軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

644.選択肢、再び

大罪犯『Ⅷ』との戦いの中、やって来たのは猟犬たち。

『Ⅷ』を跳び越え、手にした警棒で攻撃を仕掛けてくる。

連携のような形で繰り出す攻撃を、前衛のメイとツバメがかわす。

するとその隙を突き、『Ⅷ』は前進。

レンから奪っていた【ヘクセンナハト】を振り下ろしにきた。

「ッ!!」

これをレンは、ネルの安全を確認しながら横への動きで回避する。

その隣を駆け抜けていくのは猟犬。

「しまった!」

これまで逃げの一手だったコゼットに、ついに狙いが向けられた。

「ぐあああああっ!!」

警棒による電撃を喰らったコゼットは、その場にヒザを突く。

「マズっ!」

大罪犯に加えて猟犬が迫り来るという最悪な状況の中、猟犬はコゼットを抱えて走り出した。

レンはわずかに悩む。

守るべき対象であるネルに対して『置いていくべき』と躊躇なく言い放った者を、危険を冒して取り戻すべきかどうか。

「いきますっ! 【裸足の女神】!」

しかしメイは、迷うことなく走り出した。

素晴らしい加速で、一気に後ろから猟犬たちを抜き去り振り返る。

「がおおおおおお――――っ!!」

放つ【雄たけび】で、三人の猟犬の足を止める。

「……仮に後で騙されたとしても、ここで見捨てて進むのは『メイのパーティ』らしくはないわね……!」

メイが離れたことで、『Ⅷ』の狙いはネルに向かう。

「【フリーズボルト】!」

これを強引に、自分に引き付ける。

『Ⅷ』の振り下ろしを横移動で回避し、続く大きな振り払いもしっかり引き付け身体をそらす。

「はあっ!」

そのまま魔力剣で斬り付け、1割弱のダメージを奪い取った。

「【ガイアバスター】!」

「やっぱり【ヘクセンナハト】を取ってしまったことが、マイナスに働いてるわね!」

そのパワーと勢いが武器の『Ⅷ』だが、杖の振り回しは軌道も読みやすく回避もそう難しくはない。

噴き出す溶岩の一撃も、すでに知っている攻撃だ。

【ヘクセンナハト】によって広くなった攻撃範囲から大急ぎで駆け出し、ギリギリのところでかわす。

「高速【連続魔法】【誘導弾】【フリーズボルト】!」

そして駆け抜けた直後に、振り返りと同時に放つ氷弾。

狙いが大雑把になった分は【誘導弾】が補正してくれるという狙いの通り、氷弾は立て続けに直撃。

後衛が見ても、前衛が見ても見事としか言えないほどの戦いぶり。

メイが離れたことによって生まれた隙を、レンは完璧にフォローしてみせた。

「ッ!!」

しかし体勢を崩した『Ⅷ』の左右を抜け、頭上を跳び越えてくる新たな猟犬の数はなんと五体。

迅速な『拘束』を得意とする敵が、五体もいるというのは恐ろしい。

しかもその狙いは、ネルだ。

常に『Ⅷ』を気にしていたレンに、これを追うことはできない。

猟犬たちは一斉に飛び上がり、警棒を振りあげた。

「っ!」

この数を相手にしては、ネルの防御スキルで防ぎ切ることは不可能だ。

電流をまとった警棒が、ネルに降り下ろされそうになったその瞬間。

「――――【加速】【リブースト】」

その前に疾風の様に割り込んで来たのはツバメ。

「【瞬剣殺】」

「「「うおおおおおお――――っ!?」」」

ネルを背負うような形で放たれた空刃が、まとめて猟犬を叩き斬る。

「ツバメ! 助かったわ!」

「敵がまとまっていたのが良かったです! このスキル、味方を守るのにも使えます!」

メイがコゼットを追うことで生まれた穴をレンが埋め、それによって突かれた隙をツバメが救う。

とっさにもかかわらず、見事な連携。

そしてこのツバメの一撃は、戦いの流れを変えるものになる。

猟犬がいなくなれば、ネルとコゼットの防衛に集中する必要がなくなる。

新たな猟犬が来る前に、一気に勝負をかけるべき状況だ。

「【裸足の女神】!」

コゼットを連れ去ろうとした三体の猟犬たちを打倒したメイは、猛スピードで駆け出した。

のんびり戦っていると、思わぬ増援が来る。

ジャングルで染み付いた感覚が、背中を押す。

超加速で駆け抜けたメイは、地面に刺さったままの【大地の石斧】を回収。

「【渾身大転回撃】ィィィィ!!」

「【ラビットジャンプ】【アクロバット】!」

『Ⅷ』の豪快な振り払いを跳躍で回避、そのまま空中で【大地の石斧】を掲げる。

「【フルスイング】だあああ――ッ!!」

大振りなスキル攻撃をかわされた『Ⅷ』は、防御もできず直撃を受ける。

床に上半身をめり込ませるほどの【腕力】で放たれた一撃は、HPゲージを消し飛ばした。

「チッ、俺が足手まといになっちまうなんてな……」

助けられたコゼットは、悔しそうに唇を噛む。

看守に猟犬、大罪犯が同時に追ってきているという厳しい状況。

【ヘクセンナハト】も無事回収し、うなずき合った三人は騒然とする大監獄西棟を駆け抜けていく。

監獄からの脱出はもう、目の前だ。