軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

839.天空遺跡

エルラトの空に現れた天空遺跡。

レンたちは各自、短い時間で準備を終えて再集合を果たす。

「……っ」

場所は部族が守る遺跡の中央。

集合場所へ戻る途中のまもりは、前に灰猫がいることに気づいた。

絶妙な距離感。

この位置は声を掛けに行くべきだろう距離だが、果たして言葉少ない自分がそれをしていいのか。

とはいえ今振り返られたら、『声を掛けずにいなかったこと』を知られてちょっと気まずい。

それならいっそ、足を止めて少し距離を離すべきか。

とはいえここで一人立ち尽くすのは、もっとばつが悪い。

いつも完璧な見定めで攻撃を弾くまもり、敵のどんな攻撃よりもこの判断に悩む。

「っ!?」

すると不意に、灰猫が振り返った。

灰猫の不機嫌そうな表情に、思わず震えるまもり。

「あ、あああああの! ちちち違うんです! これは何て声を掛けたらいいか考えてしまっていただけでその、勇気が溜まったら声を掛けに行こうと思っていたんです……!」

「……分かるにゃん」

「……え?」

「たとえ同じパーティでも、自分が声を掛けに行っていいのか悩む感じ。分かるにゃん」

見た目悪魔の灰猫は、大きくうなずく。

「この目つきだと怒っていると勘違いさせがちで、迷惑でないかと申し訳なくなるにゃん」

「灰猫さん……」

「だからフォローしてくれるアーリィや、場を元気づけるバニーの存在は助かるにゃん」

「わ、分かります……っ!」

「全くですね。私もメイさんやレンさんのおかげで、多くの方に存在を認識してもらえました」

「「ッ!?」」

突然現れたツバメに、びっくりして思わずのけ反る二人。

「い、いつの間に……」

「現れたにゃん……?」

「先ほどからずっと、お二人の話をここで聞いていました」

「「……え?」」

「私の場合は声をかけても『……誰?』と言われるのが恐ろしくて、悩むことが多いです。その後の空気感は、お相手にも申し訳ないので……」

丸一年同じクラスだった子に、終業式の日にそう言われて衝撃を受けたというツバメのエピソードに、驚くまもりと灰猫。

三人の間に、ちょっと不思議な連帯感が生まれたのだった。

「灰猫、こっちこっち」

「まもりちゃんツバメちゃん! 準備はできたーっ?」

集合場所にはすでに、待ちきれなさそうに手を振るメイとアーリィの姿。

「本当に助かります」

「は、はひっ」

「助かるにゃん」

こうして8人は、準備を終わらせ再会した。

「それにしても、頭上に大陸があるっていうのは初めての経験ね」

「うんっ、すごいよねーっ!」

「バニーちゃんはメイと島の端まで行ってきたんだけど、それでもぜーんぜん上部は見られなかったよー」

「早く上に行ってみようよ!」

「どんな景色になっているのでしょうか」

「楽しみだね」

メイはスキップで、転移方陣へと進む。

今回ばかりはアーリィも足早だ。

『この遺跡の中にはいくつか、天空のエルラトへと向かう装置がある』

長老が石板に書いた文字通り、遺跡内にはいくつかの転移方陣があり、そこからあの天空遺跡に向かうようだ。

やはりこの場所は、天地をつなぐ玄関口としての要素が強そうだ。

メイたちは足取りも軽く、転移方陣の前へ。

すると先ほどブレスレットの宝珠によって起動した転移システムが作動。

紋様に光が灯っていく。

続けて視界を優しい光が包み込むと、身体に感じる浮遊感。

次の瞬間たどり着いたのは、これまでに見たことのない風景の中だった。

「わあ……すっごーい!」

「ここが岩石大陸の上かー! こーんな光景初めて見たよーっ!」

上空にあるだけあって、その視界の多くを青い空が埋める天空遺跡。

吹き抜けていく風と陽光が、とても気持ちいい。

メイとバニーはその光景に、さっそくはしゃぎ出す。

「これが、本当のエルラトなのね」

「元々は王国だったりしたのでしょうか」

目の前に広がるのは、石と金属の中間のような素材でできた石畳の道。

その両脇には、青々とした木々や草花が見られる。

鳥が空を飛ぶ姿はどこかラプラタの植物園を思い出させるが、やはり人はおらず、付近には魔物の気配もなさそうだ。

「エルラトの本命は、ここで間違いないにゃん」

「そういうことだな」

岩石の上部は岩山のような形状をしており、そこに住居らしき建物を造っていったような感じになっている。

住居区画の反対面には神殿を思わせる建物が並び、天辺にあるのは王城か。

そしてここでもやはり、岩石大陸の内部へ進めるようになっているようだ。

「この高度にこんな大きさの街が浮かんでいる。やはりこういう光景にはワクワクしてしまうな」

「人がいないというのも、ワクワクさせるにゃん」

「ほ、本当ですねぇ……」

振り返ってみると、この場所の高さがよく分かる。

広がる海と、付近の大陸を見渡すほどの高度。

メイたちがたどり着いた場所は、そんな天空遺跡から突き出すような形で作られた、小さな浮島の一つ。

緑を生やすために作られたのか、それとも何かの発着場なのか。

「まずは建物を見に行ってみようよ!」

「そーしよー!」

さっそく駆け出すメイとバニー。

風が揺らす草原の中を、8人は遺跡の本体部分を目指して駆け出した。