軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

76.ジョーズ!

突然現れたマッドシャークと、傷だらけのクジラの戦い。

白イルカを守らなくてはならないため、クジラはどうしても後手になる。

それをいいことに、マッドシャークは鋭い牙で一方的に攻め立てていく。

「やああああーっ!」

しぶきを上げ、海を駆けて行くのはメイ。

高い敏捷値による【アメンボステップ】で、一気にその距離をつめる。

「【ソードバッシュ】!」

大きく跳ね上がる水しぶき。

「あれっ?」

しかしマッドシャークはクジラへの攻撃をやめ、海中へと避難していた。

【アメンボステップ】が切れたことで、海に浸かるメイ。

この状況は『星屑』において『落水状態』となり、攻撃も防御もままならないプレイヤーにとっては危機でしかない。

マッドシャークは海中を一回転。

狙いをメイに変え、海中深くからその恐ろしい牙で飛び掛かってくる。

「うわっと!」

しかし水中を苦にしないのはメイも同じ。

真下から来た垂直の喰らい付き攻撃を、速い泳ぎでかわす。

海上へと飛び上がったマッドシャークを見て、メイも再び海上へ。

その手に再び剣を携え、【アメンボステップ】で走り出す。

「いくよー! 【ソードバッシュ】だああああー!」

着水したばかりのところを狙って、放つ一撃。

しかしマッドシャークは今回も、急な進路変更でこれをかわした。

「【フレアストライク】!」

そのヒレを狙った魔法も、マッドシャークは海中へ逃げ込むことで回避してみせる。

「これは、なかなかやっかいなモンスターね……」

「……あがってこないです」

深く海へ潜ったマッドシャーク。

おとずれる奇妙な沈黙。

「きゃあっ!」

「ッ!!」

一転してマッドシャークは、漁船に飛び掛かってきた。

猛烈な体当たりで、漁船を揺らす。

そしてその巨体を甲板に乗せると、船が大きく傾いた。

「な、なっ!?」

足場に急な角度がついたことで、自然にレンとツバメはマッドシャークの方に滑り落ちていく。

甲板を降りた先には、恐ろしい牙の並んだ大きな口が待つ。

防御力の下がった現状では、間違いなく一撃リスポーンだ。

「【紫電】!」

近くのロープをつかみ、どうにかマッドシャークを射程に収めたツバメが放つ雷光。

「【電光石火】!」

動きを止め、そこから早い一撃を叩き込む。

しかし反撃はそこまで。

マッドシャークは再び海中へと戻って行く。

「いやらしい戦い方するわね……」

「レンちゃーん! わたしも船に戻った方がいいかなー?」

「攻撃するなら今のツバメのやり方なんだろうけど、メイが船に戻るとサメはクジラを削ってイルカを狙いに行くのよね……」

しかも、クジラのHPはクエスト開始の時点で半分を割っている。

「……イルカは守れても、クジラは守れない可能性があるわ」

「ええーっ!? そんなの嫌だよー!」

クエストは『イルカの護衛』だが、クジラに関してはクエスト内ミッションだと、レンは予想する。

クジラを守るのなら、メイがサメを引き付けている状況は悪くない。

「メイが船に戻れば私たちの勝利は確定だと思うけど、イチかバチかでも……クジラも守れそうな方に賭けてみる?」

「うんっ!」

「私もその方がいいです」

「やっぱり、レンちゃんは頼りになるよー!」

うれしそうに笑うメイに、少し照れながらレンは杖を握り直す。

「本来は船を襲いに来たところを全員で叩くのが正しい勝ち方なんでしょうね。そこに魔術師と弓術師が複数いれば、クジラも守れる可能性があるってクエストなんだと思う」

「なるほど」

「でもうちはメイのパーティなんだし、セオリーなんて崩した戦い方でもいい」

「……どうするつもりですか?」

「ラフテリアのイベントでせっかくもらったスキル。このまま使わずにいるのも、もったいないでしょう?」

「もしかして……」

意外にもレンは、ツバメにウィンクして作戦を伝達。

どうやら仲間との冒険に浮かれているのは、レンも同じようだ。

一方、再び海面に飛び出してきたマッドシャークはメイに喰らい付きにいく。

「うわっとと!」

これを【アメンボステップ】でかわすメイ。

「メイ、お願いがあるの! クジラを守るために一役買ってもらえる?」

その言葉に、目を輝かせるメイ。

「もちろんだよっ! 何をすればいいのっ!?」

「釣りのエサよ」

「……えっ?」

「メイ、釣りのエサになって!」

「ええええええええ――――ッ!?」