軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

680.夕食タイムです!

「すごーい!」

「クリスマスパーティのようです……っ」

「まさか、フライドチキンが自家製とは思わなかったわ……!」

「さつきは元気な子だけど、こういうことってなかったから張り切っちゃったの」

うれしそうにする母やよい。

テーブルにはチキンだけでなく、ピザやポテトもあり、サラダにもゆで卵やローストビーフが乗っていて色どり豊か。

高校生が楽しく集まってパーティというコンセプトなのだろう。

とにかくテーブルが鮮やかだ。

そして実は結構ジャンク系の食べ物片手に漫画を読むといったことも好きな可憐には、結構うれしいメニュー。

ついつい目移りしてしまう。

「ていうかこれ……ピザも焼いているんですね」

どれも一見買ってくれば早いような物も自家製な辺り、やよいもかなり気合が入っていたようだ。

「「「いただきます!」」」

さっそくテーブルに着き、あれやこれやと食べ始める三人。

「つばめちゃんっ、これわたしの好きなやつなんだ。はい……あーん!」

「ッ!?」

衝撃の展開に、ビクリと身体を震わせるつばめ。

恥ずかしさとうれしさの混ざった不思議な感覚のまま、そっと口を開く。

「おいしいでしょー?」

「は、はいっ!」

「多分今のつばめは、粘土でも美味しく感じるわよ」

それ見て可憐は、くすくすと笑う。

「こういうパーティの感じもいいね」

「本当ね」

「はい!」

そんな中、さっそく両手にチキンではしゃぐさつきを見て「これは野生感……」と心の中に留めておく可憐とつばめ。

「本当に、どこに行っても歓迎してもらえるわねぇ」

「これまでの生活が、非常に大きな前提になっているように思います」

どこの家も『ついに娘がまともな友だちを連れて来た』ことを、これでもかと歓迎してくれる。

自分の時のことを思い出して、ちょっと恥ずかしくなる可憐。

やはり黒づくめでなく制服で来て正解だったと、自分の服装に苦笑い。

「そうそう、可憐ちゃんとつばめちゃんのご家族からも、連絡をもらったのよ」

「「…………っ」」

そんなやよいの言葉に、不穏な気配を感じる二人。

「ど、どのような形でしょうか……?」

「まずつばめちゃんのご両親が直接来てくれて、色々と話を聞かせてもらったの」

それだけでもなかなか過保護な感じだが、つばめの予感はこれだけにとどまらない。

「他にも……ありませんでしたか?」

「その後お兄さんが来て、豪華なお土産を置いていってくれたの」

「やはり」

「あと……」

「あと?」

「すごく高そうなカメラを置いていったわ」

「や、やはりそうでしたか……っ!」

見れば夕食後用の有名店スイーツと共に、野鳥でも撮るのかというレベルのいかついカメラが置かれていた。

「せっかくだし一枚撮りましょうか。はいチーズ」

それはそれとして、ノリの悪くない母やよい。

熱心が過ぎる説明をつばめ兄から受けたこともあり、カメラをしっかり構える。

「チーズ!」

さつきは自然とつばめの手を引き、可憐のもとへ。

チキン両手のさつきと、すまし笑いの可憐、そして兄の行動にちょっと引きつっているつばめという一枚をしっかり収める。

三人の特徴がよく出た一枚は、つばめ兄が狂喜乱舞すること請け合いだ。

「うちは大丈夫でしたか?」

つばめのため息ぶりに、ちょっと怖くなる可憐。

「可憐ちゃんのおうちからは、儀式がどうとか言い出したらすぐに連絡して欲しいって」

「やっぱり……!」

「あと、生贄には鳥ささみで十分ですって妹さんが」

「香菜まで……っ! 恥ずかしいわねもうっ!」

「どういうことなのかしら」と首を傾げるやよいに、可憐は顔を赤くしながら頭を抱える。

「あんまりさつきがヘッドギアばかりかぶってるから大丈夫かなと思ったけど……今は毎日楽しそうで良かった」

そう言ってやよいは、これまでのことを思い出す。

「海に行ってもパラソルの下でヘッドギア。学園祭を見に行っても休憩時間に休憩室でヘッドギア。修学旅行の撮影写真で、京都の赤い傘の下で虚無僧みたいになってるさつきの写真を見た時は驚いたものねぇ……」

「わあーっ! その話はやめてー!」

古都でヘッドギアをかぶり、サイバー虚無僧になっていたさつきの写真を思い出して、さすがに笑うやよい。

「大丈夫ですよ。『自分には闇の力があるから、魔法陣を描いて鶏肉を捧げて夜な夜な悪魔を召喚しよう』としていないだけでも、素晴らしいです」

「村を守るためという熱い正義感ゆえですからね」

白目をむく可憐と、大きくうなずくつばめ。

「まるで大きな使命に燃えてるみたいな感じだったけど、最近はとにかく毎日楽しそうだから」

「うんっ! すっごく楽しいですっ!」

とにかく元気にうなずくさつきの姿に、やよいもうれしそうだ。

そんな二人を見て、可憐とつばめも笑い合う。

「そう言えばこの前の迷い犬、飼い主さんが見つかったのよ」

「よかったー!」

「あの子、さつきに懐いてたものね。誰にも捕まえられなかったのに、さつきが呼んだらすぐに来て」

「「…………現実でも」」

「わーっ! たまたまですっ!」

捕まえようと追いかければ、猛スピードで逃げてしまう迷い犬。

さつきの「おいでー」に本当に寄ってくる事件に、いよいよ感じる野生の気配。

「ちがうんですーっ!」

両手をブンブン振るさつきに、笑う可憐とつばめ。

「そうそう。お父さんが仕事で忙しいらしくて、明日は少し手伝いに行ってくるから。家の事よろしくね」

「りょうかいですっ!」

どうやら明日は、自分たちで色々とすることになりそうだ。

しかしそれはそれで楽しいだろうと、さつきは元気にチキンにかぶりつきながら応えたのだった。