軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

548.二重クエストですか?

「すごいクエストだったねぇ……」

「思わず目を奪われてしまいました」

旧神殿で行われた、悪魔の復活をかけた戦い。

その激しさを思い出して、メイは息をつく。

「東の結界石をルナティック、西の結界石を輪廻と彼方が砕き、最後は旧神殿でぶつかったというところか」

「――大罪悪魔、恐るべし」

リズと雨涙は、強欲の大罪悪魔アモンを思い出していたようだ。

「悪魔召喚士は、ああいう形で召喚用の悪魔を手にれるのですね」

夜闇の中に現れた魔法陣から解放されたのは、伯爵級の悪魔・フールフール。

普通に考えればあの場で悪魔との戦いになるはずだが、六道彼方は【ソロモンの指輪】で自らの召喚悪魔とした。

「あの魔法陣の起動が大きな段階の一つだった。そんなところかしらね」

悪魔の復活をかけての競争、今回のクエストは暗夜教団に「してやられた」と言っていいだろう。

「最初に、確認しておかないといけないことがありますわ」

刹那の攻撃によって、使徒仲間三人を失ってしまった白夜がつぶやいた。

「そうね。正直私たちも腑に落ちていないわ」

「はい。私たちは結界を破るために動いていたようなものでした。その辺りを確認する必要があります」

『神殿ルート』の白夜たちとレクイエムたちは結界を守るために動いていたが、メイたちの受けた依頼とのズレによって、南の結界石は早々に砕けることになった。

神殿に戻ったレンたちは、そのまま神官のもとに向かう。

するとレンの姿を見つけた神官は、安堵の息をつく。

「無事でよかった……まさかこのような形になってしまうとは……」

そして、悔しそうに目を閉じる。

「魔法陣をあらためて張り直すことで、新たに長い平和を得ようと考えての依頼だったのですが……それが悪魔の復活を呼び込んでしまうなんて……皆さん、ありがとうございました。これはせめてものお礼です」

【水鏡】:使用後に一度だけ敵攻撃スキルを水の鏡によって静止し、反射する消費アイテム。

メイたち自身は【結界石】を砕くというクエストに成功したため、ここで一度報酬がもたらされる。

「こうなってしまった以上、これ以上の悪魔の復活は防がなくてはなりません」

ザケルドはそう言って、デスクにアルティシアの地図を開く。

「南東の墓所地下に、『死してなお闇へ向かう魔導士』の研究工房があり、古い魔法陣が存在するようなのです。そこへの道を開いていただけないでしょうか。この『発信の魔法石』を持って行っていただければ、すぐに私がこの転移石で陣の消去に向かいますので」

「ええ、構わないわ」

「よろしくお願いいたします。この街を守るために……!」

深々と頭を下げるザケルドに見送られて、六人は踵を返した。

「確かに、アルティシアを守るために動いているようだな」

「――今回は不運な流れだったようです」

「そのようですわね……」

結果として暗夜教団の手助けになってしまったクエストが終わり、レンたちは神官の部屋を出る。

「どうしたのですか?」

そんな中、不意に足を止めたメイにツバメが問いかける。

「何か、気になるかも」

メイはそう言って、首と尻尾を傾げる。

「何かは分からないんだけど……」

それは他の誰でもないメイの言葉。

レンはあらためて部屋を、そして神官をじっくり見返してみる。

「……いいわ、このまま聖女の話を聞きにいきましょう。神殿側の展開も知っておいた方が良さそうだわ」

メイたちは白夜やレクイエムたちと一緒に、神殿ルートの中心である聖女のもとへ。

「聖女様、ただ今戻りましたわ」

聖女エルステラは、悲しそうにうつむいていた。

「旧神殿の魔法陣が起動したことで、悪しき魔力の流入を抑えることができなくなってしまいました。これで大いなる悪魔の復活の準備ができてしまったことになります。このままでは、アルティシアは滅びるでしょう」

「旧神殿の魔法陣はやはり、大罪悪魔復活の前段階だったのですね」

「そしてもう一つ危険な悪魔を封じた魔法陣があるようです。私の予言では、そちらの復活が先に成るとのこと。お願いします。街の南東の墓所地下にある『死してなお闇へ向かう魔導士』の研究工房の最奥に向かい、陣を封じていただけませんでしょうか」

「もちろんお受けいたしますわ」

「無論だ」

「これを陣にかければ、しばらくは召喚ができないようになるでしょう」

聖女のクエストを受け、『濃縮された聖水』を受け取る白夜とレクイエム。

だが、それだけでは終わらない。

「お願い、できませんか?」

「私たちにもクエストを出すの……!?」

意外な展開に、驚くレン。

しかもその内容は、またしても『同じ対象』の処遇に関わるものだ。

魔導士の研究所の奥へ向かい道を開けというクエストと、そのまま封じてこいというクエスト。

微妙に違う『依頼』を前に、息をつくレン。

「めずらしいですね。これで異なる二つのクエストを同時に受けている状態になりました」

「どっちを優先すればいいのかな?」

RPGで稀にある、『二つの陣営』から依頼を持ちかけられるパターン。

「こういう場合、今後を左右する分岐に私たちが関わっている可能性があります」

「そうなんだー」

ツバメの言う通り、このタイプのクエストは『どちらかの依頼に応える』または『両者を取り持つ、または裏切る』という選択をすることになる。

「一つ聞かせて。悪魔を封じている魔法陣は、古くなるとその拘束力が弱まるものなの?」

「……はい。正直に言えば、今の魔法陣も長くもつとは言えない状況でしょう」

「なるほどね。分かった、このクエストを受けるわ」

「ありがとうございます。お力を貸してください……アルティシアを守るために」

レンたちも同じように、『濃縮された聖水』を受け取る。

「どうか、よろしくお願いいたします」

エルステラはそう言って、深々と頭を下げた。

「それじゃ、さっそく行きましょうか」

「今度は六人が皆、同じクエスト受けている形だな」

「……そうですわね。でも複雑ですわ。結果見事に光の使徒はわたくしのみ」

「案ずるな。我らは闇の使徒の理念に反する暗夜教団を止める。利害が一致している以上、つまらぬ裏切りなど起き得ない」

こうして二つのクエストを同時に受けたメイたちは、予言された新たな悪魔の復活を阻止するため、『死してなお闇へ向かう魔導士』の研究工房を目指すのだった。