軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

796.鍵

スライムを中心とした帝国兵部隊に勝利したメイたちは、東部にある裏口に第二王子と共にたどり着いた。

「皇帝打倒がなされれば、すぐにでも第二王子ルティアを新皇帝に擁立する式を始める」

「よろしくお願いします。ガルデラの救世主たち。ルーデウスはそのプライドの高さのため、逃げるという選択はできないはずです」

みすぼらしい装備品の旧市街民はそう言って、ルティア王子と共に来たる時のために城外へ。

「君たちが来てくれたことで帝国は変わるだろう。ありがとう、猛き勇者たちよ」

第二王子は深く頭を下げると、旧市街民たちと共に駆け出していった。

中央街では今も、背後で起きている戦いを隠すかのようにパレードや催事が派手に行われ、帝国領内は無数の思惑が入り乱れる状態になっていた。

「それでは、皇帝打倒に向かいましょう」

ツバメの言葉に、ゴクリとノドを鳴らしながらうなずくまもり。

メイも「おーっ」と拳を上げる。

しかしレンは一人、首を傾げていた。

「どうしたのレンちゃん?」

「いえ、ここまでの流れに『行けるけど行かなかった場所』ってあった?」

「なかったと思いますが……」

普通のRPGでもマップは埋めたい派のレン、ある程度確認しておきたい派のツバメは、それなりに周りを見ながら『行ってない場所』には目を向けている。

今回『道すがら』でそういう場所はなかったはずだ。

「だとするとこの『鍵』、どこに使うのかしら」

取り出したのは、狼たちと遊んだミッションで手に入れた鍵。

「もしこの広い城の全体から探せって話なら、鍵の合う場所を探すのは大変よね。皇帝のところに行く前に、兵士やプレイヤー兵と戦うのは浪費にもなるし」

とはいえRPGあるあるとして、『その場所に変化が起きると取れなくなる』アイテムの可能性もある。

見つけるのに手間取りそうな分、良いものがありそうな帝国マップということを考えると、余計に放っておけない。

探さずに後回しというのは、正直怖い。

「おい! お前たちそこで何をしている!」

こうしている間にも、聞こえてくる兵士たちの声。

やって来るのは、上級兵の中でも装備が整った一団だ。

「【加速】!」

ツバメが先行し、攻撃に入ろうとすると剣士が持ち出す盾。

これが通常防御だと気づいたツバメは、戦い方を変更。

「【紫電】」

「ぐああっ!?」

電流で動きを止め、真正面から二連撃。

敵を正面から攻撃することで、後衛からの魔法攻撃を受けないよう工夫し、ヒザを曲げる。

「【跳躍】!」

「【フリーズストライク】!」

そして高く跳べば、動きを止めた剣士を氷砲弾が弾き飛ばす。

そんな中、一人遊撃する形で後衛を狙いに来ていたアサシンは狙いをまもりに。

「【猫騙し】」

突然姿が消え、次の瞬間頭上に現れるアサシン。

瞬間移動の亜種のような移動に驚くまもりだが、その跳躍はやや高い。

「【シールドバッシュ】!」

【耐久】に依存するその一撃は、衝撃波を伴う一撃。

空中では防御もできず、アサシンは弾かれ転がる。

「さすがね! 【フリーズストライク】!」

即座にレンがとどめを刺し、手をあげる。

そしてまもりのおずおずハイタッチに、笑みを浮かべた。

「【連続投擲】!」

空中にいたツバメは、そのまま【ブレード】を四連発。

この攻撃に足を止めてしまえば、それは致命的なミスとなる。

「【バンビステップ】!」

速く柔軟な足遣いで潜り込んできたメイが、槍使いを剣で叩き、放たれた三人がかりの炎弾連射を肩の傾けだけでかわす。

「いきますっ! 大きくなーれ!」

そしてメイが手にした【蒼樹の白剣】を構えたのを見て、ツバメはもう一度【跳躍】

「せーのっ! 【フルスイング】っ!」

「「「うおおおおおおおお――――っ!!」」」

猛烈な振り払いが、兵士たちをまとめて弾き飛ばす。

重装な濃灰色の鎧を着た上級兵も、そのまま土煙をあげながら転がっていく。

「貴様らそこで何をしている!」

するとこのタイミングでこちらに気づいた新たな兵士たちが、すぐさま参戦。

前衛兵士組は、すぐに駆け込んでくるが――。

「もう一回いきます! 【フルスイング】っ!!」

伸びた【蒼樹の白剣】による返す刃が、そのまま敵の第二波を弾き返した。

「【エアリアル】」

そのまま着地しまっては、返しの【フルスイング】に巻き込まれてしまう。

ツバメは二段ジャンプでタイミングをずらしにかかる。

そして、二度の跳躍をしたツバメの目が、異変を捉えた。

「あの方は……」

見覚えのある姿に、奪われる視線。

「すみません! 少し離れます!」

着地と同時に、ツバメは走り出す。

「ツバメ?」

「ツバメちゃん?」

「必ず戻ってきます! 説明もその時に! 【疾風迅雷】【加速】!」

ツバメは短く言い残して、急ぎ足で飛び出していく。

今この場所に制服でない者は、基本メイたちしかいない。

しかしツバメは、NPC帝国兵たちに追われる一人の少女に気づいた。

なぜかメイド服姿で、城内の建物の隙間を走っていくその少女。

なかなかの足の速さだが、不運なことに前からも迫る帝国兵。

前後を帝国兵に挟まれてしまう。

「きゃあ! どうしてこんなことにっ!?」

足を止め、辺りをキョロキョロと見回すメイド服少女。

「この不審者め! 建国祭の日に城内に入り込むとは……覚悟しろ!」

最前に立ち、声を荒げるのは甲冑に濃灰色のマントをまとった上級兵。

「違うんです! ここには友達と待ち合わせに来て、気が付いたらこんなところに! そもそもここは、一体どこなんですか……!?」

「言い訳は牢屋で聞いてやる! かかれーっ!!」

帝国兵士たちは武器を手に、メイド服の少女に向けて突撃。

敵は特殊装備の上級兵。

前後を挟まれた状況は、最悪以外の何物でもない。

「……もしや、迷子になっているのですか?」

この大型クエストの中にフラっと迷い込んだという少女に驚きながら、ツバメは【隠密】で姿を消した。