軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

844.一息つきます!

「レンちゃーん!」

「お疲れ様、そっちの心配はなさそうね」

宝珠を鍵とする扉。

その前に戻ってきたメイは、レンたちの姿を見てうれしそうに飛びついた。

「そ、そちらはどんな感じだったんですか?」

なぜかぐったりしているアーリィたちを見て、首を傾げるまもり。

「レバメは強敵だった」

「「「「……レバメ?」」」」

「レンちゃんとツバメちゃんのコピーが合体した、魔法アサシンっていう感じだね」

「なにそれーっ! 面白そうじゃん! どんな敵だったのー?」

「ツバメの速度で迫ってきて、いきなり上位魔法を叩き込んでくる化物だ」

「すっごいじゃん! レンとツバメだったら美少女魔法アサシンでしょ!? バニーちゃんも見たかったよー!」

「わたしも見たかったーっ!」

「まあそうなのだが……敵だと、むしろそれが恐ろしい」

あらためて、息をつく夜琉。

「これがメイさんとレンさんのコピー体でなくて良かったです。科学実験で生み出した化物に食べられてしまう博士のように、最恐のモンスターを世に放つ形になっていた可能性があります」

その言葉に「確かに……」と、震えるアーリィと夜琉。

「あの詠唱は、スキル使用時の『強制』仕様かにゃん?」

「詠唱? そんなのしてたかしら?」

レン、すっとぼける。

「とにかくこれで宝珠は二つ集まったし、先に進みましょう!」

レンは集めた宝珠を使用して、ドアを開く。

するとその先は乳白色のブロックで造られた一本の廊下になっており、最奥のブロックが輝いている。

8人が乗るとブロックは上昇し、そのままエレベーターのように上階へ。

ブロックが止まったところで降り、たどり着いた廊下の先にある扉を開く。

そして短い階段を上がると、そこは天空遺跡の最上層に当たる王城前庭園。

「おおーっ!」

「壮観ね」

芝生の上に白いテーブルとイスが置かれたこの場所からは、天空遺跡の表側が見渡せる。

ここでなら休憩も取れそうだ。

「せっかくだし、一息ついていこうよ!」

広がる光景に目を奪われていたメイが、さっそくテーブルの方に駆け寄る。

「あ、あのっ、それでしたら色々持ってきてますっ」

そう言ってすでに笑顔のまもりが、空いてる時間に集めた飲食物を次々に取り出していく。

「こ、これはフランセーズのマカロンとフルーツタルト。こっちは帝国のシュトーレンです……!」

「すっごーい! 今の飲食システムってこんなところまで来てるのー!?」

「はひっ。今のおすすめはこれとこれです……っ」

「いいじゃん! 攻略中は外部情報が全然入らなくて、触れるタイミングがなかったんだよねーっ」

すぐに駆け寄るバニー。

目を輝かせがら、さっそくタルトを一口。

「うっまーい! 本当に何だったのーっ! 殺伐としながら未開拓の島を攻略してた時間はーっ!」

これにはアーリーと夜琉も、黙っていられず駆けつける。

「すごい……っ。こんなにおいしくできてるんだ!」

「なるほど。このレベルならメイのカフェを開くことで、飲食システムを広めようというのもうなずけるな」

まもりはこれでもかというほど飲食物を出して、そのままテーブルから離れていく。

「まもりは座らないの?」

レンが聞くと、まもりはブンブンと首を振る。

「い、いえ、イスは四つしかありませんし、こういう大勢一緒に外で食べるみたいなことって、私の人生には縁がないことなので……っ」

「分かります」

「分かるにゃん」

即座に共感する、ツバメと灰猫。

ヤマト産の串だんごだけもらって芝生に正座しているツバメの横に、まもりも腰を下ろす。

「ですが、こういう形なら悪くないですね」

「は、はひっ」

