軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

706.勝利

「あのレベルのボスを持ち込んで……敗れたというのか……」

レイドボス戦の担当者はすでに、覚悟を決めていた。

今年のフェスのトリを飾る大型レイドボスは、倒されないまま終わる。

そして批判を受けることになるだろうと。

「メイちゃんが戦い出してから、流れが変わりましたね」

批判を受けてでも『勝てない存在』がいると知ってもらおう。

そんな覚悟は覆されることになった。

元々は設定ミスで起きたことだ。

驚きと安堵が入り混じった不思議な感覚のまま、責任者は息をつく。

「レベルの高さだけでなく、戦い方そのものが予想以上でしたね。メイちゃんたちのスキルや戦い方が皆に知られていることで、コンビネーションもすごく良かったです。各パーティとも普通に見事な連携を行ってます」

「最後の一撃はもう、地形が変わってますよ」

「そうかぁ……あの火力と範囲でも負けるのかぁ……四天王とかが倒された時の魔王って、こんな気分なのかね?」

「そうかもしれませんねぇ」

すでにHPやMPが底を突いている者も多く、ボロボロの状況と言ってもいいレイドボス挑戦者たち。

こんな裏事情はつゆ知らず、制限時間ギリギリの勝利にわき上がるのだった。

「いやーツバメちゃん、さすがのアサシンぶりでしたな」

「いえ、そんなことは」

「――まったく。死にかけてからの集中力と、火力上げで飛び回る姿はゾクゾクもの」

まさに死線を行き来するツバメの姿に、なーにゃと雨涙が感嘆の声を上げる。

「スワローさんとのコンビネーションも楽しかったです」

「いやあ、あれは見ていて最高でしたなぁ」

「――最高だった」

うなずき合うなーにゃと雨涙だが「二人のツバメがいるのが最高」というなーにゃと、「アサシンとしての戦い方が最高」という雨涙では、何気にすれ違っている。さらに。

「……やはり小さいは正義」

マリーカに至っては、ただただうらやましそうにツバメを見つめる。

「直線の動きでよくあんなに避けられるね! 何かコツはあるのー!?」

「できれば回避についても知りたい」

「ふふ、面白いことになってるわねぇ」

そんな中、まともな質問をするのは意外にもココとアトラクナイアという状況に、キュービィは楽しそうに笑うのだった。

「ボクの予想では……アレはこの世界のものではないね。闇に消されている『何か』が垣間見えた瞬間といった感じかな」

レイドボスの異常な強さに、さっそく何者かの暗躍論を唱える刹那。

「ならばルナティック、貴様はやはりこの世界は何かを隠しているというのか?」

「当然さ、そしてボクはその力を得て……ククク」

「それは聞き捨てなりませんわね。そのような野望、このわたくしが許しませんわ」

「そういうのはいいから。ねえ、それよりちょっといい?」

「なんだ? どうしたナイトメア」

「さらに使徒志望者が増えてる気がするんだけど」

三人が決めた連携の雰囲気はすさまじく、さらに『闇に魅入られる』者が増えてしまったようだ。

「やはり、先を行く者であるレン様は……新世界を作る神!」

「やめときなさいって!」

「「「私たちは必ず、使徒に入れてもらいますっ!」」」

「あらためて言っておくが、フェスが終わるまでは一切受け付けないぞ」

あらためて熱を上げる志望者たちに、リズも少し気圧されながら釘を打つ。

「それにしてもあのコンビネーション……もしや闇の使徒の分裂自体が、仕込みなのではなくて?」

「さあ、それはどうかな?」

三人の連携の自然さに、思わず疑う白夜と笑う刹那。

それを見たレンは、また深くため息をつくのだった。

「ねえねえメイちゃん、次はローチェちゃんとカフェやらない? 絶対運営にも負けないものができると思うのっ!」

「いいわねぇ。メイちゃんと一緒に働くのは絶対に楽しいわね」

「お二人は、コーヒーとかに詳しいんですかっ?」

「私は結構お店に行くわよぉ」

「ローチェちゃんはそもそもカフェ好きだからねっ!」

「やっぱり! 素敵なお姉さんと一緒のコーヒー店も夢じゃないかもっ!」

大人メイのシックなコーヒーカフェ。

レンやツバメが「メイ……なんだか大人ね」と驚く姿を想像して、思わずニヤニヤ。

野生払しょくの気配に、尻尾もふさふさ左右に揺れる。

「ならばこのアルトリッテも店頭に立とうではないか!」

「聖剣ちゃんは華があるから、間違いなく売れちゃうね! ローチェちゃんに任せておいてっ」

「楽しそうだね」

「メイのカフェはいつでも満員だからな」

「ローランちゃん、金糸雀ちゃんもいいね! 女の子のお客さんも集めちゃおう!」

「ほう、ならばこのグラムは支配人として――」

「グラムちゃんは生意気なガキ枠で」

「誰が生意気なガキ枠だーっ!」

叫ぶグラムに、笑うメイたち。

「ああっ!」

メイが目を輝かせる。

一気に上がった多くの花火が、ラフテリアの夜空を七色に照らし出した。

「わあ! 花火なんて久しぶりに見たよーっ!」

メイは尻尾をブンブンしながら、ぴょんぴょん跳び回る。

そしてそんなメイを見ながら、楽しそうにほほ笑む参加者たち。

「最高の時間だったぽよっ!」

バインバイン跳ねるスライムに、掲示板組も楽しそうに笑う。

「……そういや、迷子ちゃんはどうした?」

「さ、さっきまで一緒だったはずぽよ……」

フェスもいよいよ終幕、集まった顔ぶれはこの世界だからこそ可能となる様々な形状の花火に歓声を上げる。

こうして星屑フェスは、大好評のままエンディングを迎えるのだった。