軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

745.始まる最後の戦い

「来た……来やがったぞ!」

エンリケが、鬼気迫る叫び声をあげた。

メイたちはさっそく天幕を出て、様子をうかがう。

人気のないフローリスの街は、【劇毒】を取り去ったことでずいぶんマシになったが、まだまだ閑散としていることに変わりはない。

「なんだよ……あの数」

「前に来た四人だけじゃない。さすがに『兵器』の搬送は、【転移宝珠】だけじゃどうにもならないってことみたいね」

そこに迫るのは、兵士のような姿をした者たち。

軍服を思わせる濃いグレーのマントに、赤のライン。

同じく濃いグレーの西洋鎧風の兜は、目元が細く空いているのが特徴的だ。

「なんだか、すごいですね」

「……少数精鋭の組織ではなくて、一団なのね」

何よりその威容と人数、一糸乱れぬ行進と統制に驚く。

約50人ほどの小隊が5つ。

各々武器は違うようだが、統率の取れた動きと『コ』の字型の陣形。

やはり、敵パーティというより敵軍という方が正しい感じだ。

「こういう統率された兵士を相手にするのは、何気に初めてかしら」

そしてその中心には、仮面の者たちが四人。

中心にいるのは、もちろんリーダーだ。

街の中央部を抜け向かうのは、間違いなく南西にある池だろう。

「ビルダ老人は任せろ」

そう言って、老人を抱えて池とは反対の東北部の建物に避難を開始する。

「……すまない。フローリスを……この街を頼む」

「おまかせくだいさいっ!」

消え入りそうな声で言うビルダ老人にメイが元気よく向けて応え、レンとツバメも大きくうなずく。

まもりも静かに目を閉じ深呼吸。

街の中央部。

天幕の前で待つメイたち。

「さて、あと少しってところまで来たのに、全てをムダにしてくれたお返しをしないとね」

「これ以上、同じ轍は踏みません」

「が、がんばります。大好きな花の街を取り戻すために……っ。今度こそ助けたい。またあのきれいな風景が見たい。そして、あのNPCさんの声が聞きたいです……っ」

まもりは盾をつかみ、気合を入れる。

「そうそう、大図書館に行った時に一つ面白いものを見つけてね」

「はい、本の殿堂にはスキルブックが眠っていました」

レンはツバメと共に見つけたスキルブックを、まもりに向けて差し出した。

「これ、使って」

「は、はひっ!? いいいいんですかっ!?」

「むしろ、まもり以外に使いこなせるプレイヤーはいないと思うわ」

「その通りです」

レンとツバメの言葉に、まもりはスキルブックの説明を読んでみる。

【爆火盾】:敵の物理攻撃を引き付けベストなタイミングで3連続防御を成功させると、カウンター爆破を仕掛けることができる。4連続目から1撃ごとに火力が上がる。

「ジャストガードごとに火力の上がるカウンターってことみたい。普通のプレイヤーだと三連続ガードでも精いっぱいだろうけど、まもりなら使いこなせるんじゃないかしら」

「が、がんばりますっ」

間違いなく、使いこなすのは難しいだろうそのスキル。

まもりは自信なさげに受け取る。

「こっちも準備はできてるわ」

すでにレンは眼帯と包帯を装備し、メイも【原始肉】を焼いてある。

「ワ、ワイルドでした」

「ふ、普段はカフェオレをたしなんでるんだよ……っ?」

「……?」

なぜか慌ててカフェオレアピールをしてくるメイに、不思議そうにするまもり。

するとちょうどそのタイミングで、足音までそろった不気味な一団と向かい合うことになった。

「……ほう、まだ生きていたか。存外しぶといな」

黒仮面のリーダーは、さして興味もなさそうに言う。

「どうやらまかれた毒素を浄化したようだが……やはり『兵器』は素晴らしい。この街では戦い後に毒を散布する形になったがゆえに、死傷者こそ出せなかったが……夜中にでも設置発動すれば、小国の一つや二つくらいなら難なく死の街に変えることができるだろう」

「そんなこと、させませんっ!」

メイは尻尾をふくらませながら言い返す。

しかしやはり、リーダーは意に介さない。

「『兵器』は回収する。そしてこの街はもう用済みだ。運搬の邪魔になるようなら……いや、好きに潰せ。どうせ最後は毒に沈むんだ」

「「「ハッ!!」」」

短く応える兵士たち。

その言葉に、さすがにまもりは唇を噛む。

リーダーは続けて、メイに向き直る。

「冒険者、貴様の住む街……ラフテリアだったか? 気に入ったぞ」

そして嫌らしい笑いを含んだおぞましい声で、告げる。

「あれは、沈めがいがありそうだ」

「「「ッ!!」」」

これにはレンとツバメも、反応せずにはいられない。

「言ってくれるわね」

「どうせ世界は我らのものとなるのだ。その生死を決める権利も、当然我らにある」

「そうはさせません」

レンとツバメも、自然と武器を取る。

いつもの、青い海を見渡す待ち合わせ場所を思い浮かべながら。

「―――まずはこの羽虫どもを潰せ。街も、人も、全てを蹂躙しろ」

「「「オオオオオオオオ――――ッ!!」」」」

始まる戦い。

黒仮面リーダーの宣戦布告に、兵士たちが激しく呼応した。