軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

557.始まる戦い

「四つの魔法陣を全て潰さないと、魔力の流入は止められないということでしたわね」

「これはチーム分けが必要ですね」

「聖女からもらった情報では、『北』『西』『東』に魔法陣。最後の一つは未確認ってことみたい。私はここから近い『北』に向かうわ。近接対応にメイも一緒にお願い」

「はいっ!」

「街中を真っ直ぐ走ればいい『東』は白夜とリズ。街を抜けて山側に入る『西』は、速い動きのできるツバメと雨涙でどうかしら」

各自の移動能力に合わせた配置に、皆がうなずく。

「そこを守ってるだろう者たちを倒して陣を消したら、最後の魔法陣を探すって感じね」

「神殿中央塔の火時計に灯っていく炎が、12個全て灯ったら魔力の充填が完了。我らの負けだ」

「りょうかいですっ! わたしたちでアルティシアを守りましょう!」

ギュッと拳を握るメイの言葉に大きくうなずき、動き出す六人。

ツバメと雨涙は、賑やかな西大通りに沿うような形で駆ける。

「【跳躍】」

「【苗木越え】」

屋根へ上がり、飛ぶように夜の街を進む二人。

その足は速く、すぐにアルティシア西部の森の前へとたどり着いた。

「あれですね」

「――魔法陣が隠されている」

暗い森の中には、わずかに開けた草原に魔法陣が鈍い赤光を輝かせていた。

普通に歩いてやって来たのでは、見つけにくい陣の配置。

メイとの行動で身に付いた木々の上を行く移動法が、発見を早くした形だ。

「おや、見つかってしまいましたか」

木陰から現れたのは、これまでメイたちを操ってきた神官ザケルド。

表と裏。二つの顔で悪魔復活のためのクエストを出していた、ある種の首謀者だ。

「ですがこの魔法陣は消させません。貴方たちには一足先にアンデッドと化していただきましょう。その際はまたたっぷり働かせてあげますよ。ふふふ、このザケルドの……下僕としてねぇ」

