軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

526.教会のお仕事です!

「皆さんにお願いしたいお仕事は、墓所の様子見と浄化です」

「なんだか本格的になりましたね」

「実はここ最近、都市裏手の墓地でアンデッドたちが暴れることが多くなっているんです……」

提示された新たなクエスト。

金髪のお姉さんシスターは右手にブラシ、左手にフライ返しを持ったままため息をつく。

「そのせいで、どうしても忙しくなってしまって……」

「浄化っていうのはどうすればいいのかしら。特別なスキルとかはなくてもいいの?」

「墓地に魔法陣があったら、聖水を使って全て浄化してください。そうすれば収まるはずです」

「その魔法陣がアンデッドを呼び起こしているのね」

「なんだかドキドキしちゃうクエストだねっ」

メイはそう言いながら、さっそくレンの腕を取る。

「それでは行ってきます」

「いってきまーすっ」

手を振るシスターと子供たち。

小さく頭を下げたツバメも、レンの腕を取りつつ教会を出る。

街の大通りから神殿の北西側へ進んで行くと、静かな区画に入り込む。

その先には人通りも少なく、高い石壁の立ちふさがった場所がある。

鉄製の門を開け壁の内側に入ると、見渡すほどの芝に十字の墓標がずらりと並んでいた。

「緊張しちゃうねぇ」

広いその空間の中心へ足を進めると、メイの目が即座に異変を見つける。

直後、墓標の下から突き出してくる無数の手。

土を割り、フラフラと立ち上がったのは30体にも及ぶゾンビたち。

そのまま真っ直ぐ、こちらに迫ってくる。

「まずはこの魔法陣に聖水をかけて――」

すると魔法陣が、ショートするように火花を散らして消え去った。

ゾンビたちも、その場に崩れて消えていく。

「これがチュートリアル部分ね。おそらくこの広い墓所のどこかにあるいくつかの魔法陣を潰すのが条件。私は魔法で援護するわ」

「りょうかいですっ!」

「把握しました」

動き出す三人と同時に、メイたちを取り囲むように大量のゾンビが起き上がる。

「わあ!」

「これは迫力あるわね! 【フレアバースト】!」

先手で放った爆炎がゾンビたちをまとめて吹き飛ばし、道を作り出す。

「【バンビステップ】!」

「【加速】!」

駆け出した前衛組は生まれた隙間を抜け、各々分かれて魔法陣を探し始める。

すると第二陣のゾンビたちが、一斉に起き上がった。

「【ソードバッシュ】!」

放つ衝撃波で、天高く吹き飛ばす。

「【紫電】!」

一方のツバメは大勢が相手とあって、打倒よりも動きを止めて間をすり抜ける戦法を取った。

「やっぱり! 魔法陣を潰さない限り何度でも復活するパターンね! 【フレアバースト】!」

ゾンビたちは『アンデッド』らしく、打倒しても短時間でまた起き上がる。

魔法陣を潰さない限り、いくらでも復活するシステムのようだ。

「【ラビットジャンプ】! 【ソードバッシュ】!」

「【加速】【電光石火】!」

起き上がる第三陣のゾンビたち。

「うわっととと! 【フルスイング】っ!」

目前に飛び出してきたゾンビに驚きながらも、メイはこれを軽くさばいて墓所を駆ける。

「見つからないよーっ!」

「本当です……っ」

しかし、見つからない。

「妙ね。メイたちの移動力でまだ一つも見つからないっていうのは……」

広い墓地とはいえ、メイとツバメの二人でただの一つも見当たらないのはおかしい。

こうしている間に、第四陣、第五陣が立ち上がる。

「【ソードバッシュ】からの【ソードバッシュ】!」

「【跳躍】【エアリアル】! これでも見つからないとは……っ」

しかもこのクエスト、魔法陣を潰さない限りいくらでもゾンビが追加されるようになっているようだ。

「まずっ! 【フレアストライク】!」

数の増えたゾンビの手がいよいよ間近に伸びてきた。

レンは慌ててこれを回避して、炎砲弾を叩き込む。

するとさらにここで第六陣、第七陣のゾンビたちが立ち上がった。

「うわわわわーっと! 【フルスイング】からの【ソードバッシュ】!」

「【加速】【リブースト】【アクアエッジ】【四連剣舞】!」

