軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

686.挑戦します!

賑わう『宝箱クジ』の店舗前。

豪運を見せつけるつもりでやってきた成金青年の10連宝箱ガチャは、見事に全ハズシ。

白目をむく金鎧青年とツバメに、皆盛り上がっていた。

「私たちも……やってみる?」

「楽しそうっ!」

そんな中、レンのつぶやきにメイが即座に応える。

この宝箱から出てくる物は、クエスト専用アイテムなどをのぞく武器や防具、装飾品やスキルブックなど多岐にわたる。

しかし単なるドロップアイテムも含まれるため、基本的にはハズレの可能性の方がとにかく高い。

「とても楽しそうです。お祭りならではですね」

「うんうんっ、お祭りと言ったらクジだよね!」

「はい、私の分はメイさんが選んでください。そしてメイさんが開けて、メイさんが所有してください」

「それもうメイが二つ開けるだけじゃない?」

「『世界』にはその宝箱が『私のもの』ということを、隠して遊びましょう」

「ど、どうしてそこまで……」

「それが無駄を出さない、正しいやり方なのです……」

いまだ白目をむいている成金青年も「絶対その方がいい」と、こくこくうなずく。

「普段ドロップの売買はマーちゃんにお願いしてることもあって、手持ちに余裕あるから大丈夫よ。とにかく楽しみましょう」

「……そ、そういうことでしたら。まだ今回は良いことポイントがたまっていませんが……」

善行を積むことで運勢をよくするというシステムが、今回はまだ足りてないことを悔しがりながらうなずくツバメ。

「おい! 今度はメイちゃんたちが挑戦するってよ!」

「これは楽しみだな!」

そうなれば当然、観客たちも期待の目を寄せる。

「宝箱一つ、おねがいしますっ!」

さっそくメイが店主に声をかける。

金額はちょっとレアな装備品ほどの価格で、それなりに勇気がいる。

見事に飾り付けられた宝箱を受け取ったメイは、店内に自動補充される山の中から、一つ選んで抱きかかえる。

「これにしましたっ!」

店の前に出て来たところで石畳の上に置き、「よし!」と息をつく。

そして高額の宝箱クジに、メイが手を伸ばす。

思わずノドを鳴らす観客たち。

「いいものがでますようにっ」

宝箱を開封した瞬間、もれだす光。

出て来たのはなんと、一冊のスキルブック。

【尾撃】:尻尾で突いたり叩いたりできる。威力は低いが可愛い。【腕力】が高ければ絡ませてぶら下がることも可能。

「ふふ、メイに似合う面白そうなアイテムじゃない。ていうか……メイ以外に当たってもほとんど意味のないスキルね」

「それっ! それそれそれっ!」

メイはさっそく尻尾を振り振り。

尻尾の先で突くのはもちろん、払うこともできる。

それはドラゴンが尾で攻撃する際の動きに、よく似ている。

尾でのぶら下がりなんかは、使ったら面白そうだ。

「それじゃあ次は私ね……よし、この宝箱にするわ」

レンは奥にあるものを引っ張り出す形で取り出し、店外へ。

そのまま宝箱に手を駆けると、一つ息をついてから開封。

あふれる光が落ち着き、出てきたものは――。

【エコーの宝珠】:やまびこのように響くスキルによって最速の二連発使用が可能になる消費アイテム。最上位スキルでの使用も可能。

「へえ、いいじゃない!」

「「「おお……っ」」」

レンのような高火力スキルを持つ魔導士が使えば、大きな効果を持ちそうなアイテムに、もれる感嘆の声。

「二人ともいい物を引いた感じだな」

「宝珠は売れば元が取れるどころか、少し儲かるくらいだぞ」

「どうせなら大当たりか大外れが良かったけど、使い道が思いつくものが出たのは十分当たりと言えるわね」

メイとレン、どちらもなかなかの当りを引いて賑わう店舗前。

最後はもちろんツバメだ。

「それでは、いってきます」

店内に入り、宝箱をしっかりと選定。

「これにしましょう」

あえてそう分かりやすく口にして、取り出す。

そしてそれを持って、店を出る瞬間――。

「【加速】【リブースト】!」

手にしていた宝箱を即座に戻し、その隣にあった宝箱に変更して店を出る。

「これで『世界』は私が最初に取った方の宝箱に、ハズレを入れたはずですっ! しかしそれを即座に交換することで、フェイントに引っかかります! こうすればこちらの宝箱には、必然的に――!」

世界を騙すための謎理論を展開しながら、ツバメは即座に宝箱を開く。

【誘爆刃】:消耗武器3枚セット。敵に刺した状態で火炎系、爆破系スキルを当てると誘爆し威力を大きく上げる。その火力は刺さっている枚数に比例する

「いいアイテムじゃない!」

「「「おおーっ!」」」

観客たちからも、歓声が上がる。

ツバメの速い攻撃を利用して、敵に高いダメージを与えられるアイテムと考えていいだろう。

どうやら本当に、三人そろって良い引きを見せたようだ。しかし。

「ツバメちゃん……?」

「ツバメ?」

なぜか真顔で汗をぬぐうツバメに、思わず声をかける二人。

「どうしたのー?」

「ま、まさか本当に良い物を引いてしまうとは……っ! こんな良いアイテムを引いてしまったら運勢の前借りが発生して、以降のスティールが地獄になる可能性が……っ! い、今からでも宝箱を開けたら爆発して大ダメージみたいな形になりませんでしょうか!? 煙を吐きながら髪が爆発みたいなオチでも構いません!」

「大丈夫よ! 何も特別な大当たりってほどでもないんだから! ていうかもう当たりを引いてもハズレを引いても落ち着かないようになってるの!?」

もはや不運でないと今後が心配になってしまうツバメに、「大丈夫だから」と肩を揺さぶるレン。

「アサシンちゃんって、面白い子なんだなぁ」

いつもは最高の回避からクールに斬撃を決める、アサシン少女。

その意外なビビり方に観客たちはまた、楽しく笑うのだった。