軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

403.星の下端に瞬く光

「それじゃ、開けてみましょうか」

「何が出てくるのでしょうか」

「ワクワクしちゃうね!」

「楽しみー」

アイテム塔の7階倉庫。

メイたちは、秘密結社『ダークブラッド』の代表に教えてもらった『呼び寄せの木箱』の前にやってきた。

そのパーティに役立つものが出てくるという箱に、メイはさっそく手を伸ばす。

【カンガルーキック】:地上空中を問わずに使用できる蹴りスキル。敵の防御を崩すことが可能。

「おおーっ! キックだって!」

「【キャットパンチ】に近い感じでしょうか。近接格闘系のようですが……防御を崩せるというのは面白いですね」

「ていうか、中身は攻略用アイテムじゃなくて報酬だったのね」

威力は低めながらも、特殊な効果付きスキルの入手。

意外な展開だが、また何か新しいことができそうだと楽しそうにするレン。

倉庫を出た四人は、さっそく色んなポーズで蹴りを繰り出すメイに笑いながら、錬金術教授の研究室を目指す。

「早くヒントを見つけたいところね」

目的は『どうしても勝てない化物』の攻略法を見つけること。

そしてそれには、巡回ガーゴイルたち同様『結晶石』が関わっているのではないかというところまで情報を得た。

「薬学教授は自分でもあの化物を排除しようとしてる感じだし……青バラの失踪についても気になる……」

そして新たに始まった展開。

姿を消した魔法学校の有名NPCリリーネ・グレイシア。

「急いだ方がいいかもしれませんね」

時間制限の可能性を考えて、わずかに足を速めるツバメ。

メルーナの先導でたどり着いたのは、魔法アイテム塔の5階。

魔法学校長に天才と呼ばれた錬金術教授フラム・ニコラスの研究室だ。

デスクの上には試験管やビーカーなどが並び、真鍮製の秤が沈黙を守っている。

棚に並んだ薬剤が魔法灯に照らされて、鈍い光を灯す。

「錬金術教授の研究室はー、もう長らく放置されてる場所の一つ」

錬金術教授は、いまだに何の要素も見つかっていない謎の人物。

乱雑な重ね置きがされている本棚の中には、一冊の備忘録が置かれていた。

「備忘録の中に一つだけメモが残ってるんだ。逆に言えばこれしか変わったものがなくてー、何のためにあるのかも分からない」

ここから始まるクエストはなく、研究室唯一のきっかけとして存在するのがこのメモ。

この場所を久々におとずれた魔法学校住人たちも、あらためて辺りを見回す。

やはり現状、備忘録以外に見つかる物はなし。

「割と見つけやすいメモね。でもこのクエストの流れで来ないと意味が分からないようにできてるんじゃないかしら」

メイたちは日に焼けた備忘録に書かれた文字を、のぞき込んでみる。

『――――大魔法陣を描く星。その下端を照らす輝きの中にあり』

その文言を見て、尻尾を『?』とひねらせるメイ。

「魔法陣はさっきの召喚クエスト以外にもいくつか出てくるけど……大魔法陣っていうには小さなものばかりなんだよなぁ」

「確かに。召喚クエストの時のものが一番大きいと思う」

「星が出てくる魔法陣も一つしかない上に、移動用の転移方陣なんだよなぁ。これも小型だし」

魔法学校住人たちも、これまで様々なクエストで見てきた仕掛けや魔法陣を思い出して、ああでもないこうでもないと思案し始める。

「魔法陣に書かれてる文字に、星を意味する言葉が出てきてたとか?」

「なかったと思うー」

描かれている魔法陣などに使われている文字は、『星屑』世界の古代文字。

それすらも解析班と共に読み解いてきたメルーナだが、そこにも星を意味する言葉が出てきた記憶はない。

「どういう意味だろー……」

深く考えるものの、答えは出ない。

ここに来て、続いてきたものが途切れてしまう雰囲気だ。

「一度、召喚クエストの魔法陣を見に戻るか?」

「その方がいいかもですねぇ。何か気づくかもしれませんし」

「俺たちは他の魔法陣も見に行ってこよう。何か見つけたらメイちゃんたちに魔法やスキルで合図するとかでいいんじゃないか?」

ピンと来てはいないが、とりあえずできることをしておこうという状況。

それでも何かメイたちの役に立てばと、魔法学校住人たちが動き出す。

「魔法学校は、大きな塔が六つもあるから大変だね」

慌ただしくなる魔法学校住人たちの姿につぶやいたメイも、「いつでも駆け付けますっ!」と気合を見せる。

「……六つの塔」

そんな中、メイの言葉を聞いたメルーナが回顧を始める。

『星屑』を始めてから毎日のようにメモを書き、読み直してきたメルーナ。

当然、魔法学校の地図だって幾度となく眺め続けてきた。

「大魔法陣をー、描く星」

そしてゆっくりと、視線を上げる。

「――――クインフォード魔法学校自体が、六芒星……?」

「「「ッ!!」」」

その一言に、誰もがハッとする。

魔法学校は六つの塔で構成され、その外縁を橋でつなぐ形になっている。

それは『大きな』六芒星の『魔法陣』と言えるのではないか。

「魔法陣の『下端』を担うのはー、中央塔。『照らす輝き』はー、ホールに付けられた大きなシャンデリアかも……!」

「確かにそう取れるわね! シャンデリアに使われている魔法石の一つが、結晶石になっているっていうのは上手な隠し方だわ!」

「おおーっ! すごーい!」

木を隠すなら森の中。

そしてその森は、魔法学校に来た時に誰もが最初に通る中央塔ホールにある。

ちょうど魔法学校を一周してたどり着く隠し場所に、メイも感嘆の声を上げる。尻尾もブンブンだ。

「ただ、どれが結晶石なのかは化物と戦い始めないと判別できないんじゃないか?」

「秘密結社のNPCがそう言ってたよな」

「あの化物が戦い始めると結晶石が輝くっていう形なのね。それで結晶を割ると『どうしても勝てない』の前提が崩れると……」

そうなれば、化物と戦うチームと結晶を砕くチームに分かれる必要が出てくる。

「俺たちにも手伝わせてくれ!」

すぐに魔法学校住人たちから声が上がった。

「念のため、シャンデリアが間違っていてもいいように、各塔にプレイヤーを置いておこう」

「結晶破壊時に敵が出てきてもいいように、アシストできるプレイヤーがいると良さそうだな」

「助かるわね。そうなると『どうしても勝てない化物』の相手は、メイと私が中心でいいかしら」

基本的には、メイ側の戦力が過剰になってしまうことを考えての提案だ。

「私たちが旧研究塔。ツバメとメルーナが中央塔シャンデリアっていう形でどう?」

「いいと思いますっ!」

「はい」

「がんばるー!」

「俺たちは結晶破壊を中心に、連絡要員として数人ほど旧研究塔にも向かうことにしよう」

魔導士がほとんどの魔法学校住人たち。

必然的に、中央塔部隊を引っ張るのはツバメの仕事になりそうだ。

「メイチームは『旧研究塔』ボス戦へ、ツバメチームは中央塔シャンデリアで結晶石を破壊する形ね」

「いきましょーっ!」

「「「おおーっ!!」」」

拳を突き上げる、夜の魔法学校攻略部隊。

まずは中央塔ホールへと向かって、走り出していくのだった。