軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

543.困惑の使徒たち

「ナイトメア?」

怪訝そうな声と共に立ち止まるリズ。

まさかの展開に、誰もが足を止める。

メイたちの目的は結界を破るために、結界石を砕くこと。

対して闇の使徒二人は、結界を守るためにこの神殿に来たようだ。そして。

「やはり闇の使徒は、この街を闇に落とそうとしているのです!」

星野エトワールがそう言って一歩前に出ると、ミヤビとヒカリも武器を構える。

「違いますー!」

ブンブンと尻尾を振って否定するメイ。

しかし緊張感は、一気に高まっていく。

「妙ですわね……今確かに闇の使徒は結界を『守るため』と言い、レンさんは『破るため』と言いました」

そんな中、白夜は両者の目的の違いに首を傾げていた。

「それならどうしてメイさんたちは、ドラゴンの捕獲というクエストを手助けてしてくれたのでしょう」

「立場を偽装して目的を達成するためだ!」

「そう考えるのが自然だね!」

ランスを構えたままミヤビが怒りの声を上げれば、それにヒカリも続く。

「先のクエストでは確かに、行動を共にし目的を達成したはずだ。どういうことだナイトメア?」

ここで質問に立ったのはリズ。

「私たちは弱った魔法陣を張り直すために、結界を一度砕く必要があるって聞いてここに来たのよ。神官のクエストで」

「聖女はアルティシアの危機を止めるには魔法陣がカギになる。そのために結界を守るのだと言っていた」

リズの言葉に、うなずく白夜。

やはりこの二組のルートは、一致しているようだ。

「魔法陣を張り直すというのは、さすがに危険が過ぎるのではないか? 大悪魔と呼ばれるほどの存在を、あえて解き放ってから封じるなど……」

「しっかり準備すればって言ってたけど……」

「はい、確かに言っていました」

「言ってました!」

交錯する情報に、戸惑う。

「メイさん、貴方はアルティシアを守るために動いている。間違いありませんわね?」

「もちろんですっ!」

はっきりそう言って、白夜の目を見るメイ。

「わたくしにはどうしても、メイさんが嘘を言う様には思えませんわ。ウェーデンでご一緒した時も、謀りごとをするような方には思えませんでした」

「そもそも今回ナイトメアがこの地にやって来たのは、我らの請願あってのこと。突然連れて来られてそのようなマネをできるはずがない」

「――メイちゃんのメイドカフェ後に、そんなことを企む余裕があるとは思えない」

闇の使徒たちの言葉に、白夜はもちろんエトワールたちも首を傾げ出す。

白夜に至っては『メイの勤務時間の抽選に外れた勢』なので、その忙しさはよく知っているはずだ。

「ここの結界石を砕いたのは、メイさんたちで間違いありませんわね?」

「間違いないわ。でもそれは神官からクエストを受けたからよ」

白夜は少し悩むようにした後、一度うなずいた。

「わかりました。今はとにかく残り二つの結界石を確認するのが優先ですわ! 諸々の確認はそれからいたしましょう!」

「大丈夫なのでしょうか、白夜さん」

「もちろん全てが闇の使徒たちによる『企み事』の可能性もありますわ。それどころか元闇の使徒であるレンさんが一人、全てを裏で手繰っている可能性すら……」

「誰が黒幕よ。うれしそうな顔しちゃって」

しっかりツッコミを入れるレン。

白夜はこの難しい状況に、確実にワクワクし出している。

そして光の使徒たちも、陰謀を感じさせるこの展開に燃えているようだ。

「呉越同舟というやつだな」

「はいはい、リズも楽しいのね……」

敵味方が同じ船に乗り、共に戦う。

そんな状況に、仮面の下でニヤリとほほ笑んでいるであろうリズにもキッチリ一言。

「では、どちらの結界に向かうかですが――」

そう言って白夜が視線を上げた、その瞬間。

「「「ッ!?」」」

街の東側から夜空に向かって光の柱が突きあがり、消えていった。

「……東の結界石も、砕かれてしまったと考えるのが普通ですわね」

「そしてここに我らが集まっているということは……」

「――暗夜教団で間違いない」

東の結界石を砕いたのは、暗夜教団と考えるのが妥当だろう。

「暗夜教団は結界石を砕いている側……そう考えると、ここは私たちが様子見をするのが的確かしら」

「難しいところです」

「とにかく西の神殿に向かいましょう! 間違いなく暗夜教団も結界石を狙って動いているはずですわ!」

「そこで『やつら』とぶつかる可能性も高い。各自心構えはしておいた方がいいだろう」

「【ラグナリオン】!」

白夜は従魔の黒竜に乗り空へ。

「わたくしが先行します! エトワールさんも移動スキルで追って来てください! わたくしたちが破れた瞬間、アルティシアが闇に落ちる可能性があることを忘れないようお願いしますわ!」

「「「はいっ!」」」

光の使徒たちにそう言い残して、白夜は空へ。

レンはケツァール召喚を提案しようとして、光の使徒二人は『乗らない』だろうと予想してやめる。

「我らもナイトメアたちと共に進むぞ【闇の翼】」

「――わかりました【早駆け】」

闇の使徒たちは各々のスキルで白夜を追い、メイたちも後に続く。

光の使徒、闇の使徒、そしてメイたちが一団となって西の結界石を目指す。

やがて見えてきた西の神殿は、それこそパルテノン神殿を思わせるような石柱によって屋根を支える造りをしていた。

壁らしい壁はなく、柱の隙間から祭壇を垣間見ることができる。

「見てください!」

白夜が神殿の中を指さし叫んだ。

結界石の安置された祭壇へと続く道の途中には、騎士たちが倒れ伏している。そして。

「すでに敵は、神殿にたどり着いていますわ!」

黒の衣装をまとった一人の少女が、結界石に一撃を加えようとしているところだった。