軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

690.サバイバルレースです!

「ありがとうございましたっ!」

ケットシーを手に入れた猫好き少女キティラは、嬉しそうにほほ笑む。

「これであとは、あのお宝を目指すのみですっ!」

「次は何を探すの?」

「はい! 希少なレア景品【レプリカ猫耳】ですっ! こうしてメイさんに出会えた今、きっと良い波が来ているはずっ!」

キティラはそう言って気合を入れると、メイたちに大きく頭を下げて駆け出した。

どうやら、メイちゃん喫茶にも応募していたようだ。

「あっ、そういえば」

「どうしたの?」

「わたしの名前を使ったアトラクションクエストもあるって、話を聞いたんだ」

「どこにあるのですか?」

「向こうだね! メインステージの西側だったはず!」

さっそく見に行ってみるメイたち。

するとそこには、一部屋サイズの密林を看板にしたアトラクションコーナーがあった。

「ここは何をするんだ?」

プレイヤーがたずねると、運営の担当者は元気に応える。

「はい! このために作った地獄のごときマップで、HPが切れても終わり、一撃即死もありのサバイバルレースが行われます!」

「さばいばるれーす?」

「気になるわね」

「各地点を通過順にポイントが付与されるという簡単なシステム。生きて最後までたどり着ければ、多くのポイントが付きます! 舞台は最恐の密林。その名も『メイちゃん大ジャングル』です!」

「ええええええ――――っ!?」

まさかの命名に、驚くメイ。

どうやらメイの名を冠したアトラクションとは、密林が舞台のサバイバルレースのことのようだ。

気軽に了解したものの、まさかこうくるとは思わなかった。

「ルートは視界にガイドとして現れます。もしルート外へ出てしまった場合はすぐに戻ってください。このジャングル、道を外して生き延びられるようには作られておりません!」

