軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

546.3人目の創始者

現れた少女は、暗夜教団の教主。

維月刹那・ルナティック。

右腕を丸々露出したローブは、黒と紫の色味が妙な妖しさを醸し出している。

はだけた着物のようにも見えるその装備は、特注クエストでのみ得られる特別製だ。

「どうしたんだいナイトメア? そんなつれない表情でさぁ」

「……た、大変だわ」

闇の使徒を抜け、暗夜教団を立ち上げた黒き少女。

真紅の爆炎を放っての登場という流れを目の当たりにしたレンは、その身体を震わせる。

「刹那、以前より圧倒的に……」

「やはり、相当強力になっているのですか?」

「キャラが濃くなってしまってるわ……」

「そこですか?」

凄まじい一撃の威力より、以前よりさらにクセの強くなった話し方と雰囲気にノドを鳴らすレン。

これにはさすがに、ツバメがツッコミを入れた。

割れた結界、夜の旧神殿という最高の舞台。

いよいよたくさんの見学者が集まる中、刹那は笑う。

「ボクたちは暗夜教団――――世界を闇に還す者」

「ふざけるな。力による一方的な統制など、闇の使徒の理念に反する」

そんな刹那に向けて声を上げたのは、黒神リズ・レクイエム。

「だからボクは作ったんだよ、レクイエム。真の力を手にした者たちが心おきなくその能力を振るい、世界を闇に還すための機関をねぇ」

そう言って刹那は、まるで月に手を伸ばすかのような姿勢で【ソロモンの指輪】を掲げる。

「悪魔は解放させてもらうよ。そして聖教都市アルティシアは闇に沈むのさ。そして君たち邪魔者には、ここで消えてもらう」

浮かべる、強気な笑み。

「さあ、おいで――――ボクのアモォォォォン!」

落雷のごとき猛烈な赤光が駆け抜ける。

足元に生まれた巨大な魔法陣が呼応するように煌々と輝き、風が薙いでいく。

轟音と共に現れたのは、石柱の高さに迫るほどの大きさを誇る半蛇のフクロウ。

「これが大罪悪魔……強欲のアモンか……!」

「すごい……迫力です……っ」

背には翼を広げ、その下肢は紋様の刻まれた大蛇。

後ろ足はなく、かわりに鋭い爪を生やした狼の剛腕が二本。

見た目には、戦闘態勢に入り身体を起こした蛇の上部がフクロウになっているような形だ。

「す、すっげえ……っ!」

観戦に来たプレイヤーたちも、その雰囲気に圧倒されるのみ。

「どう戦う、ナイトメア」

「――ナイトメア」

「人もたくさんいるから、あんまりナイトメアって呼ばないで」

「何か彼女の情報はありませんの? ナイトメアさん」

「皆で順番に私を見ながらナイトメアって呼ばないでっ!」

叫びながらも、レンはしっかり注意を告げる。

「……飛び込みには気を付けて、もともとは変則型の『近接好き』魔導士よ。大罪悪魔も手に入れてかなり強力になっているはずだから、まずは様子を見て――」

「アルティシアは、私たちが守ります!」

「その通りだ!」

「そういうことだね!」

現れた暗夜教団の教主。

その余裕を見せつけるような態度に、我慢できず先行するエトワールたち。

「気をつけてください! 下手に突っ込んだら危ないですわ!」

「大丈夫です、三人がかりならっ! 【チェンジアームズ】【シャインセイバー】!」

「――――アモン」

迫る光の使徒を、大罪悪魔は速い尾の振り回し一つで弾き飛ばす。

「ぐああっ!」

そしてそのまま、後を追ってきたミヤビに狼の爪を振り降ろした。

「【ルミナスシールド】!」

これを銀の盾でしっかりガードし、ダメージを軽減したところに――。

「【飛び影】」

瞬間移動かと見間違う速度で飛び込んできた刹那が、ミヤビの足元に右手を突いた。

「【レビティア】」

生まれる魔法陣に満ちる、魔力の輝き。

「うわぁぁぁぁ――――っ!?」

すると盾防御も効果なし。

強制的に空中へと吹き飛ばされた。

「【連続魔】【ブレイズバレット】」

追うように放たれた5連続の魔弾で、空中で身動きの取れないミヤビを打ちつける。

「とんでもない速さだね! 【フェニックス】!」

「【フレイムディザスター】」

アモンが両手を開くと地面に地割れが走り、一斉に溶岩のような粘着質の炎が噴きあがる。

