作品タイトル不明
698.集まるトップたち
「さあ! いよいよラフテリア定例イベント特別回、メイちゃん杯も大詰めを迎えました!」
レベルキャップありのバトルロワイアルには多くのプレイヤーが参加し、盛り上がりを見せていた。
戦いは終盤戦。
敏捷性の高い中学生ほどの剣士少女と、魔法槍士青年の一騎打ち。
「【強撃】!」
「甘いっ! 【フレイムスピア】【ロールスイング】!」
「きゃあっ」
どちらもHPは残りわずか。
しかしまだ危うい動きの少女と違い、青年は他ゲームでの経験を活かして見事な立ち回りを見せる。
炎を宿した槍の大きな払いで、剣士少女を転倒させた。
「ここだ!」
迫る青年。
少女は慌てて立ち上がり、剣を掲げる。
「【バーストソード】!」
しかし慌てたためか、明らかに早すぎるスキル始動。
振り下ろした剣が、地面で爆発を起こした。
「これで終わりだーっ!」
絶体絶命。
しかし剣の振り降ろしによって生まれた爆発は、白煙を巻き起こす。
青年は思わず足を止める。
「……い、いないっ!?」
煙が晴れると、少女は姿を消していた。
慌てて付近を見渡すが、姿はない。
「ッ!!」
ラフテリアのまばゆい陽光が作る影が動き、とっさに上を向く。
そこには、建物の屋根を駆けてくる一人の少女。
「いくぞーっ!」
少女はそのまま、屋根の上から勢いよくジャンプ。
「ジャンピング【ソードバッシュ】だあああ――っ!!」
「「「うおおおおおお――――っ!!」」」
観客たちが思わず声を上げる。
放つ【ソードバッシュ】は、砂ぼこりをバッと巻き上げる程度のもの。
しかし最後の一撃を跳躍からの【ソードバッシュ】で決めるのは、かつてのメイが定例クエストで見せたものと同じ。
「うわあああああ――――っ!」
予想外の角度からの攻撃を喰らい、倒れる青年。
少女の粋な演出からの逆転勝利に、会場が盛り上がる。
「おめでとうございますっ!」
「ありがとうございます!」
「ジャンピング【ソードバッシュ】! お見事でしたーっ!」
「はいっ! メイさんに憧れて思わず使ってしまいました!」
そのまま始まる表彰式、プレゼンターはもちろんメイだ。
順位の表彰と、レンやツバメの選んだ個人的MVPに賞品が贈られて、『メイちゃん杯』は無事終了。
また一つ、メイたちはフェスのイベントを大きく盛り上げた。
「この後メイは、インタビューを受ける仕事があるのよね」
「うんっ」
「時間的にはちょうどといった感じですね。大型レイドの現場で待ち合わせしましょうか」
「りょうかいですっ」
「いよいよ、最後のクエストになるのね」
「そうですね」
「うんっ、今から楽しみだよ! めいっぱい楽しもうねっ!」
そう言い残して、北部草原のステージへと向かうメイ。
楽しかったフェスの最後は、大型レイドで締める。
三人はここで再び約束を確認し、手を振り合いながら分かれた。
◆
「やはり来たか、ナイトメア」
「人違いです」
両腕を組み、陽光と海の街に似合わない黒の重鎧を着こんで静かに待っていたのは、黒神リズ・レクイエム。
「――メイ殿は?」
「今はフェスのお仕事で、インタビューを受けています」
黒笠の忍者、鳴花雨涙の問いにツバメが応える。
そしてそんな雨涙を、『志望者たち』が見つめているという状況だ。
今回も見事に雨涙が『フェスに参加する』ともらしてしまったことで、集まってきた志望者たち。
このつかず離れずの距離感は、リズが「フェス中は新規の応募はしない」と言ったことで生まれた状況だ。
「最近のリズ氏は、何やら大変そうですなぁ」
「本当ねぇ」
そこにやって来たのは、なーにゃとシオール。
「星屑無双の話を聞いて、もしかしてと思ったのだよー」
「参加して正解だったわねぇ、今度は一緒に戦えるのかしらぁ」
シオールは、その柔らかな雰囲気でほほ笑んだ。
一方ツバメは、自分によく似たなーにゃのドールとにらめっこを始める。
ツバメが右手を上げれば右手、左手を上げれば左手を上げるドール。
変なポーズを取れば、ドールもそれに応える。
「最高ですなぁ……まとめてテイクアウトしたくなります」
「二人とも可愛くて、癒されるわねぇ」
「可愛さだったらローチェも負けてないんだけど!」
子供のようななーにゃが、小柄なツバメに興奮する姿に感嘆の息をつくシオール。
それにちょっと嫉妬して、頬をあざとくふくらませるローチェという図は、なかなかにディープだ。
「ちょっとー! なーにゃもそう思うでしょう!?」
「いやー、もちろんローチェさんも可愛いのですが、やはり計算のない天然物が良いのですな」
「なあーっ!?」
なーにゃの言葉に、ローチェは頭を抱える。
「ごきげんよぅ」
「「「ッ!?」」」
そんなレンやツバメたちの集まりに、ドラゴンに乗ってやって来たのは七新星のキュービィとココ。
そしてメイちゃんカフェで一緒になった、アトラクナイアの三人だ。
「なんだか楽しそうだから来ちゃったのぉん」
「混ぜてーっ!」
「この強力メンバーでの戦い。間違えて攻撃でもされたら最高……」
「ほう、七新星とやらか。その手並み、拝見させてもらうぞ」
「――従魔使いの強者、興味がある」
「あらぁん、光栄ねぇん」
余裕を感じさせるキュービィたちに、目を付けたのはリズ。
雨涙もトリッキーなキュービィの戦い方に、興味があるようだ。
「……お、おいおいこれ、とんでもないことになるんじゃないか?」
「こんなにトップたちが集まることって、なかなかないぞ」
かつてないほどに集まったトッププレイヤーの数に、ざわつき出す参加者たち。
こうなれば当然、各トップの持つ凄まじいスキルや武器が、その威力を次々に発揮することになるだろう。
「おや、どうやらおそろいのようだね」
「これは楽しくなりそうですわ」
さらにそこへやって来た、刹那と白夜。
使徒たちの中にだけ、不思議な緊張感が走り出す。
「おおおおっ! ヤバい……期待が止まんねえっ!」
「早くレイド始まれーっ! 最後だっていうのにワクワクしてきたっ!」
かつてない豪華なメンバーが集まったレイドボス戦。
「これは楽しいことになりそうだな!」
「……めずらしい顔ぶれ」
「ふん。何人集まろうが、主役はこの神槍だ」
「楽しくなってきたね」
「どんな戦いになんだろうな」
すでにアルトリッテやグラムたちは、近くの日陰で一休み中。
星屑フェス最後の大型イベントが、いよいよ幕を開ける。