軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

520.メイちゃんのメイドカフェⅡ

「お待たせいたしましたーっ! 【メイちゃんカフェオレ】と【蓄食バナナスムージー】になりますっ!」

尽きることのない客入りに、メイたちはフル回転。

手間の一切かからない調理システムと提供速度の速さによって、通常ではさばけないようなオーダーも見事にクリア。

メイたちの華麗なメイドぶりに、店は大いに盛り上がっている。

「メイちゃーん!」

「香菜ちゃん!」

レンの妹である香菜も、友人の『ルナ』を連れて来店していた。

「可憐姉、思ったよりちゃんとしててビックリしちゃった」

「レンちゃんはすっごく頼りになるんだよ!」

そう言って振り返ると、そこにはメイド姿のレン。

「――これは何の魔法陣?」

「これは【ダークフレア】の時に出るやつよ……」

「――さすが。見ずとも記憶しているとは」

「【魔法陣オムライス】は、そういう風にしろって決まりなんだもの……っ!」

黒の衣装に身を包んだ少女に、オムライスにケチャップで魔法陣を描かされたレンは白目をむく。

「――後衛とは思えない機敏な立ち回りもそうだが、やはりただ者ではないようだ」

客層はとにかく幅広く、なぜか覆面姿で盾を持ち、その陰に隠れながら【猫パンチパン】をかじる少女も、メイを興味深そうに見つめている。

「お待たせいたしました」

「うおおっ!? 突然の登場! もしやこれが噂の【隠密】……?」

「普通に持ってきました」

別に姿を消してなかったツバメ。

ビックリする戦士に思わず笑みをこぼしながら、メイのもとへ。

「あらためて見ると、重装備の人たちは面白いですね」

「本当だねぇ……レンちゃんの入れた紅茶を、重たい鉄の兜と鎧を着けたまま飲んでるのは面白いねっ」

「お行儀がいいのが可愛らしいです」

実際レンを目の前にして緊張していたのか、ゴツイ金属鎧の男が身体を縮めながら紅茶を飲む図に思わずほっこりする。

そしてそんな姿をじっと見つめるいーちゃんの姿がさらに、近くの客たちの癒しとなる。

「おいおいおい! 誰に許可得てここで商売してんだぁ!?」

そんな中。いかにもならず者といった感じの戦士四人組が、オープンカフェになっている店の前庭に踏み込んできた。

「なんでしょう」

「ツバメ、何か聞いてる?」

ツバメは静かに首を振る。

「……なるほど。これ、ハプニングとして運営に仕掛けられてるっぽいわね」

「そういうことですか」

「サプライズをするなら、私たちごと驚かせた方がイベントが盛り上がるでしょうし」

「お前らがこの店の人間だな? ここは俺たちのショバだ。今すぐに出ていってもらおうかぁ!」

そう叫んで容赦なく剣を抜く戦士たち。

「そうはいきませんっ! このお店はわたしたちが守りますっ!」

そう言ってビシッと指さすメイに、レンとツバメもうなずき合う。

「それじゃいきましょうか。一つ期待に応えてみせましょう」

「そうですね」

短く答えて、まずはツバメが動き出す。

「【加速】【リブースト】」

最高速で裏へ斬り抜け、さらに【電光石火】で斬り戻る。

「【投擲】」

行って戻るというめずらしい攻撃に客たちが驚いたところに、投げる【雷ブレード】

「うぐっ!?」

動きを止めたならず者剣士に向けて、駆け出すのはメイ。

「【装備変更】」

その懐に入り込み、頭装備を【猫耳】から【狐耳】へと変える。

「【キャットパンチ】! パンチパンチパンチパンチパンチパンチーッ!」

敵の攻撃を速いステップでかわしながら叩き込む拳打が、青い火の粉を大きく散らす。

「【連続魔法】【ファイアボルト】!」

そんなメイの背中を狙うように放たれた四連続の炎弾。

これには思わず「大丈夫か!?」と、息を飲む客たち。しかし。

「【装備変更】【アクロバット】!」

まるでメイは背後が見えているかのようにバク宙一つでこれを回避し、すり抜けていった炎弾は敵に直撃。

これで残りはもう一人だけ。

「敵があからさまに大技を使って欲しい感じを出してきてるわね。最後は目立つ連携でいきましょうか」

「りょうかいですっ!」

最後のボス格戦士が、明らかに客のいない方向に移動していくのを見て、かすかに笑うレン。

「【分身】【加速】」

先手を取るのは、やはりツバメ。

二人に増えたツバメが、左右から高速接近。

「チィッ! 【ソードブレイズ】だぁぁぁぁ!!」

派手な炎のエフェクトが剣閃と共に大きく吹き上がり、ツバメが飲み込まれた。

しかし、それは分身体。

「【紫電】」

消えていく分身を横目に踏み込んできた本物のツバメが、雷光でボスの動きを停止する。

「【バンビステップ】からの【カンガルーキック】!」

「う、うおおおっ!?」

そこに疾風のように飛び込んできたメイは、小さな跳躍からの前蹴りを放ち戦士を転がした。

「解放!」

その先に用意された【設置魔法】が炎を噴き、大きく弾き飛ばされたボス戦士。

そして予想通り、HPを高めに設定されていたボスがヒザを突いたところで――。

「くるっ!」

「くるぞ!」

「久にぶりに生で見られるのかっ!」

剣を手に駆け出すメイ。

その姿を見てこれまで何度か『それ』を見てきたメイ好きたちがナイフやフォーク、ドリンクを手に持ったまま思わず席を立ちあがる。

「【ラビットジャンプ】からの【アクロバット】!」

そして彼らが「いけー!」拳を突き上げたところで、空中で華麗に一回転。

「いきますっ! 必殺の! ジャンピング――――!」

「「「【ソードバッシュ】だああああああ――――っ!!」」」

駆け抜ける衝撃波が、ボス戦士を吹き飛ばす。

するとよろよろと起き上がったならず者たちは、大慌てで逃げ出していく。

「「「覚えてやがれーっ!!」」」

しっかりと、定番のセリフを残して。

そして三人が、いつものようにハイタッチを決めたところで――。

「「「うおおおおおお――――っ!!」」」

わき上がる拍手。

店を荒しにきた悪人たちを、三人のメイドたちが見事に片付ける。

「メイちゃんたちの戦闘も見られるとか、運営やるじゃん!」

「メイド姿で戦うの、カッコいいなぁ!」

これには客プレイヤーたちも大はしゃぎ。

新職業の『メイド』は、戦闘にも出られるのが一つの売りだ。

こうして運営が仕掛けたサプライズも、無事どころか最高に盛り上げてみせたメイたち。

この日も『星屑』は新システムとイベントの話題で持ちきりとなり、その波及効果は運営の狙いを大きく上回ることになったのだった。