説明を受けたプレイヤーたちは、一部屋サイズの密林に足を踏み入れる。

すると一瞬で、特別ステージに送られた。

「すごーい……!」

「これはなかなか面白い趣向ね」

『メイちゃん大ジャングル』にたどり着いた参加者たちは、その大きさに感嘆する。

深い密林には巨大な川があり、切り立ったテーブルマウンテンのようなものもある。

聞こえてくるたくさんの動物の声は、メイたちが最初に参加したジャングルイベントを思い出させる。

「これは到着順でポイントの変わる『競争』でもあります。よって邪魔や妨害やもあり。皆さん、準備はよろしいですか?」

息を飲む参加者たち。

運営担当者が、そっと右手を掲げる。

「それではサバイバルレース……スタートです!」

その手から放たれた炎球の炸裂が合図。

「「「行くぞぉぉぉぉ!」」」

付近に注意しながらも、参加者たちは勢いよく走り出す。

密林を進んで行くと、最初に現れたのは大きな池だった。

見るからに深い池の水面には、まるで足場に使えとばかりに岩が顔を出している。

「へっ、俺の跳躍スキルならこのくらい余裕だぜ! 一発で跳び越えてやる! 【ブーストダッシュ】【ロングジャンプ】!」

青年は高速移動で助走を付け、そのまま長い跳躍で一気に池を跳び越えていく。

「悪いが先に行かせてもらうぜ! 1位通過でポイントはいただきだ!」

そして見事な跳躍は、池の真ん中を越えたあたりで――。

「う、うわああああああ――――っ!!」

水中から飛び出してきた巨大魚に、一口で飲まれて消えた。

「「「…………」」」

それを見た参加者たちは、大慌てで跳躍や飛行の使用を断念。

石の足場を跳んでいく。

足場ごと喰われるということはなく、先頭集団が競争を始めたところで――。

「うおおおおッ!?」

突然足場が沈み、飛沫をあげて池に落ちたプレイヤーを再び巨大魚が飲み込んだ。

ダミー足場。

こうなってしまうと、これまでスムーズだった進行が突然遅くなる。

安全な足場を通るには、誰かが踏んだもの確認して向かうのがいいからだ。

「お前先いけよ!」

「いやだよ!」

「押すな押すな! ギャアアアアアア――――ッ!!」

始まる争い。

するとその直後、足場待ちをしていたプレイヤーの背後に迫る影。

「「う、うおおおおおお――――っ!?」」

木々の間から出て来た巨大ヘビに喰われて、二人同時に消えた。

「い、いいい行くぞ! このままここにいたら、チャンスもないまま喰われちまう!」

「俺は右側の石を選ぶぜ! うああああ――――っ!」

「私は左で!」

「……邪魔、【ファイアボール】」

「ッ!? きゃああああ――――っ!」

足場を渡る最中の攻撃魔法にバランスを崩し、池に落ちれば即座に巨大魚がやってくる。

早くも始まった地獄絵図。

四匹の巨大魚が、容赦なくプレイヤーを吸い込んでいく。

「大変なことになってきましたね」

「やっぱり飛行と長距離跳躍の類は、認めてない感じみたいね……でも」

「何か良い案を思いついたの?」

「巨大魚の数は4。罠ありの足場を跳び越えていくよりはいいかも。型破りにはなるけど、久しぶりの『釣り』はどう?」

「いいと思いますっ!」

「【加速】【リブースト】」

レンの提案を受け、ツバメが先行する。

助走を付け、池のふちで思いっきり踏み切った。

「【跳躍】!」

そのまま宙を行き、天辺に到達したところで飛び掛かってくる巨大魚。

「きました! 【エアリアル】!」

これを見事な二段ジャンプで越えたツバメだが、新たな巨大魚が空中のツバメ目がけて飛び上がる。

「【アメンボステップ】!」

この時すでに水面を駆け出していたメイも、足元の魚影に気がついた。

「【ラビットジャンプ】!」

水中からの喰らいつきを、高い跳躍一つでかわすメイ。

この瞬間、空中に三匹の巨大魚を釣り上げることに成功。

「……いける!」

巨大魚が空中に三匹、階段状に並んだの見てレンは杖を掲げる。

「【ペネトレーション】【フレアバースト】!」

狙いをつけ、30度の角度で放つ爆炎は三匹の巨大魚を突き抜け炸裂。

猛烈な火炎を天へと噴き上げた。

吹き飛ばされ、水上に叩きつけられた巨大魚。

「「「ッ!?」」」

そのとんでもない光景に、参加者たちは目を奪われる。

「だが……っ!」

降り際のメイに、四匹目の巨大魚が飛び掛かる。

そして空中のメイに、その対応は難しい。

そのまま最後の巨大魚が、メイに喰らいついたところで――。

「高速【フリーズストライク】!」

続けざまに放った氷砲弾が直撃し、四匹目の巨大魚も弾き飛ばしてみせた。

「レンちゃん完璧だね!」

「お見事です」

「メイの腰から下はもう巨大魚の口の中だったし、ギリギリだったけどね。それじゃいきましょうか! 【低空高速飛行】!」

「りょうかいですっ! 【アメンボステップ】!」

四匹の巨大魚が復活して戻る前にレンは飛び、メイはツバメを抱えて水面を走る。

こうして三人は、難なく反対岸へ。

「……ど、退け退け退けぇぇぇぇ――――っ!!」

「【アクセステップ】!」

「行かせるか!【ウィンドストライク】!」

「「「うおおおおーっ!?」」」

するとそれを見た参加者たちも、この好機を逃すものかと一斉に走り出す。

剣に魔法に、再び荒れ始める容赦なき生き残りレース。

「……全く、見苦しいですわね」

そこに現れたのは光の使徒を名乗る少女、九条院白夜。

「さてこのレース、どうなることやら」

そう言って余裕の笑みでレイピアを取ると、池に向かって駆け出した。

「【エンジェライズ】!」

その背に小さな天使の翼を速し、速度を上昇。

「【跳躍】! 【ライトニングスラスト】――――っ!!」

加速からの跳躍を助走にして距離を稼ぎつつ、高速移動刺突の【ライトニングスラスト】へ。

飛行刺突で池を跳び越え、メイたちを追いかけるのだった。