「そうはいきません」

「――悪しき光の者には、ここで消えてもらう」

堕ちた聖職者に立ち向かうのは、暗殺者二人。

奇妙な組み合わせの戦いが、今始まる。

「……私と悪魔の契約を邪魔した冒険者ども。ここで地獄に落ちやがれェェェェ!!」

取り出した武骨なメイスを地面に叩き付け、放つ叫び。

「【天使降臨】! 殺れェェェェ!」

集まる光の粒子が、20体もの天使をかたどる。

そして、一斉射出。

「【早駆け】」

誘導の効いた攻撃をしっかり引き付けてから、雨涙は隙間を駆け抜けていく。

「【流刃】」

攻撃速度と攻撃威力を上げ、一気にザケルドを射程圏内に収める。

「狩れ【ギロチンカット】ォォォォ!」

空から落ちてくる五連の光刃。

雨涙はここで軌道を変更し、ザケルドの右側へと駆けていく。

「【加速】【リブースト】」

五連続の光刃の最後が降りたところで、飛び込んでいくのはツバメ。

そしてメイスの届かない距離ギリギリでザケルドの左に曲がり、空振りを誘った。

「――うまい」

すかさず【早駆け】による接近からの連撃が決まり、HPを1割ほど削る。

敵の攻撃が届かない位置を駆けることで、武器を空振らせるという戦い方に感嘆する雨涙。

「【電光石火】」

「来たれ【聖盾】――ッ!!」

ツバメは振り返りと同時に、スキルを発動。

高速の斬り抜けはしかし、光の盾を生み出す防御スキルで守られた。

「【早駆け】」

この隙を突く形で雨涙は距離を詰めていくが、ザケルドは右手を大きく振り払う。

「燃え盛れ【魔女狩り】ィィィィ!」

「【苗木越え】」

「【跳躍】」

足元から円状に噴きあがる猛火を、二人そろって空中へ回避。

互いにうなずき合う。

「【連続投擲】」

ツバメはザケルドの視線が雨涙に向いていたのを確認して、【ブレード】を放つ。

「チッ」

回避のための移動をさせることで、自分たちの着地際の隙を消した。

「ここで仕掛けましょう」

「――承知」

「【加速】【リブースト】」

ツバメが『く』の時を描く高速移動で翻弄し、再び武器を振らせたところに迫る雨涙。

「――【早駆け】【遅れ咲き】」

真正面から飛び込んだ雨涙は、そのまま刀で赤い刀傷をつける。

だがすぐには『傷』を開かない。

「【アクアエッジ】【四連剣舞】」

振り返りと同時に放つ水刃をザケルドが慌てて下がって避けると、三者の間に距離ができた。

再び走り出したツバメは、真正面から迫る。

そして手にしたダガーでザケルドに斬りかかろうとしたところで、突然その身体が上下に切れ飛んだ。

「ッ!?」

まさかの事態に硬直するザケルド。

「――【封魔手裏剣】」

ツバメの【残像】を背後から突き破って現れた【封魔手裏剣】が、そのまま直撃。

「ぐあああああああ――――っ!」

解放された暴風に飛ばされたところを、あらためてツバメが追いかける。

「【天雷】【天雷】【天雷】ィィィィッ!」

それは高速連射の可能な、落雷スキル。

隙の少なさもあり、かなりやっかいな魔法だが、ツバメの速さの前には効果なし。

すでに通り過ぎた場所に、遅れて落ちるのみ。

「【疾風迅雷】【加速】【加速】【加速】!」

そのままザケルドの周りを高速で駆け回り翻弄。

いよいよその目が、ツバメを見失ったところで――。

「【早駆け】【流刃】」

駆け込んできた雨涙が、刀による連撃を叩き込む。

「ま、守れ【聖盾】ッ!」

キーン! と甲高い音が鳴り、刃が弾かれる。

3割強ほどHPを削られたところで、ようやく刃の嵐を【聖盾】での防御に成功した。

「【光神のメイス】ゥゥゥゥ――ッ!!」

あらたに取り出した派手な飾り付きのメイスを振り上げると、聖なる光が煌々と輝き攻撃範囲を大型化。

「オラァ! オラオラオラァァァァ――――ッ!!」

連続の叩きつけから振り回し、そして大きな振り払いへと続く。

これをしっかり目視して回避し、反撃を狙おうと接近したところでさらに派手に輝くメイス。

散らばる盛大な光の粒子が、その威力の大きさを物語る。

完全に、深入りしすぎた状態。

足元に広がる光の円は、その広い攻撃範囲を示している。

この状況から逃げ切るのはもう、難しい。

「消えろやァァァァァァ――――ッ!!」

回避型には、間違いなく生死にかかわる一撃。

しかも二人そろってその範囲内にいるというのは、最悪な状況だ。

……だが、この『深入り』は最初から狙いがあってのこと。

即死級の一撃が、二人を捉えるその瞬間。

「――開け」

雨涙が刀傷を開く。

「ぐあああああああ――――っ!!」

メイスから輝きが弾け消え、飛び散る血しぶきのエフェクトと共にザケルドが大きく体勢を崩した。

「【四連剣舞】」

すぐさま叩き込むダガーの四連撃。

そこへ入れ替わるように入り込んできた雨涙が、真っすぐ手を伸ばす。

「――【火遁・竜鳴砲】」

突き出された手から放つ豪炎が炸裂し、ザケルドは吹き飛ばされた。

迫る二人の暗殺者はどちらも速く、その連携も華麗。

「――さすが、力を求めるナイトメアが行動を共にするアサシン」

高揚感を覚えるほどの高速コンビネーションに、雨涙は思わず吐息をもらす。

【天使降臨】というやっかいな追尾スキルを、一度しか使えないことなど早々あり得ない。

それだけザケルドには、余裕が与えられなかったということだ。

「お見事でした。やはり火遁で締めるのは良いですね。華があります」

ちょっと満足そうにするツバメ。

速さで戦う二人の『殺し屋』相手に、ザケルドはほとんど滅多切り状態だった。

やはりアサシンタイプの二人は、人型ボスとの相性が良いようだ。

「やるじゃねえかよ……気にいらねえなァァァァ……!」

HPが半分を切ったザケルドはメイスを地面に叩きつけると、怒りの咆哮をあげる。

「やっぱお前らはさぁ、この神官様が……直々にアンデッドにしてやるよォォォォ!」