「まったくだにゃん」

輪の中にいるけど、場所は端の方という状況は絶妙に居心地が良い。

「端にいなくてはならないのと、選んで端にいることの違いは大きいです」

するとそんなツバメやまもりたちを見て、自然とアーリィやメイが立ち上がる。

「イスが足りないなら、皆で座って食べましょうっ」

そう言って8人で芝生に輪を作る。

「ツバメちゃん、この抹茶ロールケーキすごく美味しいよ!」

「では一口」

「はい、あーん」

「ッ!? そ、それでは、失礼して……」

唐突な接近に、うれしいやら恥ずかしいやらで顔を上気させるツバメ。

もう味がよく分からない。

「それならバニーちゃんもお願いっ! あーん」

「はい、あーん」

「ふむ、うまい」

「こらーっ!」

一方バニーは、メイの「あーん」を夜琉に奪われ憤慨。

「まもりちゃんは本当に色んな街に美味しいものを探しにいっているんだね! こういう時間すっごく楽しみだよーっ!」

「は、はひっ!」

まもり、向けられた笑みに恐縮してむせ返る。

「こういう形で一休みできるのって、楽しくていいね」

「まったくだにゃん」

アーリィの一言に、深くうなずく灰猫。

攻略時に飲食システムを知っていれば……と、苦笑い。

「でも……別に全員正座じゃなくてもいいんじゃない?」

そしてなぜか芝生の上で律儀に正座する皆の姿に、レンも笑うのだった。

「さて、少しこれまでの情報を整理しましょうか」

「それがいいね」

レンはアーリィを誘って、紅茶を手にテーブルへ。

「かっこいい……!」

足を組み、紅茶をたしなむ二人に目を輝かせるメイ。

コーヒー牛乳とマカロンを手に、テーブル席へスッと座る。

「どうかな?」

メイも負けじと足を組み、髪をふわっとさせつつ振り返る。

その表情はとても得意げだ。

「女神のお茶会にやって来た、獣人の少女だな」

「あれーっ!?」

今回は完璧なはずなのにと、猫耳尻尾のまま頭を抱えるメイに笑うツバメたち。

「ん、あれって……」

そんな中メイが見つけたのは、遺跡に上がってきたプレイヤーたちの姿。

どうやら天空遺跡が姿を現したことで、別のルートや飛行などを使った上がり方も解禁されたようだ。

「元攻略組はいるかな?」

アーリィたちはさっそくのぞいてみるが、行方不明プレイヤーたちの姿はなし。

「少し賑やかになりそうね」

見れば居住区画にも、多くのプレイヤーが確認できる。

その中で先頭を走っているのは、準トップ級のパーティだ。

「このまま突き進むぞぉぉぉぉーっ!」

「「「おう!」」」

そんな掛け声と共に、天空遺跡の中層に当たる部分の外周を勢いよく駆けている。しかし。

「あれは……っ!」

思わず8人が身を乗り出す。

その前に現れたのは、謎のアサシン集団。

急な襲来に驚く準トップパーティ相手に、容赦なく攻撃を仕掛ける。

その火力は高く、見事な統制で一気にプレイヤーたちを片付けていく。

「あのアサシン、大図書館帰りに戦ったのと同じね。今度はチームで攻撃を……」

「何かの組織、なのでしょうか」

先頭をかけていた準トップチームは、急な攻撃に立て直しができないまま壊滅。

後に続いていたプレイヤーたちも、続けて狩り尽くされてしまった。

するとアサシン集団は言葉もなく、その場を立ち去っていく。

「……天空遺跡にある『何か』に近づく者は許さない。あのアサシンたちの目的はそんなところかしら?」

「以前は本を狙っての襲撃でした。そう考えると、何かしらの情報を統制しているのでしょうか」

「その可能性はあるわね。とにかく今は進みましょうか」

「そうだな、少し荒れてきそうだ」

「りょうかいですっ」

天空遺跡に乗り込んできたプレイヤーたちの前に、現れたアサシン集団。

短い休息を終えたメイたちは、先へと進むことにしたのだった。