作品タイトル不明
472.明ける夜と天地友好
「これでイベントも一段落ね」
「みんなと一緒で、すっごく楽しかったよー!」
「本当ですね」
登っていく太陽が、湖面を輝かせる。
テーラ陣営の本拠地へと戻ってきたメイは、輝く湖と変わらずマイペースな陸ガメを見ながら大きく伸びをした。
どこまでも広がる空と、差し込む光に目を覚ましていく森の光景は美しく、動物たちも静かに朝の始まりを待っている。
大きなイベントがあったばかりとは思えない、静かな世界。
「このきれいな密林を王国領地として開拓させたり、外洋侵略の軍港化しようって、相変わらず運営は思い切るわねぇ」
「イベントの結果次第では、マップに大きな変化が入っていたのですね」
「……毎回世界の変貌を止められてる運営は、メイをどんな目で見ているのかしら」
「おそらく、二大陣営の同盟を崩した奇跡の少女として見ていると思います」
「それもそうね」
レンはくすくすと笑う。
「でも、まさかグラムたちと一緒に戦うとは思わなかったわねぇ」
「心強い味方でした」
「グラムちゃんたちがいなかったら、きっと大変だったね!」
「ほう?」
メイの言葉を耳ざとく聞きつけて、早足でやって来たのはグラム。
この時点ですでに、まんざらでもない顔をしている。
もちろん、これだけで収まるはずもなし。
「もっとくれ」「他にもあるだろう?」が、まるで隠し切れていない。
「さすがテーラの最終兵器ね」
「まさに最終兵器の名にふさわしい戦いぶりでした」
「わっはっはっは! そうだろうそうだろう!」
バンバンと、上機嫌でレンとツバメの肩を叩く。
「完全に転がされてるねぇ……」
「これ、学校でも使える手かもしれねえよな。便利に」
そのまま後ろに倒れるのではないかと言うくらい胸を張るグラムに、笑いがこらえられないローランと金糸雀。
ご機嫌なグラムに、メイも「グラムちゃんのおかげですっ!」と拍手で盛り上げる。
「本当に良いチームだったよね」
ローランがここまでの戦いを思い返しながら、つぶやく。
「まあ、悪かねーな。やっぱイベントはこういう楽しさがあってこそだよなぁ」
「このグラムが控えているのだ。最高に決まっている」
「最終兵器かぁ……カッコいいなぁ」
「わっはっは、そうだろう! このグラム様にこそふさわしい二つ名と言えるぞ!」
「本当に上手だなぁ、おい」
「これでメイちゃんは狙ってないところが恐ろしいね」
ローランは「あはは」と笑う。
いつまでも笑いが絶えない六人。
そんな中、不意にローランがその目を留めた。
「あれ、摩訶羅那さん?」
そこに駆けつけてきたのは、長めの前髪に眼鏡。
ローブ姿の少女、摩訶羅那だ。
七新星たちが各々帰っていった中、一人走って戻ってきたことに首を傾げる。
「……ローランさん」
これまで見たことのないような怪しい笑みに、いよいよ困惑する。
「ええと……?」
震える摩訶羅那の肩とその異様な態度に、緊張が走り出したその瞬間。
「戦いが終わった際に、ローランさんコーギーを思う存分モフモフさせていただくという話でしたぞ!」
「……あっ」
「そうだー! ローランちゃんコーギー!」
これを聞き付けたメイも、さっそくローランのもとへ。
摩訶羅那と二人、キラキラ目を輝かせながら「早く! 早くっ!」と、そろって謎の踊りを始める。
「……あ、あれはほら、あの時の話の流れでと言うか――」
「「早くっ早くっ」」
右に左に並んで肩を揺らす二人。
メイの尻尾も、リズムに合わせて右左。
「正直戦いが終わった瞬間から、ずっとこの時を待っていたと言っても過言ではありませんでしたからな!」
「楽しみーっ!」
目を輝かせる二人に、「どうしよう……!」と視線を右に左に走らせるローラン。
「お願いしますぞ!」
「お願いしますっ!」
「うっ!」
ローランは、頼みごとにすごく弱い。
「ええと、それじゃあ……少しだけだよ……?」
その期待の強さに断れず、レンに【変化の杖】を借りる。
発動と同時に巻き起こる白煙。
ローランは、耳の大きな体高約30センチほどの小型犬に姿を変えた。
「わあー! ローランちゃん可愛いーっ!」
「これこれ! これですぞ!」
メイは思わず抱き上げたローランを、ギュッと抱きしめる。
「わーちょっと待って! そんなしっかり抱きしめる感じなの!?」
頬をするほどの勢いに、ローランは思わず動揺。
「メイさん! 早く代わって欲しいですぞ!」
摩訶羅那も「早く早く」と急かし出す。
「我が家ではペットが飼えませぬゆえ、ずっとこのままでいてほしいくらいですな!」
「く、くすぐったいよーっ」
そしてそんなメイの姿に、ツバメと金糸雀が目を奪われる。
「「……かわいい」」
「わっはっは! ローランもああなっては片なしだな!」
「ふふ、意外な一面が見られたわね」
それを見て大笑いするグラム。
普段はパーティの爽やかな頭脳役、ローランの慌てぶりにレンもクスクス笑う。
戦いを終えたばかりの六人は、夜明けの密林で楽しく笑い合う。
こうして新大陸上陸から始まった大型イベントは、最高の笑顔と共に幕を閉じたのだった。