかしレンにとって、離れた位置に見える敵の集団は大好物。

放たれた爆炎は、空を駆け着弾。

三十体ほどのガーゴイルが、粉々になって消し飛んだ。

離れた位置から一方的に敵戦力を削る気持ち良さに、思わず笑みがこぼれる。

しかしそんな中でも、レンは『挟撃』を狙って動くガーゴイルたちの動きを逃さない。

「はいそこまでっ!」

合戦のようになってきているこの場で、挟撃を受けたパーティを見つけると即座に対応。

「【魔砲術】【フリーズブラスト】!」

放った氷嵐は、小型ガーゴイルの一団を吹き飛ばした。

「最悪だああああっ!」

そんな中、一人の剣士少女が窮地に陥っていた。

個人プレイが多いその少女は、今回も新たなマップへのドキドキに駆られて単体で乗り込んできた。

そして運悪く、ガーゴイルのパーティにぶつかる形になってしまった。

三体が接近して剣技を使用、さらに背後のガーゴイル二体は口を開き結晶を発動。

魔力光弾による攻撃が迫る。

「きゃあっ!」

「わ、私ですみませんっ……!」

なぜか聞こえてきた、謝罪の声。

「【かばう】!」

少女の前に跳び込んできたのは、まもりだ。

「【クイックガード】【地壁の盾】盾盾! 【天雲の盾】盾っ!」

ペコペコと謝りながら、敵ガーゴイルの連携を完全ガードするというとんでも技術を披露。

「【シールドバッシュ】!」

そのまま盾を振り下ろして、ガーゴイルのパーティを吹き飛ばした。

本当は『メイやレン、ツバメに助けられたかった』に違いない。

向けられた驚きと感謝の視線を勘違いして、まもりは再び頭を下げる。

「これが、メイちゃんたちの力か……!」

「戦況が一気に安定したぞ!」

メイたちが戦いの軸になることで、自然と戦いは安定し始めた。

しかし敵数が一定以上に減ったところで、アサシンは再び結晶を輝かせて増援を招集。

「……ウソだろっ!?」

「大型も増えるのかよ!」

こちらの進攻状況に合わせて、アサシンたちが呼び出す増援。

大量の小型ガーゴイルが、格納庫から飛び立ち集結。

さらに巨大な斧を持った個体と、槍を持った個体。

二体の大型のガーゴイルが、新たに追加された。