作品タイトル不明
593.鳳と見知らぬ展開
シオンとファーランの戦いは、鳳住人たちが驚く結果となった。
ここで敗北するはずのシオンが勝ち、暴動も鳳国将軍たちの登場によって強制鎮圧。
「反乱者たちを確保する!」
しっかり馬にも装飾を施した、見るからに格が違う装いの三者に皆視線を奪われる。
先頭の女将軍が振り上げたのは、豪華な鉄扇。
途端に、爆風が巻き起こる。
「「「うわああああああ――――っ!!」」」
その凄まじい威力に、一斉に転倒するならず者たち。
ファーランを逃がすための暴動は、この風の攻撃一つで止められてしまった。
それでも、どうにかこの場から逃げ出そうとするファーランとならず者たち。
「逃がさん」
低く高圧的な声と共に、怒涛の勢いで特攻してきた槍使いの将軍。
愛馬と共に稲妻のような鋭さで踏み込むと、付近の武術家たちを吹き飛ばし、そのまま馬上からファーランに槍を突き付けた。
「そこまでだ。我ら鳳国将軍が、貴様をここに拘束する」
「捕えろ! 全員まとめて捕えるんだー!」
そんな将軍の言葉に続くようにして、鳳国の兵士たちが一斉に突撃。
ならず者たちを、あっという間に検挙してしまった。
「鳳の将軍たちが勢ぞろい……!?」
「なんだこの展開!? このクエスト、完全に別物だぞ!」
これまで王宮関係のクエストで、多少姿を見せる程度にしか確認されていなかった鳳国の大物たちが登場。
未知の展開とその規模の大きさに、早くも観客たちは驚き、歓喜し、興奮する。
「チッ!」
槍を突き付けられ、動けずにいるファーラン。
「このままで、終わると思うな……ッ!」
そんな怨嗟の声は届くことなく、駆けつけた王国軍兵士たちに囲まれる。
まとめて連れて行かれる、ファーランと仲間たち。
残ったならず者たちは、雲の子を散らすように逃げ出していった。
その姿をしっかり見届けた後、四人のもとに将軍たちがやって来た。
「青龍塔を狙うなど、無礼もいいところだな」
長い黒髪を一本にまとめた、長身の女性将軍。
改造した紫の着物に軽鎧をまとった姿は、どこか独特。
かすかに色気を感じさせながらも、同時に凛々しさを持った彼女は美麗な鉄扇を払うようにして畳んだ。
「所詮は賊。我が無双の槍に敵はない。今も、そしてこれからも我こそが最強だ」
荒々しく結んだ後ろ髪に、不精ヒゲ。
黒と赤の鎧をまとった大柄な男は、その鬼のような顔つきを緩めることなく言い放つ。
そんな中メイたちの前にやって来たのは、柔らかな物腰をした40歳ほどの将軍。
「ご苦労様でしたシオン衛兵長。青龍塔を守ることができたのは、貴方たちのおかげですね」
ほほ笑みを浮かべながら、シオンにそう告げた。
穏やかながらも、できる雰囲気を醸し出すその男。
スラリとした体躯をし、やや長めの髪を垂らしている。
後衛職なのか、武器も鎧もなし。
他二人の武人たる姿に比べると、戦略などに長けていそうなイメージだ。
「見事なものだな。これだけの反乱を押し止め、その中核に至る人物のもとにたどり着くとは」
女性将軍は、涼やかな目でそう言った。
「昨今街で暴れている者は気を用いた武術を使う、なかなかの手練れだと聞いていた。それが反撃の一つもできずに捉えられるとは……どうやらすでに勝負は決していたようだな」
鋭い読みで、将軍たちがたどり着くまでの展開を言い当てる。
「……ほう、この冒険者たちもなかなかの力を持っているようだ」
一方槍の将軍はそう言って、口端に笑みを浮かべる。
「私の力など大したことはありません。この冒険者たちの素晴らしい助力があってこその結果です」
「君にそこまで言わせるとは……冒険者殿も、大したものですね」
変わらぬ穏やかな笑みで、メイたちを見る将軍。
「よろしければぜひ、鳳の王宮へおいでください。シオン殿には今後の事をお話しさせていただきたいのです。そして優秀な戦士はどれだけいても足りません。冒険者の皆さんもどうぞ」
「王宮に招かれるなんて、面白くなりそうね」
「その国によって大きく雰囲気も違いますし、お城が見られるのは楽しみです」
「どんな感じなのかなーっ! ワクワクしちゃうよー!」
まだまだ続くクエストに、もちろんメイたちは即決。
「王宮に招かれるって、マジか……」
驚きに揺れる鳳住人たちだが、メイたちにしてみれば順当にクエストを進めてきただけ。
煌びやかな鳳の王宮が見られそうだと、三人楽しそうにしている。
「これ完全に話が変わってるよな? ここでプレイヤーがファーランを代わりに倒して、兵長は療養に入るはずだし」
「動けない兵長のためにクエストを受けると、逃げたファーランがもう一度大きな反乱を起こして、街の兵士たちと合戦になるっていう展開のはずが……明らかに違う」
「これまで見てきたクエストクリアは、本当のエンドじゃなかったってことなのか?」
動き出した新たな展開に、鳳のクエスト展開を知る者たちは期待を高ぶらせるのだった。