軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

518.嘘から出たまこと

「ふっふふん、ふっふふん」

本日の授業を全て終えた青山さつきは、スキップで自宅への道を進む。

トッププレイヤーであるアルトリッテたちへの手助けと、【エクスカリバー】の登場は早くも話題。

そしてそんなメイたちのメイド姿が、さらに人気を呼ぶ。

実在しないカフェの噂で盛り上がるプレイヤーたちも依然、大盛り上がりの状態だ。

だがそんな情報は全く知らないメイ。

「今日は何をするのかなーっ」

新たに向かうマップやクエストを想像しながら、くるくると回るようなステップでスーパーに入る。

安くなっていたお気に入りのクッキーを抱え、カフェラテの棚で『コーヒーを吟味しちゃう大人な自分』にちょっとだけ得意げな顔をしてから会計へ。

途中バーガー店の美味しそうな新商品に目を留めて、ちょっと眺めてからの帰宅となった。

「ただいまーっ!」

「お帰りなさい。さつき、今夜はなんだと思う?」

手にカレールーを持ったまま、たずねる母やよい。

「グラタンコロッケバーガー!」

これまで幾度となく夕食クイズを当ててきてしまったさつきだが、これは『外す』自信あり。

なぜなら青山宅の夕食が、テイクアウトのハンバーガーになったことなどかつて一度もないからだ。

「やっぱり野生児じゃなくて、素敵なお姉さんを目指す普通の女の子だよねっ」と、余裕の笑みを見せるさつき。

しかし母やよいは、ガクリとヒザを突く。

「ま、まさか、テイクアウトしてきた期間限定バーガーまで当てられてしまうなんて……っ!」

「ええーっ!? まさか帰り道に「これ美味しそう!」って思ったハンバーガーを言ったら当たっちゃうなんて……っ!」

同じポーズで頭を抱える母子。

手に持ったカレールーのフェイントも、全く意味がなし。

「少し間を開けて、油断を誘ったと思ったら……」

「これはさすがに外れるよねと思って答えたら……っ」

ちょっと間を開けて「これなら!」と思ってやよいが出した『夕食はなんでしょうクイズ』を、またも見事に当ててしまったようだ。

『星屑』の中で野生児スキルを使うほど、現実世界でもその能力に目覚めていく。

そんな恐ろしい想像に、思わずあわあわしてしまう。

「そうそう、さつきにまた封書が届いてるわよ」

「わたしに?」

さつきが聞くと、母やよいは一つの封書を寄こしてきた。

そこには『星屑』の運営会社の名前が記載されている。

「運営さんから、直接?」

メールではなく直接封書で届くという事態に、「なんでかな?」と首を傾げるさつき。

しかし封書自体は母のやよいの名前も連名で書かれており、王都戦後に使われたPVの時と似たような流れだ。

受け取った封書を手に、さつきは部屋へと戻る。

「なんだろう……?」

すでに中身をやよいが確認したのであろう書類を取り出し、さっそく内容を確認してみる。

「えーと、新システム導入とその告知に当たって、大きな宣伝をしたいかぁ……なるほどぉ」

どうやら『星屑』は、ここにきて新たなシステムの導入を考えているようだ。

「先日エルダーブリテンで解放された職業『メイド』の稼働などもあり、勢いのある今、そのシステムの発表を行いたいと思っております……かぁ」

ふむふむと、うなずくさつき。

どんなシステムが導入されるのかワクワクしながら、続きを読む。

「新システムは街の商店やハウジング用地内、一部フィールド等による飲食システムになっておりますーっ!? そんなこともできるようになるんだ!」

思わず「すごーい!」と、驚きの声を上げる。

すでに匂いのシステムは完備されており、メイはこれまで散々『美味しそうな匂い』にお腹を空かせてきた。

「それから……昨今ご活躍が著しいメイさんは、『星屑』プレイヤーたちにも非常に愛されており、パーティの動向には注目が注がれています。えへへへへ、そうなのかな?」

それほど実感はないものの、うれしそうな笑みがこぼれる。

「つきましては、メイさんたちにも新システム告知企画の一つをお願いしたいと考えております……? どんなことをするんだろう?」

さすがに全然予想がつかないさつきは、ドキドキしながら書類を読み進めていく。

「え、ええっ?」

そして、思わぬ文言に困惑する。

「新たなシステムの導入に際し、各マップで様々なイベントを開催することとなりました。その中からメイさんパーティには……『メイちゃんのメイドカフェ』を『星屑』内にて期間限定実装させていただければと思っておりますーっ!?」

別途用意されたプリントには店の概要と制服のデザイン、どのような形式になるのかなどの案が載せられている。

「ええええええ――っ!?」

まさかの事態に、さすがに驚きを隠せないさつき。しかし。

「で、でも……制服も可愛いし、お店の雰囲気もすごくいいっ! それにレンちゃんとツバメちゃんも一緒! これ、絶対楽しくなっちゃうよ!」

驚きとワクワクで、その目をすぐにキラキラと輝かせたのだった。