その範囲は広く、今まさに魔法を放ったばかりのヒカリを燃やし、起き上がったばかりのエトワールを焼き、地を転がるミヤビのHPを削り切った。

術者を失い、消えていく光の鳳凰。

十秒にもみたない攻防で、光の使徒三人は敗北した。

「そんな……ウソですわ」

まさかの光景に、言葉を失う白夜。

エトワールたちは、静かに声をあげる。

「なんて恐ろしい悪魔……すみません白夜さん……」

「どうかこの光あふれるアルティシアの街を、住人たちを――」

「貴方の手で、守ってください」

儚い笑みと共に、ゆっくりと倒れ伏していく三人。

全員が、『恐ろしい闇の悪魔相手にやり切った』感のある顔で倒れ伏す。

「つ、強すぎだろ……」

その凄まじい攻勢に、思わず観客がつぶやいた。

「どうやらボクは、強くなりすぎてしまったようだよ……ナイトメア」

「ならば貴方を倒して、わたくしたちの威光を示してみせますわ! 【エンジェライズ】【ライトニングスラスト】!」

「メイ!」

「りょうかいですっ! 【装備変更】【バンビステップ】」

激高と共に放つ白夜の突撃は、軽いステップでかわされる。

しかし反撃はならない。

白夜の特攻を連携の始点に変えるような形で、【鹿角】メイが踏み込んできた。

「【フルスイング】!」

「ッ!?」

速いメイの強烈な振り払いがアゴ先ギリギリをすり抜け、思わず目を見開く刹那。

「からの【フルスイング】!」

「くっ!」

バランスを崩して、二歩ほど大きくフラついたところに聞こえてくるのは――。

「刻告げし鐘は夜空に哀しく鳴り響く。始まる終末に、全ての命は等しく滅びをまといて眠る。還れ、深き闇の世界へと――」

「詠唱だって? これは……一体」

「――――【ダークフレア】!」

「ッ!? アモン!」

やけにシンプルな詠唱から放たれた一撃。

集まる漆黒の粒子が炸裂する瞬間、大罪悪魔をとっさに自らの盾とする。

レンの上位上級魔法で3割近いダメージを喰らったアモンは、大きく体勢を崩した。

「【死龍】」

「チィ!」

そんな中、密かに動く六道彼方を目で追っていたレクイエムは『召喚』を止めに向かうが、輪廻の放った死龍の喰らい付きに足を止められる。

この隙を突き彼方は魔法陣に『怪しく動く雷鳥のはく製』を生贄として置くと、【指輪】を付けた手を掲げた。

「我が呼び声に応えよ! 大いなる地獄の伯爵――――フールフール!」

鈍く輝いていた魔法陣に、炎をまとった風が集まっていく。

陣の内側に五芒星を描く五つの炎が灯り、盛大に弾け飛ぶ。

すると昇る炎の中から、燃える尾を生やした大鹿が現れた。

「うおおおっ!? なんだあれ!?」

「悪魔が……目覚めたのかっ!?」

あがる驚きの声。

暗色の毛並みを持つ昏い瞳の大鹿は光に変わり、彼方の指輪に宿った。

契約が完了し、クエストが終了する。

「「「何事だ!」」」」

「貴様らが悪魔を呼び出した反逆者たちだな! 我々アルティシア騎士団が相手だ!」

呼び出した悪魔の処遇が決まり次第、駆けつけることになっている神殿騎士たちが慌ただしくやってきた。

どうやら旧神殿を騎士たちが占拠することで、一連のクエストが終わる形になるようだ。

「大罪悪魔じゃない……フールフールは72柱の一体だわ」

「これで次の道が開けたんだよ、ナイトメア」

「ナイトメアはやめて」

「……ボクのアモンにこれだけのダメージを与えたのは、君たちが初めてだよ」

これまでひたすらに『蹂躙』する一方だった刹那は、驚きながらも笑みをのぞかせる。

自らの力と大罪悪魔の能力を、今さら疑うことなどない。

「褒めておいてあげるよ。噂で聞いた通り、君のパーティは大したものだ」

「ありがとうございますっ」

褒められて、普通によろこぶメイ。

ツバメもうっかり頬を緩ませる。

「でも君たちが勝つことはないよ。そしてアルティシアの街は闇に還るんだ。ボクたち暗夜教団の手によってね……ふふふ、あははははははっ」

クエストの強制終了により、指定範囲内での戦闘すらできない状況。

「啼き叫べ――――我が狂気を前に」

新たな悪魔を手にした六道彼方と共に、暗夜教団は去って行く。

「大変なことになりましたわね……」

「……ああ」

「その割にはうれしそうよ。顔とか声が」

夜の旧神殿で起きた怒涛の展開。

観客たちはもちろん白夜もリズも雨涙まで、しっかりと興奮しているのだった。