軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

769.意外な流れ

「いきます【加速】【リブースト】!」

「【バンビステップ】っ!」

帝国兵士長との手合わせを、見事な勝利で飾ったメイ。

直後、見知らぬ男が兵士長の財布を【スティール】で奪って逃げ出した。

すぐさま始まった追走クエストに飛び出したのはメイと、【スティール】という言葉に白目をむきかけているツバメ。

「【疾走】!」

男は道行く人を避けながら、レンガの街を駆け抜ける。

「【三段跳び】!」

途中で商店の屋根に跳びると、そこから連続ジャンプで屋上に。

「【壁走り】!」

「【モンキークライム】!」

一方二人も速度を落とすことなく、そのまま壁を蹴り上がる。

「【まきびし】!」

「「っ!?」」

屋上の上にまかれる、大量の三角刃。

「うわわわわっ! えらいこっちゃー!」

「こ、これはっ」

なかなか見ない攻撃に、ついもも上げダッシュになってしまうメイ。

それを見たツバメも、ついつい続いてしまう。

二人でスカートの裾を抑えながら、もも上げダッシュ。

「はっ!」

こうして距離を稼いだ男は、隣の商店の屋上に跳び移って。

走りながら、紙を巻いて作った花火のような『球』を取り出す。

「【煙幕玉】!」

一気に広がる煙で、文字通りに煙に巻こうという算段だ。

「いーちゃん!」

しかしこの手にはかからない。

呼び出した使い魔のいーちゃんが風を吹かせれば、煙は流れて消える。

「ありがとーっ!」

「ここですね」

「うんっ」

ここが勝負所と踏んだメイとツバメは、隣の屋上に跳び移ったところで一気に加速。

「【疾風迅雷】【加速】【加速】【リブースト】!」

「【裸足の女神】っ!」

足元に煙を上げるほどのダッシュで、一気に男への距離を詰め――。

「「っ!!」」

二人同時に男を追い越して、急ブレーキ。

ちょっと笑い合った後、あらためて先行するのはツバメ。

「【加速】! 【リブースト】!」

男は必死の回避で、つかみに来たツバメの手をかわす。

「【投擲】!」

続く【ブレード】も男は回避し、足元に突き刺さる。

だがこれは、そもそも『念のため』攻撃を当てずに捕まえたいというツバメの考えの元の『ハズシ』

そうなれば、続くのはメイだ。

「【ハイジャンプ】!」

男は長い跳躍で逃げようと、ヒザを曲げるが――。

「がおおおおおお――――っ!」

そのまま【雄たけび】によって転倒。

「つかまえたっ!」

メイは盗人の男をしっかり捕獲。すると。

「……財布は返そう」

意外にも男は、すんなりと財布を返却した。

「ずっと見ていたよ。素晴らしい敏捷性、戦闘能力。そしてこの追走能力か……大したものだ」

そして深くため息をつくと、真剣な表情を浮かべた。

「……少し話を、聞いてもらえないだろうか」

ホール仕事でのゲージ上昇は完璧、続く兵士長との手合わせもノーダメージ。

レンが言った『つながり』、そしてツバメの『攻撃を加えない』という追い詰め方は、どうやら正解だったようだ。

メイと、【スティール】合戦にならなくて安心しているツバメはうなずき合う。

「メイ!」

「メイさん……っ」

するとここに、レンとまもりも遅れてやってきた。

「あらためて話をさせてくれ。兵士長にメインじゃない武器で勝つなんて、正直驚いた」

そして男が、静かに語り出す。

「……手を、貸してくれないか?」

「貴方は何者なの?」

「俺はガルデラ帝国の凄惨な状況を覆すための……レジスタンスの一員だ」

「「レジスタンス!」」

その言葉に思わずレンとツバメが、思わず目を輝かせる。

「れじすたんす?」

メイは首と尻尾を傾げる。

「帝国中央街を中心にした裕福な区画は、どこも賑わっているだろう? だが背部にある旧市街はもう、薬の一つも手に入らない状況なんだ」

そう言って、男は息をついた。

「それどころか、食うや食わずの状況になっている者もいる。そしてそんな状況から抜け出すには……兵士になる他ない」

「兵士なら、やっていける人も多そうだけど……」

レンの言葉に、男は首を振る。

「帝国が求める兵士は、外国への武力による威圧や、よく分からない『何か』を探すための奴隷。要は使い捨ての兵士なんだ。たくさんの旧市街民が、帰らぬままになった」

思い出すのはフローリスの事。

黒仮面の者たちは『兵器』の運搬に、『雑兵』を使うと言っていたのを思い出す。

「あ、あの……その『何か』というのは……」

まもりが盾に隠れながら聞く。

「帝国の内部には怪しい動きがある。特別な部隊が動いて何かを探しているようなんだ……ただ、詳しいところまでは分からない」

これには、まもりも息を飲む。

「俺たちの目的は第二王子救出と……皇帝の打倒による帝国の平和だ」

「……これはまた、大きなクエストにぶつかったみたいね」

「まさにレジスタンスです」

「第二王子は、俺たち庶民を守るために現皇帝に歯向かい牢に入れられた。堅牢な帝国だがチャンスはある。近いうちに建国祭があってな、そこで事件を起こす形だ」

「なんだか、ドキドキしちゃうクエストだね……っ!」

メイは尻尾を震わせる。

「失われた花の都を復活したかと思ったら、今度は国をひっくり返す側なのね」

「これは、ワクワクしますね」

「……頼む、力を貸してくれ」

男は目を閉じ、深く頭を下げる。

「君たちには、救国の英雄になってもらいたい……っ!」