軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

626.今度は工事のお仕事です!

「穴を掘れって、食堂からスプーンでも持ってこいってことかしら?」

怪しい囚人コゼットに持ち掛けられた提案は、脱獄への同行。

そして『牢を出るための穴』『睡眠薬』『マップ』の三つをそろえることが、脱獄の必須条件だという。

「みんなそろってご飯の時間もあるのかな?」

「それはさすがにないんじゃないかしら……監獄特産グルメとかもないでしょうし」

「シマシマ模様で並んで夕食を取る光景は、少し面白そうです」

牢に戻ってきたメイたちはまた、三人並んでクエストの流れを確認する。

なんとなくツバメにならって正座するメイ。

するとまた、看守が牢の前にやって来た。

「お前たちに、任せたい仕事がある」

「今度は私たちを指名しての作業なの?」

看守はメイたちを牢から出すと、その場で新たな作業の説明を始める。

「大監獄で使用している水は、地下からくみ上げたものだ。その地下施設へと向かう途中の石積みが崩れてしまっていてな。修復をしてくるように。【腕力】だけでなく【技量】も求められる仕事だが、お前たちなら可能だと判断した」

「ここまでの仕事ぶりによる派生クエストってところかしらね」

「この作業には、お前も同行するように」

そう言って看守は近くの牢から、ネルを連れ出した。

「錬金術師ならブロックの生成も可能だろう。現地へ着いたら付近の土くれを錬金でブロックに変えて組んでいけばいい」

看守は大監獄北東部に当たる用水棟へと続く廊下を進み、胸元から折りたたんだ大判紙を取り出した。

「これを持っていけ」

「いってきます!」

こうして道順を記した地図を持たされたメイたちは、用水棟の階段を降りていく。

地下は空洞になっていて、一部を石積みで舗装した半洞窟といった風情だ。

揺れる魔法石灯の輝きを追って降りていくと、聞こえてくる地下水脈の音。

「誰かと思えば錬金術師か。くくく」

「っ!!」

その途中、待ち伏せでもしていたかのように現れたのは看守長。

ネルが思わず身体を震わせる。

「これは偶然だな罪人ども。ここはオレ様の可愛いペットたちの遊び場でなぁ……作業中喰われちまわないように、せいぜい気を付けるんだなぁ」

看守長は「くっくっく」と、邪な笑みを残して去っていく。

「ネルさんは看守長に狙われているのですね」

「不当な要求を断ったら、投獄させて嫌がらせ……分かりやすい悪役ね」

「大丈夫ですっ! わたしたちが一緒だからね!」

そう言って先頭を行くメイ。

やがて崩れた石壁が見えてきたところで現れたのは、4頭のヘルハウンド。

こちらに気づくや否や、猛烈に吠えながら迫ってくる。

「この状況でのモンスターはやっかいですね」

装備品は【囚人服】のみでアイテムも【マップ】のみ。

さらにネルは、突然のことに怯えている。

ここでどう戦うかを即座に考えられるか否かが、このクエスト最初の難関だ。

「【バンビステップ】!」

まずはメイが、速い動きで魔獣たちを翻弄。

「【加速】」

四頭の魔獣をしっかり引き付けたところに、ツバメが跳び込んでいく。

「【ラビットジャンプ】!」

「【紫電】!」

メイのジャンプを待ち放つ一撃。

広がる雷光は、近接する四頭の魔獣を感電させ動きを止めた。

「【跳躍】」

監獄でも魔法が使えるというポイントには、皆気づいている。

遅れてツバメも跳躍したところで、【低空高速飛行】でレンが距離を詰めていく。

「【フリーズバースト】!」

そのまま氷嵐でダメージを与えて打倒。

言葉を交わさずとも、誰を中心にしてどう戦うかをイメージ。

当然のようにベストな連携を編み出し、ヘルハウンドを片付けてみせた。

さらに『爆破』するタイプの魔法は、天井等を崩す可能性を考慮して避けるという判断も見事だ。

「レンちゃんナイスーっ!」

「お見事です」

着地した二人が、ハイタッチしながら笑いかける。

「でも、まだみたいね!」

4匹のヘルハウンドを打倒し安心したところで、岩陰に隠れていた1匹が飛び込んでくる。

その狙いはHPの低いネルだ。

「メイ、ツバメ、様子見しつつお願いできる?」

しかしレンは慌てず、二人に指示を出す。

「「りょうかいですっ!」」

魔獣は真っすぐにネルのもとに駆けつけ、猛然と飛び掛かる。

「きゃあっ! 【ロックシールド】!」

これに対し、ネルはスキルを発動。

展開した小さな岩の盾で、敵の攻撃を防ぎにいく。

「【加速】」

「【カンガルーキック】!」

すると次の瞬間ツバメがネルを抱えて回避行動に入り、メイは飛び掛かるヘルハウンドに真横から蹴りを決めた。

「【連続魔法】【フリーズボルト】!」

そして最後にレンが四連続の氷弾を叩き込み、無事打倒。

「あ、ありがとうございます……っ」

「いえいえー」

「二人ともありがとう。ネルは防衛対象と考えておいた方が良さそうね」

「そのようですね」

ネルが敵から狙われた際の『反応』を調べつつ、かつダメージを負わせることなく打倒する。

そんな荒業も、メイとツバメのコンビなら可能。

一つの敵襲でそんな確認まで済ませた三人が続く道を進んでいくと、そこには石積みが大きく崩れた壁があった。