メイは驚きながらも道を作り、ツバメも華麗な斬撃で隙間を作り出す。

だがゾンビは、さらに増える。

「こ、これ以上はキツイわね【浮遊】っ!」

右左もゾンビだらけ。

魔法を放ちながらの回避が難しくなってきたところで、レンは空中へと退避。

戦法を【夜風のマント】による爆撃に変えた。

普通であれば、一定以上にゾンビが増えれば捕まって叩きのめされてしまう。

しかしメイたちは圧倒的な回避能力を持つうえに、後衛のレンは空中。

ゾンビの数は、際限なく増えていく。

「よっ! それっ! 【ソードバッシュ】からの【ソードバッシュ】!」

倒しても起き上がり増えるゾンビのシステムと、驚異的な回避力と一撃の威力を持つメイたち。

ゾンビの数は、とんでもない量になっていく。

「な、なんだあの大群……っ!?」

異様な光景に気づいたアルティシア住人たちが、ゾンビの収容所と化した墓地を見に集まってくる。

「すげえ、あんなの見たことねえぞ」

「ていうかあのクエスト、ああはならんだろ……っ」

普通であればとっくに捕まって死に戻ってるはずのゾンビ量に、唖然とするプレイヤーたち。

「ぜ、全然見つからないよーっ! 【ソードバッシュ】!」

ゾンビの波をかき分け、メイは駆ける。

「【加速】【リブースト】【紫電】【跳躍】! そろそろ墓所を一周してしまいそうです……それなのにまだ一つもっ」

伸びる手はいよいよ、ツバメの目前を通り過ぎていく。

「わはー! どうなってるのー!?」

単純にゾンビのいない場所がなくなるほどになってきて、視界的な圧に困惑し出すメイ。

尻尾もブルブル震え出す。

「あれって、メイちゃんたちだろ? うわー、回避も攻撃もすごいな」

「なんであの量相手に捕まらずにいられるんだ?」

ゾンビ追加はついに、第二十九陣を迎えた。

墓所は、すし詰めゾンビ状態に。

「……ゾ、ゾンビの数に挑戦でもしてんのか?」

異様な光景に、いよいよざわつき出すアルティシア住人たち。

そこにやって来た一人が、ゾンビ祭りと化した墓所を見てその状況を考察する。

「ランダム生成される魔法陣の位置が、墓地の端に集まってるのでは?」

「それか! しかも草の陰になってるパターンな!」

「ッ!!」

住民たちの中ではごくごく稀に起こる事態らしく、その仕掛けに気づいたようだ。

そしてメイの【聴覚向上】は、運良くその会話を聞きつけた。

「【ソードバッシュ】からの【ソードバッシュ】!」

さらに増えたゾンビたちをまとめて吹き飛ばして道を作り、メイはそのまま走り出す。

「【裸足の女神】っ!」

そしていよいよ混雑し始めた墓地を駆け抜け、隅の草むらへ。

「ここに全部まとまってくれていますようにっ!」

祈る気持ちでたどり着いた草むらには、輝く四つの魔法陣。

「あった! えいっ!」

メイは手にした聖水を魔法陣に振りまく。

すると四つの陣が、次々に消滅していく。

「それではいきますっ! 【装備変更】!」

メイは身体を反転し、頭装備を【狐耳】に変更。

「大きくなーれ! からの――――【ソードバッシュ】エクスプロードだあああーっ!!」

大型化した【蒼樹の白剣】が降り下ろされ、巻き起こる衝撃波。

続く青い炎の爆発で、メイの背後に迫っていたゾンビたちが崩れ落ちる。

「…………」

今回はもう、立ち上がらない。

ゾンビたちは皆倒れ、そのまま土に還っていった。

「やったー!」

大ゾンビ収容所は、また静かな墓所に戻る。

戻ってきたメイは二人とハイタッチ。

「よく気づいたわね! 草むらの下に固まってるなんて状況に」

「声が聞こえたんだよ!」

そう言ってメイは、一撃必殺の威力の呆然とする観戦者たちに「ありがとー!」と手を振ってみせた。

「……すごかったなぁ」

「あんな光景初めて見た……」

「あの状況まで生き残ってることがヤバすぎ」

「かわいい……」

不運な展開となったクエストも無事にクリア。

「メイさんが気づかなければ、今ごろゾンビの満員電車状態になっていたのでしょうね……」

「そ、それは考えたくないわね……」

こうしてアルティシア墓地のゾンビすし詰め事件は、街のちょっとした伝説になったのだった。